6月5日の日経新聞オピニオン欄、リチャード・ボールドウィン、ジュネーブ国際高等問題研究所教授の「グローバル化の将来は」から。
・・・グローバル化の第1波は(蒸気エネルギーが普及する)1820年ごろに始まり1990年ごろまで続いた。第1波は主にモノの取引の国際化だった。日本で言えば(トヨタ自動車本社に近い)名古屋圏に産業集積が進み、それが自動車産業の競争力を高めた。輸出が増えると、さらに集積が進んだが、技術革新は国内にとどまった。国境を越えた伝達が難しかったからだ。
これで(日米欧の)先進国がいち早く工業化し他の国々が停滞する、大いなる分岐(グレート・ダイバージェンス)が起こった。
1990年ごろから逆転が起こった。中国、インド、インドネシアのような新興国が先進国よりも速い成長をとげるようになった。第2波のグローバル化は先進国と新興国の所得格差を縮める方向に動いており、これを私は大いなる収れん(グレート・コンバージェンス)と呼んでいる。
その背景には、1980年代から始まったICT(情報通信技術)革命で、国際的な協働がしやすくなったことがある。企業は生産工程の一部を近隣の低賃金国に移し、自社の技術も移転するようになった・・・
・・・グローバル化は(価格差を利用して稼ぐ)裁定取引だ。第1次はモノ、第2次は技術ノウハウ、そして第3次は労働サービスの裁定取引だ。
今はサービス労働の多くは1つの国の中で行われているが、それが国境を越えていくのが第3のグローバル化だ。私はこれを(遠くと移民の合成語の)「テレマイグレーション(Telemigration)」と呼んでいる。
要するに在宅勤務が国際化するということだ。日本でも企業は在宅勤務の活用で労働力不足を補おうとしている。デジタル技術の深化で遠隔地から仕事に参加することが可能になった・・・
記事についている表が、わかりやすいです。一部を抜粋します。原文をお読みください。
第1次グローバル化:1820年ごろ~、蒸気機関の普及。モノが移動するコストの低下
第2次グローバル化:1990年ごろ~、情報通信技術革命の進展。アイデアが移動するコストの低下。
第3次グローバル化:2016年ごろ~、遠隔操作によるバーチャルな人の移動。人が移動するコストの低下。