年別アーカイブ:2018年

買うことと維持すること、手入れすることと買い換えること

2018年9月11日   岡本全勝

鹿島茂著『クロワッサンとベレー帽』に、次のようなくだりがあります。p173
・・・何が好きといって、ガラスやグラスをピカピカに磨くことほどフランス人の好きなことはない・・・
・・・ではいったい、フランス人のこのピカピカ好きはどこからきているのだろうか? おそらくそれは、かつてフランスが貴族社会だった時代の名残なのだろう。つまり、貴族社会のころ、裕福さの度合は、所有しているモノの高価さよりむしろ、その高価なものを維持していくためにかける人件費によって計られたのである。
たとえば、バカラのような高価なクリスタル・グラスを所有していても、それを日常的に使用していることを示さなければ、本当に裕福とはいえない。しかも、そのクリスタル・グラスが購入時と同じ輝きを持って使用されていなければならないのだ・・・

納得します。カネがあれば、高価なものも買えます。しかし、それを維持する、手入れをして使い続けることは、もっとお金が必要ですし、その意志と時間が必要です。カネにものを言わせて、次々買い換えることもできますが、その人とは哲学が違うのです。

なお、これを考える際には、日本とフランスとの伝統文化の違いもあります。かの国では建物は石で造り、手入れをしながら長年使います。時には、外壁はそのままで、内部は作り替えるとか。我が国では、建物は木造なので、神社仏閣などを除いて、時間が経つと建て替えます。住宅において、この違いは大きいです。
維持する文化と更新する文化の違いです。
ところで、鉄筋コンクリートの建物は、どちらに入るのでしょうか。どうも更新派に属すると思われます。アパートも、壊して建て替える方が多いでしょう。タワーマンションも、30年も経つとどうなるのでしょう。

暑い夏が急に涼しく

2018年9月10日   岡本全勝

今日の福島市は雨で、気温は昼でも20度。昨日の東京は30度、明け方でも25度でした。
急に涼しくなりました。寒いくらいです。
それにしても、今年の夏は暑かったですね。さて、このあと、天候はどうなるのでしょうか。

教員と校長の違い

2018年9月10日   岡本全勝

幹部と職員の違い」の続きです。
この点で、8月29日の読売新聞解説面、アンドレアス・シュライヒャーOECD教育スキル局長のインタビューが参考になります。日本の教育改革=「教師主導の学び」から「主体的・対話的で深い学び」への転換についてです。

・・・各学校で良い方法を取り入れる際、教師たちは協力し、教師一人一人が強い自覚を持ち、学校の実情に合わせて試行錯誤する。それにはリーダーシップが必要だ。時代の変化に対応しながら学校が進化し続けるためにも強力な統率力が不可欠だ。だが、OECD調査によると、日本の校長は各国に比べて、自らを学校教育を引っ張る存在だと意識していないようなのだ。
教師生活の最後を飾るため校長になるのは、必ずしも良いモデルではない。シンガポールでは教師になると、将来は教科の専門教師になるか、校長として学校を運営するか、人材に養成かなどの方向を決める。だから、40代の校長もたくさんいる。日本ももっと若い校長がいていい・・・

記事には、OECD調査「中学校長は教育でリーダーシップを取っているか」の各国比較が出ています。日本はダントツ最下位です。
ここには、二つの要素があると考えられます。一つは、今回指摘している、日本の職場に共通する、管理職と一般職員との区分の不明瞭さです。
もう一つは、文部省→県教委→学校現場という「上意下達方式」の教育内容・方法です。

連載「明るい公務員講座中級編」では、良い係長が良い課長になるとは限らないことをお教えしました。青虫が蝶々になるためには、脱皮しなければならないのです。
スポーツの世界でも、良い選手が必ずしも良いコーチや監督にならないことが知られています。しっかりした競技団体では、指導者研修を受けないとコーチや監督になれないようになっています。
この項続く

幹部と職員の違い

2018年9月9日   岡本全勝

次官・局長の報酬と社長・専務の報酬」の続きです。

公務員の給料は、民間準拠が原則です。全体としてはそうなっているのでしょうが、指定職層(次官・局長・審議官。民間の社長・副社長・取締役に相当すると言われています)での比較は、どうなっているのでしょうか。
公務員の給料体系は、「平等主義」が行き過ぎているように思えます。諸外国や企業のように、「普通の職員=普通の仕事=普通の給料」に対し「責任あるポスト=仕事も過酷=高給」と差別化すべきです。また、労働時間も、後者にあっては定時出社・定時退社は当てはまらない場合があります。
記事でも指摘されているように、高級幹部は責任と評価を厳しくし、報酬も上げるべきでしょう。すると、1年で異動するようなことも、やめなければなりません。

(職員の延長に管理職があるのではない)
この問題を考えると、職員と管理職、特に高級幹部との仕事と責任の違いに行き着きます。
職員の延長に管理職がある、のではありません。軍隊に、士官と兵卒という区分があります。仕事の内容も育て方も違います。企業や役所でも、管理職と職員とは求められる職責が違うのです。もっとわかりやすいのは、学校の校長と教員です。校長と教員とでは、求められるものが違います。

簡単に言うと、「するべきことを考え・指示を出し・責任を取る人」と、「指示を受け実行する人」との違いです。職員の延長に局長があるのではなく、社員の延長に社長があるのではありません。そして、育て方も変えなければなりません。
もちろん、幹部になる人たちも、「一般職員」を経験することで、現場と仕事を覚えるとともに、幹部になる勉強をします。しかし、幹部になる人と職員で終わる人とは、身につけなければならない能力が違うのです。

日本では、職場でこのような差をなくすことが進みました。カイゼン運動も、職員・社員に意欲を持ってもらい、職場の効率を上げるためには良いのですが、職責の違いを希薄化させる副作用があったようです。
官庁では、かつて上級職と中級職・初級職の違いがありました。しかし、この区分がなくなるとともに総合職が多くなり、高級幹部養成課程があいまいになりました。
この項続く

仲間うちの投稿

2018年9月9日   岡本全勝

9月5日の朝日新聞連載「平成とは」「仲間うちの投稿欄、部数増」から。
・・・大島さんは近くに本社がある産経新聞社が発行する保守系の論壇誌「正論」の元編集長だ。新聞の記者などを経て編集長に就任したのは1990(平成2)年。冷戦が終わって米ソ対立という大テーマが後退。苦戦を強いられたオピニオン誌をどう活性化させるか大島さんは真剣に考えていた・・・
・・・まず目をつけたのが、雑誌の最後にあった1ページの読者投稿欄だ。届いた投書を読んでいると「読者の書くものが面白いことに気づいた。その知恵をもっと拝借しようと思った」。
「読者の指定席」と名づけて投稿欄を6ページに増やしたのを皮切りに、93年には投稿に編集者が一言感想を添える欄「編集者へ 編集者から」を新設。2000年には読者の疑問に編集者や他の読者が答える「ハイ、せいろん調査室です」も追加した。「自国の歴史と先祖に誇りを持って生きるのはすばらしいことですね」「国旗を購入したいがどこにも売っていない。日の丸は簡単に手に入りません」……。次々と舞い込む封書やはがきを紙袋いっぱいに詰め込み、自宅に持ち帰って目を通した・・・
興味深い発言もあります。
・・・異論にも耳を傾けようと「朝日新聞的な意見」を載せたこともあったが、読者は「それは、他で読めばいい」と反発した・・・

・・・最近では敵を探そうとする流れも強固になっている、とメディアコンサルタントの境治さんはいう。データ会社を通じ、在京キー局の情報番組などを調べたところ、森友学園問題や日大アメフト部のタックル問題など一つの話題を集中的に伝える傾向が、ここ数年で強まっているのを確認したという。
「『悪役』が誰かわかりやすい話題が好まれる。常にたたける相手を探し、徹底的に打ちのめす傾向が社会的に強まっているのではないか」
水島久光・東海大教授(メディア論)は、平成は人々が「味方集め」に奔走した30年だったとみる。「SNSの『いいね!』もそうだが、誰かからの評価を求めてさまよう人々であふれ、ネットを中心にその傾向が加速している」・・・

他者との対話を拒否し、身内だけで盛り上がる。寛容性が低くなり、排他性が高まっています。以前からその傾向はあったのでしょうが、インターネットの発達がその拡散を助長します。
あわせて、多くの人は「話を聞いて欲しい」「意見を言いたい」。しかし、「反論されるのは嫌だ」「いいねと言って欲しい」。「私は正しい。あの人たちは間違っている」のです。友人、家族、職場でも同じです。