日本の教育改革

教員と校長の違い」(9月10日)で紹介した、8月29日の読売新聞、アンドレアス・シュライヒャーOECD教育スキル局長のインタビューでは、次のような内容も語られています。

・・・次期学習指導要領では「主体的・対話的で深い学び」を教育の中核に位置づけており、OECDの考え方に沿った改革といえる。これまで知識の受け手だった生徒たちが知識の作り手に変わるよう、主体性を育成するものだ。
科学技術の発達により、生徒たちはいまや教師と同じ知識を簡単に得ることができる。教師の主たる仕事は、生徒への知識の伝達ではなく、生徒の良いコーチ、良い相談相手、良い評価者、学習環境の良い設計者になることだ・・・

9月6日の朝日新聞オピニオン欄「学ぶ場所 学校だけ?」で、永田佳之・聖心女子大学教授が、次のように語っておられます(この記事は、フリースクールについてのものです)。
・・・日本の小学校や中学校では、学習指導要領に基づき、大勢の子どもに一方的に教える一斉授業の光景が長らく見られました。しかし価値観や教育のニーズが多元化した現在、この教育システムには様々なほころびが生じています。
民間会社の調査では、自身の特性として「創造的だ」と考える10代の子どもたちは、日本は欧米より大幅に低くわずか8%でした。内閣府の調査でも、自己肯定感や「社会を変える力が自分にある」と考える子どもの割合は軒並み海外より低い。大人が期待する成果に応えるよう育てられることが一因かもしれません・・・

表が付いています。自分の特性で選択肢から「創造的」を選んだ人の割合です(アドビ社調べ)。中学・高校生では、日本は8%、イギリス37%、ドイツ44%、アメリカ47%。教師では、日本2%、イギリス27%、ドイツ26%、アメリカ25%です。
この項続く

仕事のリズムを取り戻す

今年の8月はとても暑かったので、原稿を書くなどの生産活動はできませんでした。本を読むことくらいでした。異業種交流会は熱心に行い、ホームページの更新も行いましたが。

しなければならないこと、やりたいことは、一覧表に書き出していたのですが。なかなかエンジンがかかりませんでした。「まあ、まだ時間はあるわな」と。これまでなら、夏休みでも、原稿書きに追われていたのですが。締め切りが迫っていないというのも、理由です。『明るい公務員講座』で批判した「夏休み症候群」です。

今週から、ようやく涼しくなりました。大学授業の再開も迫ってきたので、のんびりしていられなくなりました。10月には合計5つの講演などを引き受けていて、主催者から準備の催促が届き始めました。
「明るい公務員講座」第3巻の編集も始まりました。次の連載の準備もしなければなりません。引き受けた原稿も、書きかけの途中で放置してあるし・・・。

それぞれ締め切りが近づくと、追い込まれて、進むのです。進まない仕事を進める方法は、『明るい公務員講座』に書いたように、締め切りを設定する、他人に催促してもらうことです。
そろそろ、仕事のリズムを、取り戻さなければなりません。

電子メール誤送信防止・フールプルーフ

「フールプルーフ」という言葉をご存じですか。英語で、fool proofです。
辞書には、「利用者が間違えた操作をしても、危険な状態を招かないようにする仕組み」というような説明があります。

電子レンジが出始めた頃の話です(うろ覚えなので、不確かなのですが)。水虫を治そうと、足を入れて作動させた人がいたそうです。体内の水分が沸騰して、大やけどになります。そこで、扉を閉めないと、作動しないようにしたのです。
この時に、フールプルーフという言葉を覚えました。私は英語を直訳して、「バカ防止装置」と理解しました。「不注意による失敗防止装置」の方が、正しいですね。
(インターネットで調べると、そのような事件はでてきません。そもそも電磁波が外に漏れ出さないように、扉を閉めないと作動しないようにしてあるそうです。すると、私の記憶は間違いですね)

さて、何を言いたいか。ケアレスミスといわれる不注意による失敗は、通常なら起こらないのですが、何かの拍子にやってしまいます。職場でよくある失敗は、ファックスや電子メールの誤送信です。そこで、いろんな防止策がとられています。
・ファックスで送る場合は、2人以上で確認すること。
・電子メールを送る際に、「宛先は間違いないですか」と警告が出る仕組み。
・電子メールで、添付ファイルを送る際に、「その添付ファイルは間違いないですか」と警告が出る仕組み。
・外部の人に電子メールを送る際に、送信ボタンを押してから実際に送信するまでに、数分間時間をおいて、取り消しができるようにする仕組み。

私の職場でも、いくつかの仕組みが入っています。
私は、すべての電子メールの送信の際に、「確認画面」が出るようにしています。「面倒だなあ」と思うことがありますが。この仕組みのおかげで、何度か失敗を防ぐことができました。

福島の災害と復興を見る観光

ホープツーリズムって、ご存じですか。ダーク・ツーリズムは、聞いた人もいるでしょう。災害や事故の現場を訪ねる旅行です。
復興庁では、民間の協力を得て、福島を対象地域とした災害と復興を見る、体験旅行を進めています。「ホープツーリズム」という事業を立ち上げました。
災害や事故は、見たくないものです。しかし、起きるものです。それに対してどのように対応したか、そこからどのように復興したか。その経験は、後世の糧となります。

災害と事故をそのままで終わらせたら、それはダーク・暗いものです。それを、後世に生かす。過去を振り返るだけでなく、未来に生かすのです。ダークでなく、ホープです。これは、日本の財産になると思います。
趣旨から引用します。
・・・福島をフィールドとした「主体的・対話的で深い学び」の実現
~今、福島でしか学べないことがある!~
ふくしまの「ありのままの姿」と未来を見据え復興に挑戦する「人々」との出会いを通じて、希望を感じ自分自身を成長させる旅。震災と原発事故を経験したふくしまならではの”新しい学びの旅”・・・

今回、体験ツアーを募集中です。「ふくしま 発見・体感モニターツアー」。いくつもコースがあります。画面をクリックして、探してください。
地元の人でも、復興庁の職員でも、2~3日でこれだけの場所を見て、これだけの経験をすることはありません。
興味のある方は、ご参加ください。参加費用は、私の推計では、通常費用の半額から4分の1でしょうか。お得です。

戦国大名と分国法

清水克行著『戦国大名と分国法』(2018年、岩波新書)が面白かったです。
日本史で少し習った、戦国大名がつくった法律=分国法についてです。この本を読んで、概要がわかりました。行政法+刑法+民法+商法のようなものですね。その内容は、本書を読んでいただくとして、もっと興味深かったのは、その定めの効力です。

それまで、制定法としては、律令や御成敗式目がありました。時代の変化と地域の実情に合わせて慣習法ができ、それらも取り込んで「国内法」をつくった意義は大きいでしょう。ところが、有力大名がみんな、分国法を作ったわけではありません。
そして、分国法の内容やなり立ちを見ていくと、大名が「強力な支配権で法令を発布した」のではなさそうです。部下に突き上げられて「協約」として結ばれたもの(マグナカルタのようです)や、部下が言うことを聞かないのでしびれを切らして定めたものもあったようです。
そしてなにより、結城氏、六角氏、今川氏、武田氏のように、その後しばらくして滅びた大名、伊達稙宗のように息子に追放された大名と、決して権力基盤が盤石ではなかったのです。逆に、だからこそ、制定法を作ったのかもしれません。

さらに、これら法令がどこまで守られたか。それも、判然とはしません。文書を見て、「立派なものができた」と考えるのは、早計です。
そのような、ものの見方を教えてくれる名著です。私は、そのような観点から、この本を読みました。