瀧澤弘和著『現代経済学』

瀧澤弘和著『現代経済学』(2018年、中公新書)が勉強になりました。帯に「20世紀半ば以降に多様化した潮流の現在とこれから」とあります。

私が大学で学んだ経済学は、近代経済学と呼ばれた、サミュエルソンであり新古典派経済学でした。ミクロとマクロです。最初は、グラフと算式が取っつきにくく、なじめませんでしたが。わかると、これはこれで面白かったです。財政学は、貝塚啓明先生の授業が、わかりやすかったです。
マルクス経済学も少しかじりましたが、早々と放棄しました。これは現実世界を分析する経済学でなく、政治だと思ったので。

ところが、本書にあるように、20世紀後半から、様々な経済学が出てきました。ゲーム理論、行動経済学、制度学派・・・。「そんなのも、経済学なんだ」と思いましたが。近年のノーベル経済学賞は、様々な理論や分析が受賞しています。
しかし、これら新しい経済学派は、新古典派に取って代わるのではなく、それを基礎としつつ範囲を広げたように見えます。それら発展した経済学派が、どのような関係にあるのか。それを知りたかったのです。p27に大まかな見取り図が書かれています。門外漢には、このような地図が欲しかったのです。

近代経済学は、理論としてはかなり完成度が高いものですが、余りに抽象化されていて、現実からは遠くなっていました。その道を進めば、算式ばかりが高度になります。しかし、それは現実経済を説明するものではなくなります。
「合理的経済人が、コストや時間がかからないという条件の下で、判断と交換を行う」という前提は抽象的すぎます。20世紀後半から始まった経済学の多様化は、その前提を取り外し、現実世界に引き戻したと考えたらよいのでしょう。

筆者が述べておられるように、本書は現在の経済学をすべて網羅してはいません。金融論、国際経済、国際金融、財政学、労働経済など、取り上げられていない経済学もあります。また、実学に近い応用経済学も、対象外です。しかし、それは欲張りというべきでしょう。

追記
ジャン・ティロール『良き社会のための経済学』(2018年、日本経済新聞出版社)も良い内容ですが、この本は分厚いですね。(2018年11月11日)

冬の足音

昨日今日の福島市は、朝の気温が10度を下回りました。昼も風は冷たいです。
西にそびえる吾妻連峰は、山頂付近に雪が積もりました。吾妻小富士のきれいな姿も、雪に覆われてさらにくっきり見えます。
寒くなることを予想して、ハーフコートを着てきました。正解でした。
冬が駆け足でやってきています。

大企業による産業復興支援、結の場

復興庁では、大手企業等が、技術、情報、販路など自らの経営資源を、被災地企業に提供する支援事業の形成の場として、地域復興マッチング『結の場』を実施しています。
平成29年度の開催から生まれた成果が公表されました。「資料

ワークショップを開催し、その後、大手企業等からの支援提案により、被災地域企業が今まで気付かなかった新分野への進出、販路拡大等の新しい取り組みが開始されていますので報告します。

学校の校庭にある仮設住宅解消見込み

9月25日に、復興庁が「岩手県及び宮城県の学校校庭にある仮設住宅の解消見込みについて」を発表しました(すみません、紹介が遅くなって)。「資料

岩手県7市町村35 校、宮城県7市町32 校、合計67校の校庭に、仮設住宅が建設されました。解消が進み、平成 30 年8月末時点で、岩手県11 校、宮城県3校、合計14校になりました。平成 31 年度末には、全て解消される見込みです。

津波被災地では、海沿いの平地が津波にのまれ、危険なため、仮設住宅を建設できませんでした。かといって、リアス式の海岸です。住宅に適した平地がありませんでした。そこで、高台にある学校の運動場や公園を使ったのです。当然のことながら、生徒は運動ができなくなりました。当初は、体育館や教室も避難所に使われ、授業ができませんでした。
運動場については、近くの学校の運動場があればそれを使ってもらい、また畑に土を入れて仮設の運動場をつくりました。
仮設住宅を閉鎖する際には、学校の運動場に立てたものを優先して解消しました。それでも、まだ14校も残っています。
他の県では校庭に仮設住宅を造らなかったので、この2県ですべてです。

保険料+税金で成り立っている社会保障

10月8日の日経新聞オピニオン欄、大林尚・上級論説委員の「「消費税こわい」偏る負担 社会保障、現役もう限界」に、わかりやすい図が載っていました。

「主な社会保障制度の財源構成」です。生活保護、基礎年金、国民健康保険、後期高齢者医療制度、介護保険、協会けんぽ、健保組合、厚生年金です。
このうち、健保組合と厚生年金は全額保険料でまかなっていますが、その他の制度には、国費と自治体負担が入っています。生活保護は全額が公費、基礎年金・国民健康保険・後期高齢者医療制度介護保険は、半分が公費です。この公費は、税金です。
皆さん、ぼんやりとはわかっているのですが、このような図で示されると、わかりやすいですね。

大林さんの原文は、今後も増え続けることが予想されるこれら社会保障費の、財源をどうするのかを問うています。
次のような記述もあります。
・・・増税に真っ向から挑んだのは与謝野馨氏。2009年、麻生政権の経財・財務相として改正所得税法案の国会審議の矢面に立った。付則にこう書かれていた。「消費税を含む税制の抜本改革を行うため11年度までに法制上の措置を講ずる」。増税の法定期限を区切った法案を賛成多数で成立させた自民党は、その年の衆院選に大敗し野に下った・・・
私は、総理秘書官として、その現場に立ち会いました。