仙谷由人先生お別れ会

今日は夕方から、ホテルニューオータニで開かれた、仙谷由人元衆院議員のお別れの会に行ってきました。
東日本大震災が起きて、被災者生活支援本部を立ち上げた時、その事務方の責任者に私を指名してくださったのが、仙谷官房副長官でした。

官邸に呼ばれ、「何をするのですか」と質問した私に、「それを考えるのが君の仕事だ」答えられました。
その後の被災者支援活動や支援本部の運営について、全面的に私に委ねてくださり、支援してくださいました。官僚の使い方をご存じでした。
いろんな出来事がありました。それを思い出していました。
ご冥福をお祈りします。

慶應大学、地方自治論Ⅱ第8回目

今日30日は、慶應大学で地方自治論Ⅱの第8回目の授業。
前回説明した地方財政計画と国家予算との関係を補足した上で、財務省に提供してもらったパンフレットで、日本の財政状況を説明しました。
少ない負担で多くの事業、特に社会保障に費やしていること。その差は、借金で埋めていること。このような財政運営は、先進各国でもダントツであることです。これから負担をする若者には、申し訳ない話です。

財政学の授業を取っている学生は少ないので、このような話の上に、財政の機能、経済政策や産業政策の分類、さらには経済活動を支えている国家の役割を話しました。
先進各国との比較や、これまでの日本財政の軌跡と今後の予想も。かなり視野を広げての話です。しかし、財政学や地方財政学の教科書に書いてあることなら、慶應大学の学生は読んで理解してくれます。本に書かれていないことをお話しすることが、私の役割です。

レジリエンス2

レジリエンス」の続きです。

レジリエンスは、簡単に言うと、悲しいことやつらいことを受けた際の、精神的回復力です。
それは、個人差があります。同じような悲しい出来事でも、乗り越える人と超えられない人がいます。
『レジリエンス こころの回復とはなにか』には、ガラス製の人形、鋼鉄製の人形、プラスチック製の人形のたとえが出てきます(p32)。ハンマーの一撃を加えると、ガラス製は砕け散り、鋼鉄製は壊れず、プラスチック製は消えない傷がつきます。もっともこのたとえは、提唱者が撤回しているようです。
ガラス製のボール、プラスチック製のボール、ゴム製のボールにたとえてはどうでしょうか。叩くと、ガラス製は壊れ、プラスチック製は傷がつきますが、ゴム製はへこんでも元に戻ります。

レジリエンスは成長とともに、強くなります。精神的負荷が適当にかかり、それを順次克服していくと、精神的に強くなります。苦しいことや失敗を乗り越え、成長していくことです。先ほどのボールのたとえは、使えませんね。
これは、肉体的能力と同じでしょう。子供が運動をして、体力や走る力を向上させます。この際に負荷を掛けずにいると、強くなりません。かといって、無理をすると筋肉を痛めます。これを精神力に当てはめて理解するのが、わかりやすいでしょう。
実社会では、子供に筋肉を痛めるほどの肉体的負荷を掛けることは、少ないでしょう。ところが、精神的には、虐待、親の離婚、いじめなど、とてもきつい負荷がかかることもあります。それを、社会として、どのように救っていくか。

インターネットで調べて、久世浩司著『マンガでやさしくわかるレジリエンス』(2015年、日本能率協会マネジメントセンター)を読みました。これはわかりやすかったです。

職場のタスクとリレーション

11月26日の日経新聞「やさしい経済学」、中村和彦 南山大学教授の「組織開発で考える職場の活性化  日本企業、人間的側面を軽視」から。

・・・野球チームが優秀な選手を寄せ集めても勝てるとは限りません。同様に、人を集めただけでは職場や組織は機能しません。組織開発とは、職場や組織を機能させ、活性化させていくための、人間的側面のマネジメントの考え方や手法です。この連載では、職場や組織の活性化を阻む諸問題について、組織開発の考え方に基づいて、どのように対処していくかを紹介します。
組織には、「タスク」と「リレーション」という重要な2つの軸があります。タスクの軸とは、仕事や業績に関心を向け、その達成のために働きかけることを重視するものです。一方、リレーションの軸では、人や関係性といった人間的側面に関心を向け、関係構築を目指して働きかけることを大切にします。
職場や組織が活性化して成果を上げるためには、タスクとリレーションの両方が機能する必要があることが、組織開発や社会心理学の多くの研究で明らかになっています・・・

レジリエンス

セルジュ・ティスロン著『レジリエンス こころの回復とはなにか』(2016年、白水社、文庫クセジュ)を、たまたま本屋で見つけて、読みました。

レジリエンスという言葉を、私は最近聞くようになりました。災害復旧や国土強靱化の文脈で、災害に強い施設や仕組みと理解していたのです。
ウィキペディアなどによると、心理学で使われる用語なのですね。ストレスという言葉とともに、元は物理学の用語です。それを、心理学が借用しました。
ストレスは「外力による歪み」で、レジリエンスはそれに対して「外力による歪みを跳ね返す力」とのことです。看護学でも、詳しく解説されています。

人がストレスやトラウマ(精神的外傷)を受けた際に、それを乗り越えていく力です。この本によると、レジリエンスの概念には、3つ+1つの波があったそうです。
一つ目は、トラウマを乗り越えていく能力を、個人の「素質」に求めました。しかし、この考えでは人間が二分化され、生まれ持って克服できる人とできない人に別れてしまいます。
二番目には、「過程」と理解しました。トラウマを受ける状況の中で、行動を起こす、あるいは援助することで、その状況を乗り越えていく過程です。ところが、この考えでは、あらかじめ道筋が決まっていて、誰もがその段階を経てレジリエンスを身につけます。うまく行かない人は、その路線からの失敗者になります。
三番目には、「力」と考えます。誰もがこの力を多少とも持っていて、生まれ持った力もあれば、環境によって身につける力もあります。そして、ストレスは常に有害とは言えず、うまく付き合えばレジリエンスを強くすることができます。援助することも有用です。
さらに第四番目には、個人だけでなく、集団(社会、経済、政治)にも適用されるようになりました。「レジリエント(強靱)な都市」「レジリエント(打たれ強い)会社」というようにです。

「抵抗力」や「回復力」という訳が当てられていますが、「克服」という日本語がわかりやすいと思います。ストレスに対する抵抗力です。
私はこの分野は門外漢なのと、翻訳という制約があって、読みやすい本ではありませんでした。わかりにくいところは、サッサと飛ばして読みました。それでも、得るところは多かったです。日本語で簡単な入門書があれば良いのですが。あるのかもしれません、私が知らないだけで。
もっと早く、このような学説を知っておくべきでした。私個人の人生についても、職員たちの悩みを聞く際にもです。この項続く