アメリカ大統領の権限と限界

東京財団政策研究所監修 『アメリカ大統領の権限とその限界 トランプ大統領はどこまでできるか』(2018年、日本評論社)を紹介します。

編者でもある久保文明先生が、解説を書いておられます。「トランプ大統領はどこまでできるか」。
これまでの大統領や、アメリカのエスタブリッシュメントの伝統的考え方とは、極めて異なった政策を打ち出すトランプ大統領。彼は、どこまで変えることができるのか。その権限の限界は何か。極めて示唆に富む研究です。そして、大統領の権限の限界に挑むのは、トランプ大統領が初めてではないのです。

さて、アメリカ大統領については、本書を読んでいただくとして。日本の場合はどうか。制度的限界と、運営での限界をあわせて、分析する必要があります。
かつて、日本の首相は権限が弱いので、大統領のように直接公選にすべきだとの主張がありました。これは、全くの誤解です。
議会と行政の長が別々の選挙で選ばれる二元代表制と、議会が行政の長を選ぶ議院内閣制と。後者なら、必ず議会の多数派が行政の長になるのですから、議会運営には苦労しません。参議院が少数与党になる「ねじれ」の場合が、困りますが。アメリカの大統領制は、議会の多数派と大統領が同一会派になるとは限りません。大統領の方が首相より、議会運営に苦労する可能性が大きいのです。

なぜ、かつては、日本の首相は「弱い」と考えられたか。それは、制度ではなく、運営によってです。党首として選んでくれた与党議員との関係です。
首相は、ねじれ国会や野党と議席数が接近している場合を除いて、野党との関係では苦労しません。与党議員が、首相=党首の座を揺るがすことで、苦労するのです。
安倍首相について、第一次政権と今の第二次政権とでは、制度は何も変わっていません。今の政権は、与党の中での力関係が、安定した政権を作っています。

首相は、どこまで自由に決めることができるか。これは、難しい問題です。
まず、制度的に、一人で決めることができないことがあります。例えば、金利については、日銀が所管してます。日銀総裁が首相と足並みをそろえれば、首相の意図が通ります。裁判所も、最高裁判所判事たちが首相と同じ考えなら、それに沿った判決が出ますが、常にそうなるとは保証の限りではありません。
そして、もっと難しいのが、与党や国民の「支持」です。支持があれば、困難と思われる政策も実現することができます。小泉首相の郵政民営化です。他方で、支持が弱く政権が弱いと、思ったようには政策を実現することはできません。
社員は社長の部下であり、公務員も上司の部下です。部下は、上司の言うことを聞かなければなりません。しかし、党員や国民は、首相の部下ではありません。選んでくれた人・選んでくれる人たちなので、その支持が重要なのです。
この指示は、日々刻々と変わります。世論調査がしばしば行われるゆえんです。

ビジネスマンの服装

6月24日の日経新聞スタイル欄、岡藤正広・伊藤忠商事会長の「強いモンとケンカせえ」は勉強になりました。本文を読んでいただくとして、もう一つ興味深いのは、そこで紹介されている「満杯のクローゼット」です。

まあすごい着道楽です。もちろん、商売柄、ファッションに気を配ることは当然でしょうが。
・・・スーツは毎年、春夏モノと秋冬モノを各10着はつくる・・靴は革靴だけで100足以上・・・とのことです。

日経新聞のウエッブサイトを検索したら、岡藤会長の服装に関する話として、次のような記事もありました。こちらも、参考になります。
ニッポンのビジネスマン、なんで服に関心ないんやろ」(2017年5月17日)
世の中すべてがファッションや 感度を高め人生豊かに」(2017年5月24日)

その中に、次のような話も載っています。
「毎日の装いはご自分で選ばれているのですか」という問に、「それはそうやろ、誰が選ぶんや(笑)」

私も日経新聞夕刊コラム3月29日付の「帽子」で、男性の仕事服について苦言を呈しました。私の場合は、岡藤会長ほどにはセンスがないので、キョーコさんに選んでもらっていますが。

在宅医療、武藤真祐先生

6月23日の朝日新聞オピニオン欄「広がる医療の地域格差」に、武藤真祐さんが出ておられました。

・・・私は在宅の患者さんを往診するクリニックを、都内4カ所と宮城県石巻市で運営しています。またシンガポールでは、在宅医療サービスと、それを支えるためのICT(情報通信技術)やAI(人工知能)の企業を経営しています・・・
・・・その経験から、医師や看護師、介護スタッフなど、チームで医療を支えるのが大切だと考えます。
クリニックでは、書類は医師以外のスタッフが8割方作ったものを医師が仕上げます。在宅医が移動中に診療内容を電話で口述すると、石巻の専門スタッフがカルテの下書きデータを作ります。医師が診療や患者とのコミュニケーションに時間を使えるようにするためです。専門外の病気を診る場合、グループ内の専門医が相談にのります。テレビ会議で週3回、スタッフの研修をして情報共有をしています。効率化を図るとともに、スタッフや地域の間の格差をなくす努力をしています・・・

記事にも出ているように、石巻市で在宅医療を行ってくださっています。かつて、このホームページでも紹介しました。「被災地から発信する新しい地域包括ケアモデル」(2013年6月8日)

SNS時代のスポーツ中継

6月22日の朝日新聞オピニオン「いいね!スポーツ中継」、水越伸・東大大学院情報学環教授の「昭和の型から抜け出して」から。

・・・一般の人がSNSで発信できるようになり、スポーツの見せ方は一つではないという事実と、その面白さに気づいてしまったんです。10代のネットの利用時間は、テレビの視聴時間を上回っています。受け手のニーズの変化に合わせ、送り手も中身を工夫する必要があります。

ところがそんな時代に、日本のテレビは古い型から抜け出せていません。昭和時代に隆盛だったプロ野球や大相撲、プロレスを基軸とした従来の型です。王や長嶋、力道山といったスーパースターだけに焦点を当て、勝利の物語にしか関心を示さない。サッカーW杯でも特に民放は、日本の本田や香川らスター選手のことばかりやっています。
型を持つのが悪いわけではありません。大学の論文を書くにも講義を進めるにも一定の型はあります。ただ、例えば武道でいえば、ある流派の中でその型だけを神格化していたら異種格闘技では負けますよ。「もっと違う型もありうるのでは」と意識することが大事だと思います。

例えば成功した選手の物語もいいけど、うまくいかずに無念に終わった選手もしっかりとり上げて欲しい。「どうしてうまく行かなかったのか」に焦点を当てることは、その競技に取り組む子どもたちのためにもなります。
また、日本人選手だけをとり上げるのもやめて欲しい。テレビのプロが思う以上に、型にはまっていない視聴者は多い。もっと多文化的であるべきだと思います・・・

田村市役所で講演

今日25日は、福島県田村市役所で、職員研修の講師を務めてきました。放課後に、100人の職員有志が集まってくれました。
仕事の後、さらに夕べ遅く(未明)に、サッカーワールドカップの日本対セネガル戦があったので、睡眠不足かと思ったのですが(笑い)。皆さん、しっかりと聞いてくださいました。
いつものことですが、生々しい話を、具体事例を入れてお話ししました。