年別アーカイブ:2018年

移民政策、経済学と政治学

2018年5月14日   岡本全勝

4月27日の日経新聞、経済教室、中島隆信 ・慶応義塾大学教授の「移民政策の現状と課題(下)」「 安易な外国人依存避けよ」から。詳しくは原文をお読みください。

・・・移民に関する経済学の実証研究はこれまで数多くなされてきた。だが筆者と明海大学の萩原里紗氏による「人口減少下における望ましい移民政策」(経済産業研究所)やベンジャミン・パウエル米テキサス工科大教授による「移民の経済学」などのサーベイをみても、研究成果が政策に役立つかどうかは定かでない。
明確なのは、生産性の低い場所から高い場所への労働移動が社会全体の所得を増やすということだけだ。国境を越えて移動する人たちはおおむねこの原則に従って行動すると思われるため、世界全体の生活水準向上という観点に立てば移民は是とされる。

ところが移民の受け入れ国に与える影響となると話は違ってくる。この点に関する国民の関心事は、(1)成長に寄与するか(2)国内の職を奪わないか(3)財政を悪化させないか(4)治安が悪くならないか――の4点にほぼ絞られる。このうち経済学の対象外となる(4)を除けば、いずれも前提条件の置き方次第でプラス・マイナス両面の結果が出ており、しかもその経済全体に与える影響は比較的軽微だ。要するに移民を入れても入れなくても経済的には大差はない。

だとすると、移民政策は貿易政策と似た政治色を帯びることになる。つまり移民に仕事を奪われそうな人は受け入れに反対し、移民と補完的な仕事をする人は賛成するという図式だ。そして全体最適の議論は脇に追いやられ、結論が先送りされるかポピュリズム(大衆迎合)的風潮が生起するかのいずれかになる・・・

『勘定奉行の江戸時代』

2018年5月13日   岡本全勝

藤田覚著『勘定奉行の江戸時代』(2018年、ちくま新書)が、勉強になりました。
江戸幕府の行政機構は、私たち行政・官僚のご先祖様なのですが、私は勉強したことがありません。時代劇に出てくる代官は、有力商人から賄賂をもらって「お主も、悪よのう」、「いえいえ、お代官様ほどでは・・・」という場面が定番ですが(苦笑)。そんなことでは、業務は回りません。

勘定奉行は字面だけを見ると、現在の財政課・会計課と思いますが、もっと広く幕府の財政と幕府領の行政(この時代は主に農政)を司ります。また現代のように、政府が教育や福祉を提供しない時代ですから、幕府行政の大宗を担っています。そして、裁判も兼務して担当します。
採用試験(筆算)があり、能力によって、勘定奉行まで出世することがあります。幕臣でない子供が、養子に入り、試験に受かり、出世していきます。これも、驚きです。数字を扱えないと、仕事にならなかったのでしょうね。
幕府後半は、財政難に対応するため、行財政引き締めと貨幣改鋳を繰り返します。これも、勘定奉行の仕事でした。
へえと思うことが、たくさん書かれています。

積水ハウスの継続的被災地支援

2018年5月12日   岡本全勝

5月11日の河北新報に、企業が被災地で職員研修を行っている事例「新入社員 被災地に学ぶ」が紹介されていました。このホームページでも、紹介したことがあります。
ここに紹介されている、積水ハウスは、2012年から続けています。側溝掃除で泥だらけになった職員たちに「この後のビールが、おいしいやろうね」と言って、「研修ですから、禁酒です」と叱られたことを思い出します(2014年5月27日の記事)。

この新人研修は、現地で被害の大きさを学ぶとと、被災者への支援活動を行うことを組み合わせています。実はNPOの活躍の場でもあるのです。この研修を、2つのNPOが支えています。
一つは、研修内容を企画し、社員を被災地に連れて行くNPOです。もう一つは、現地で支援活動の需要を掘り起こしておくNPOです。大手企業の社員とはいえ、見ず知らずの人が突然仮設住宅を訪ねていっても、来られた方も迷惑です。それから「何を手伝ってもらおうかねえ」などと思案していては、時間の無駄です。

昨日の慶應義塾大学公共政策論で、話したばかりでした。
ありがとうございます。

ケインズ予測の的中と外れ

2018年5月12日   岡本全勝

4月23日の読売新聞に、吉川洋・立正大学教授が「豊かな21世紀 ケインズ予測現実と落差」を書いておられました。

・・・1930年、経済学者ジョン・メイナード・ケインズは100年後の世界がどんな社会になるか予測した。大不況の最中、多くの人は世界経済の将来に悲観的だったが、ケインズは「われわれの孫たちの経済的可能性」と題するエッセーで、21世紀前半の世界に楽観的な見通しを述べた。
予測のうち、一つは当たり、一つは外れた。
当時、最も豊かな国だったイギリスでも、100年後には生活水準がさらに4倍ないし8倍まで上昇するだろう。21世紀、人々は信じられないほど豊かになっているに違いない―。この見通しは当たった・・・

では、外れたのは何か。
・・・100年後には、人々の暮らしは想像もつかないほど豊かになっているから、およそ「経済」の問題はすべて解消してしまうだろう。人々は週5日、1日3時間働けば十分になっている。作り出すモノはあり余っているから、人々は豊かさの中で倦怠に悩まなければならない。何かを手にしたいという欲望を基にした経済の問題は消え去っている。
二つ目の予想完全に外れた・・・
この項続く。