日経新聞12月5日のオピニオン欄、The Economistの翻訳「中国、所得課税強化の皮算用」から。
「「もちろん払っていませんよ。私はバカじゃありませんから」。個人所得税を納めたことがあるかと聞かれて、北京の運転手リュウ・ヨンリ氏(仮名)はこう答えた。同氏の所得は納税が免除される水準を大きく超えているが、税逃れをしていてもとがめられたことはない、としゃあしゃあと語った」という書き出しです。
・・・中国の昨年の全税収に占める個人所得税収は、わずか8%にとどまった。彼のような強い思い込みをしている人が少なくないことがその一因かもしれない。ちなみに一定規模の経済国家のグループである経済協力開発機構(OECD)加盟国における個人所得税収の全税収に占める比率の平均は24%だ。
中国財政省の推計では、個人所得税を納めるべき国民は1億8700万人に上る。だが2015年に実際に個人所得税を納めたのは2800万人と全人口の2%にすぎないと財政省のある元職員は言う。中国政府は現在、中国共産党機関紙「人民日報」によれば歴史的に「最も抜本的」な個人所得税改革を進めている。だが、その抜本改革は理論的には税収基盤を拡大するのではなく、縮小するものだ。
10月1日から所得税の課税最低限を月収3500元(約5万7000円)から5000元に引き上げたのだ。この結果、財政省は課税対象者が6400万人に減ると見込んでいる。その一方で、財政省は、納税義務が生じる国民には確実に納税させる決意を固めているようだ。政府のこの方針転換は、政治的に極めて大きな意味を持つ可能性がある・・・