政府の信頼度、年金保険料納付率

内閣の支持率などが、毎月のように報道されます。一つの参考にはなりますが。どこまで回答者が「本当のこと」を答えているか、疑問があります。選挙前に聞くと、「関心がある」「投票に行く」と答える人が多いですが、実際の投票率は、そんなに高くないこともあります。

このような世論調査でなく、国民の本音が出ている「指標」があります。例えば、国民年金の保険料納付率です。7月24日の読売新聞に、石崎浩・編集委員が解説しておられました。「国民年金納付 実質4割」。
国民年金は自営業者など、会社や役所に勤めていない人の年金です。強制加入です。
2017年度の納付率は、66%です。2011年度が最低で、59%でした。少し上がっています。しかし、1990年代半ばまでは、80%を超えていました。
もっとも、この解説では、この数字にはマジックがあると説明されています。貧しいなどの理由で、保険料納入を免除さえている人がいます。仮に、この574万人を計算に入れると、納付率は40%まで下がります。

それはさておき、保険料を納めないと、年金はもらえません。納めると、将来に年金給付として返ってきます。しかも、税金を投入しているので、かけた保険料よりたくさん戻ってきます。
しかし、「国営保険」が信用できないとして、納めない人がいるのです。政府の信用度が現れています。もちろん、その他の理由もあるでしょうが、少なくとも「貧乏で納められない」人は、先に述べたように免除されています。

80%あった納付率が、1990年代半ばから急速に低下しています。先日紹介した、自殺者が3万人を超えたのが、1998年です。バブル崩壊後、日本社会は確実に変わりました。
厚労省の資料では、年齢別の納付率も出ています。p5の図4と図5です。40歳以下の年齢で低くなっています。20代前半が高いのは、大学生が多くて免除されてるからでしょう。

和歌山県で震災対応の講演

今日は、和歌山県市町村長防災研修会の講師に行ってきました。
和歌山県と奈良県(十津川)は7年前に豪雨による大きな被害を受けました。また、南海トラフによる巨大津波が予想されています。そこで、このような研修をしておられるようです。知事を含め、130人の方が熱心に聞いてくださいました。
災害は一つひとつ内容が違うので、これが定番の防災・救助・復興だというものはありません。しかし、経験しておくことや、経験談を聞くことはとても重要です。
和歌山県は、今回の西日本での豪雨災害についても、広島県に職員を送って応援するとともに、学ばせておられます。7年前に大災害を経験しておられますが、7年経つと、職員も異動しています。記憶を新たにする必要があるのです。

今日は、新幹線で新大阪まで2時間半、そこから特急で、和歌山市まで1時間の道のりでした。帰りも同じです。
慶應大学の期末試験の採点が残っているので、100枚持ち込んで、行きと帰りの新幹線でせっせと採点に励みました。
新幹線の中は、邪魔が入らないのではかどります。少々揺れることと、周りは夏休みの旅行客が多く「私は何でこんなことをしているんだ」と疑問がわくことが、欠点ですが(苦笑)。
昨日は富山へ、明日は福島です。

地域主義の復活、中央政府の機能不全

7月28日の朝日新聞オピニオン欄、ニューヨークタイムス、デイビッド・ブルックスさんの「地域主義の復活 人間味のある緩やかな革命 」から。

・・・私たちはこれまで自由主義や保守主義を試みてきた。最近はポピュリズム(大衆迎合主義)を試している。次の時代を方向づけるのは、ローカリズム(地域主義)の復活だろう。
ローカリズムとは、権力は、地域社会や市、州レベルで行使されるべきだという考え方である。ローカリズムが、物事の進め方や哲学としても盛んになっているのは、国の中央政府が機能不全に陥っている一方で、多くの市町が活力を取り戻しているからだ。ワシントンの政治家が互いに抽象的なイデオロギーを浴びせ合うのは惨めなものだが、市長や知事たちは具体的な成果を次々と生み出していて充足している。
ローカリズムが最近盛んなのは、多くの都市が国よりも明快なアイデンティティーを持っているからでもある。私たちが社会に対する信頼度が低い時代に生きていることも、広がりを増す理由の一つだ。人々が信頼するのは、身近にいる地に足のついた変革のリーダーたちだけなのだ。
次の時代にくるのは、おそらくこのローカリズムの波だろう。そう仮定し、いくつか指摘しておくことは有用だろう・・・

・・・ローカリズムは真の革命である
ローカリズムの文字通りの意味は権力構造をひっくり返すことだ。これまで数十年の間、金、人材、権力は国家権力の中心に向かって流れていた。キャリアを積んだ政治家たちは中央政治への進出を目指し、優秀な若者は国立大学を経てニューヨークやワシントンへと押し寄せた。連邦政府はアメリカ人の生活への支配を強めていった。
しかしローカリズムにおいて、権力が集中しているのは実際に仕事が行われているシャベルの先端なのだ。専門の知識や技能はシンクタンクではなく、物事がどのような場所でどう進み、それを誰が行うのかといったローカルな知識を持つ人たちの間にこそある。成功は、どれだけ大きなスケールでできるかではなく、どれだけ深く関われるかによって決まるのだ・・・

・・・ローカリズムは連邦政府の権力行使の縮小版ではない。違う種類の権力だ
第1の違いは認識論の問題だ。連邦政府の政策立案者は「ホームレスの問題について我々に何ができるだろうか?」と問う。一方、ローカルの人は(ホームレスである)フレッドやマリーに、家を持つためには何が必要かを直接問いかける。
連邦レベルの政治家が見ているのは、データに還元できる事象だ。だが、地域レベルの政治家は、データ化できる物事も、そうではないものも見ているのだ。
第2の違いは関係性だ。連邦の権力は人間味がなく、画一的、抽象的で規則を重視する。一方、ローカルな権力には個性があり、相関的で愛情があり、不規則で、助け合いと信頼という共通の経験に基づく。国家のシステムは合理的な知性を高く評価するが、ローカルなシステムは情緒的な知性もまた求めるのだ・・・

我が意を得たりです。原文をお読みください。

中沖豊・前富山県知事をしのぶ会

今日7月29日は、富山市まで、中沖豊・前富山県知事をしのぶ会に行ってきました。
私が中沖知事に総務部長としてお仕えしたのは、平成6年(1994年)から平成10年(1998年)までの4年間です。私は39歳から43歳、若かったです。いろんなことを経験し、そして学びました。

特に、知事の仕事に対する姿勢は、勉強になりました。粘り強く、そして熟考されます。ええ加減なところで結論を出してしまう私には、その辛抱強さは驚きでした。
もう一つは、富山に対する責任感です。天候や農作物の出来、さらには道路脇の景観まで。すべてのことに、知事としての気配りと責任を持っておられました。それらのいくつかは、総務部長に降ってくるのですが(苦笑)。所管分野だけをやり過ごすことが多い公務員としては、「責任者とはこうあるべきだ」と勉強になりました。
当時、読売新聞社が行っていた、県民の知事支持率調査では、常にトップでした。県民の知事に寄せる信頼がわかります。

性格も仕事の仕方も全く違う私を、4年間も使ってくださいました。
総務部長を終えて、内閣の省庁改革本部に転勤したら、早速訪ねてきてくだいました。そして、私を励ますだけでなく、私の上司に「岡本君を頼みます」と頭を下げてくださいました。

ミスター新幹線という名前がつくほど、北陸新幹線整備に心血を注がれました。3年前に新幹線が開通した時は、本当にうれしそうでした。
今日も、その新幹線で東京から富山へ行き、また帰ってきました。所要2時間15分です。便利になりました。
中沖知事は、空の上から、満足して富山と新幹線を眺めておられると思います。

鎌田先生の新著『地球とは何か』

鎌田浩毅・京都大学教授が、『地球とは何か』(2018年、SBクリエイティブ )を出版されました。
「鎌田先生の地球科学の入門書決定版」でしょうか。読みやすくわかりやすいです。
地球の構造だけでなく、世界遺産(雄大な自然がきれいな写真で載っています)や日本列島、気候変動などのテーマも入っています。
学生時代に習った地学も、これだけ面白かったら、もっと勉強したのですが。
これで1000円は、安い。

・・・武田信玄曰く「動かざること山のごとし」と。しかし、この言は地球科学的には正しくありません。なぜなら、日本列島のみならず世界の五大陸自体が移動を繰り返してきたからです。これは「大陸移動説」として地球科学の中心課題となりました・・・

第1章 地球の誕生
第2章 地球の内部構造
第3章 プレート・テクトニクスという考え方
第4章 地球環境はどのようにできたか
第5章 世界遺産で見る地球の歴史
第6章 日本列島と人類の歴史と気候の変動
第7章 地球の鉱産資源とエネルギー資源