6月28日の朝日新聞夕刊、赤峰幸生「日本の紳士服」は、「黒の価値観 クール感、色や素材で選んで」でした。
・・・新卒生の採用選考が6月1日に解禁され、街に黒ずくめのリクルートスーツがあふれた。企業が強制しているわけではないと思うが、何年も前から当たり前の光景になった。
黒のスーツにバッグと靴、それにシャツとネクタイをセットで10万円以内で買う、という学生が多いと聞く。でも、人生で初めて袖を通すスーツが黒でいいのだろうか。私はかねがね疑問に思ってきた。
他方ビジネスパーソンに目を転ずると、クールビズと称してネクタイをせず、だらりとシャツのボタンを開けている人がいかに多いことか。彼らも黒のスーツが多い・・・
・・・しかし、ビジネスの現場まで黒というのは、欧米のスタンダードから外れている。海外では、黒スーツはデザイナーや水商売の関係者など一部の人たちが着るもので、それ以外の人がビジネスで着るという文化は根ざしていない。彼らが黒スーツを着るのは、パーティーなどフォーマルの場合にほぼ限られ、喪の場合でも黒は親族だけで、友人知人はグレーや紺のスーツに喪章を付けることが多い。
凝り固まった日本の黒スーツに対する価値観を崩すのは並大抵ではないが、夏場の暑い日に、まずできることがある。色と素材で涼を出すことだ・・・
・・・クールビズと言ってネクタイを外すだけでは、まったく様にならない。ネクタイをしないなら、ジャケットスタイルにしてチーフを胸元にアクセントとして入れる。あるいはドラマで描かれる昭和の刑事のように、開襟シャツに麻のスーツでもいいだろう。
2年後の東京五輪では、多くの外国人が訪日する。日本人のスーツスタイルが異様に思われてしまうことを憂えている。
まず、黒スーツの就活はやめた方がいい。受け入れる企業側も認識を改め、小売店にしても「これ一着があれば、冠婚葬祭大丈夫です」という文句で黒ずくめを推奨する売り方は控えるべきだ。
着こなしの楷書体を誰も教えてくれない今、まずは基本のきとして、私は「黒を捨てよ、街に出よう」と、小さいながらも声を上げていこうと決めている・・・
白のシャツに黒のスーツ、それでノーネクタイは、やめて欲しいですね。