外の人との議論が新しいアイデアを生む

12月13日の日経新聞夕刊「私のリーダー論」は、山本良一 J・フロントリテイリング社長の「異分子を交ぜ、変革を生む」でした。

・・・「当社は大阪・梅田や札幌の店などで、百貨店のビジネスモデルを転換してきました。従来と同じ業務であれば、同じ価値観、言語、考え方で百貨店事業をブラッシュアップしていけば強くなれます。でも、現在の競争相手は百貨店だけではありません。インターネット通販であったり、アウトレットだったり、ありとあらゆる業態との競争を迫られています。かつてと同じやり方では、たぶん競争に勝てないでしょう」
「銀座の店舗については百貨店はやらないと宣言しました。ではどういう施設にするか。一緒に取り組んだのが森ビル、住友商事、仏高級ブランドのLVMHモエヘネシー・ルイヴィトン(LVMH)が出資する不動産会社の3社でした。我々と全然違う価値観、育ち方をしている人たちと、私も含めて当社の社員が議論をするわけです。火花が飛びますよ。でも、そこにエネルギーが生まれ、どんどん発想が広がっていきました」

――激論を交わしたと。
「そうです。摩擦が起き、火花が飛んで、新しいものが生まれる。そのほうがずっといいと思う。もし社内だけのプロジェクトだったら、私が百貨店をやらないと言っても、百貨店に近い施設になっていたと思います。同じ業界の人間からは違う発想は出にくい。森ビルや住友商事とは考え方が違います。いろいろなことを理解し合いながら、お互いのノウハウを勉強することができました」

――他社との協業や外部人材の採用などを「異分子結合」と呼んでいますね。
「社長になってからカードなど金融ビジネスの強化を掲げました。ところが、従来のメンバーでは新しい発想が出てこない。そこで、外部から専門性を持つ幹部を連れてきました。組織の中で違和感を持つ人もいましたが、斬新なアイデアが生まれてきています」
「百貨店事業では優秀な人材ですばらしい能力を持っていても、IT(情報技術)など他の分野はわからない世界です。そこに専門的な人材を入れる。価値観や仕事のやり方が違う人材を入れて、新しいものを作り出す。協業を含めて、そういうことを私は異分子結合と呼んでいます。社員にも、外に行ってこい、百貨店とは関係のない多様な人材の話を聞いてこい、とよく言っています。今の時代は大変革期ですし、過去の延長線上に未来がないのは確かですから」

同感です。身内同士で議論をしても、その枠を超えた話は出て来ません。異業種と交流することで、新しいアイデアが出るのです。
もちろん、その中には役に立つものと、役に立たないものがあります。それを見極めるのは、本人のあるいは上司の責任です。
また、身内の者が枠を超えた発想を発言をしたら、排除されるでしょう。部外者が言うと、同じ内容でも「なるほど」と納得してもらえる場合もあります。

グローバル化とグローバリズムの違い

12月7日の日経新聞オピニオン欄に、クラウス・シュワブ世界経済フォーラム会長の「グローバル化、関与と想像力を」が載っていました。

「第2次世界大戦後、国際社会は一丸となって共通の将来の構築を目指した。現在、再び同様のことが必要になっている。
2008年の金融危機後の景気回復はもたつき、まだら模様だった。社会のかなりの人々が政治や政治家に対してだけでなく、グローバル化と経済システム全体に不満を抱き、怒りを募らせる。不安といら立ちが広がる時代には、ポピュリズム(大衆迎合主義)が人々を引きつける」
として、その次の段落で次のような趣旨を述べておられます。

すなわち、グローバル化とグローバリズムは、異なる概念である。
グローバル化は、技術や思考、人々、製品の移動が進む「現象」であること。
他方、グローバリズムは、国益よりも、ネオリベラリズム(新自由主義)的な世界秩序を優先する「イデオロギー」であること。

原文をお読みください。

「まず出来ますと言え」

日経新聞12月9日の日曜版に、石原和幸さんが特集されていました。石原さんは、イギリスのチェルシー・フラワー・ショーで、10回も金賞に輝く庭園デザイナーです。
この仕事に転身する前に、花屋の経営に失敗し、大きな借金を背負いました。

配達先のお客に「庭はできるの?」と聞かれ、「できます。得意です」と即答したそうです。
・・・実際はど素人で、ホームセンターに駆け込んでレンガの積み方を勉強した。盆も暮れも庭を造り続ける。「『ほんとに頼むんかい』って思うような注文も、なんとかやり方を考える。アイデアマンになれたのは、借金のおかげです」・・・

四角な座敷を丸く掃く2、広く考える

四角な座敷を丸く掃く」の続きです。

では、四角い仕事をその通りに片付ける職員(竹)が、良い職員か。
誠実に仕事に取り組む職員なのだけど、今ひとつ伸び悩む職員がいます。言われたことはきちんとやってくれるのですが。昇任させるには、何かが足りないのです。
それは、「言われたことはするけれど、言われないことはしない」「新しいことを考えない、応用動作ができない」のです。

上司としては、与えている仕事を処理するだけでなく、その仕事の課題は何か、次は何をすべきかを考えてほしいのです。その仕事を、広い視野から考えることです。
それを図にすると、外の大きな丸になります。四角な仕事の外(大きな丸)を考えてほしいのです。これが、松の職員です。

 

 

 

 

 

 

 

時代とともに、求められるものが変わります。すると、この四角も動きます。
例えば、右に動くと予想して備えておくのが、良い職員です。しかし多くの場合、右に動くのか、下に動くのかわかりません。その際に、広い丸で考えていると、対応が容易なのです。この項続く

倒産防止かゾンビ企業延命策か

12月9日の朝日新聞連載「平成経済 リーマンの衝撃12」「大変革迫られた中小企業」から。

・・・政府は中小の倒産を防ぐために、手厚い政策をとった。その一つが、2009年に施行した中小や住宅ローン利用者の借金の返済猶予を促す「中小企業金融円滑化法」だ。中小からの求めがあれば、貸し付け条件の変更に応じるよう金融機関に求めた。13年までの間、約30万~40万社が貸し付け条件の変更などをしたとされ、全国の中小の約1割にあたる。

「運転資金としてお金を借りるのは初めての経験。『禁断の実』に手をつける気持ちやった」。工作機械や航空機部品をつくる「大阪工作所」(東大阪市)の高田克己会長(74)は振り返る。1億5千万円の機械を購入できるほど業績は安定していたが、リーマン後は赤字続きで、金融機関から約1億円を借り入れた。「国に助けてもらえなければ、消えていたかもしれない」。新入社員の採用を再開するなど、経営は軌道にのりつつある。

08~09年に1万5千件を超えた倒産件数は、17年には8400件まで減った。円滑化法の効果があったとされる一方で、政府が技術力もない中小を延命させたという「ゾンビ企業」批判もつきまとった。
関西の中小企業団体幹部は「企業数が温存され、業界によっては消耗戦が続く。力のある企業の競争力を奪っており、ゾンビ企業が残った弊害だ」と指摘する・・・

難しいところです。各種の政策には、副作用もあります。それは、薬も同じです。その際に、どれだけ副作用を小さくするかが、課題になります。
また、緊急時は、副作用を知りつつ、強行する必要がある場合もあります。しかし、平時になっても、緊急時と同じことをしていると、批判が出ます。
アダム・スミスの時代のように、経済や産業に国家が介入しない時代なら、こんな問題は生じなかったのですが。国家と経済の関係、国がどこまで介入するかは、永遠の課題です。