ケインズ予測の的中と外れ

4月23日の読売新聞に、吉川洋・立正大学教授が「豊かな21世紀 ケインズ予測現実と落差」を書いておられました。

・・・1930年、経済学者ジョン・メイナード・ケインズは100年後の世界がどんな社会になるか予測した。大不況の最中、多くの人は世界経済の将来に悲観的だったが、ケインズは「われわれの孫たちの経済的可能性」と題するエッセーで、21世紀前半の世界に楽観的な見通しを述べた。
予測のうち、一つは当たり、一つは外れた。
当時、最も豊かな国だったイギリスでも、100年後には生活水準がさらに4倍ないし8倍まで上昇するだろう。21世紀、人々は信じられないほど豊かになっているに違いない―。この見通しは当たった・・・

では、外れたのは何か。
・・・100年後には、人々の暮らしは想像もつかないほど豊かになっているから、およそ「経済」の問題はすべて解消してしまうだろう。人々は週5日、1日3時間働けば十分になっている。作り出すモノはあり余っているから、人々は豊かさの中で倦怠に悩まなければならない。何かを手にしたいという欲望を基にした経済の問題は消え去っている。
二つ目の予想完全に外れた・・・
この項続く。

慶應大学、地方自治論Ⅰ第5回目

今日は、慶應大学で地方自治論Ⅰ、第5回目の授業でした。
前回までで、統治としての地方自治を説明しました。今回は、地方自治の見方にはいろんな角度があることを説明した後、現実の日本の自治の説明に入りました。自治小六法を回覧し、収録されている法令の目次を配って、地方行政に関係する法令を説明しました。
地方自治小六法を見ることは初めででしょうし、地方公務員にならない限り、見ることもないでしょう。しかし、行政を進める際にはいろんな法令が関係するんだということを、感じてもらえれば結構です。建設、運輸、医療、福祉、教育・・・さまざまな行政分野で、このような六法があります。

今日の授業開始時には、学生は100人ほどでした。「減ったなあ」と思っていましたが、順次増えて。最終的には、231人の出席カードが出ました。200枚ほどカードを持って行ったのですが、足らなくなって。もらえない学生には、各自ノートを破って書いてもらいました。
毎回、さまざまな感想や質問が、書かれています。授業を進める上で、参考になります。
連休前に、小レポートを課していました。提出があったのは、先週提出された分を含めて231人。とんでもない分量で、すごい重さになりました。これを明日から読みます。かなりの重労働です。

慶應大学、公共政策論第5回目

公共政策論も、第5回目の授業です。東日本大震災での、政府と自治体がしたこと、企業やNPOが貢献したこと。逆に、政府・自治体ではできないことを、見てもらいました。
人々の暮らし・公共空間は、何によって成り立っているか。どのような問題が、社会の課題と認識されるか。それに対して、どのような対策を打つことができるか。といった議論の具体例を見てもらったのです。
抽象論より、具体事例を写真などで見てもらう方が、関心がわきますよね。
USBメモリを持ち込み、大学が提供してくれるパソコンにつないで、投影します。便利になったものです。

こちらは、出席者は安定して50人前後です。小レポート提出は、52人。これはさっさと読めそうです。

日経新聞夕刊コラム第18回

日経新聞夕刊コラム第18回「自治体と企業」が載りました。日本の行政論の第3回目です。
県庁では、企業連携の窓口を作るところが増えてきました。「福島県庁の場合」。また企業も、社会貢献の中で、地域での貢献を広げています。「三井住友海上火災保険の資料」。もちろん、連携協定を結ぶことが目的ではなく、具体の事業を実行することが重要です。
国にあっては、古くなりましたが、「官庁での官民連携」()を調べたことがあります。

官共私の三元論は、拙著『復興が日本を変える』で述べました。慶應義塾大学での公共政策論でも論じています。公共は、行政だけがつくるものではありません。また、企業やNPOは企業の委託先や下請けだけではありません。

道路は行政が作ります。税金でです。その上を走るバスは、多くの場合、民間です。料金で運営します。しかし、バスがなければ、車を持たない人や運転しない人、高齢者や学生は意味がありません。道路建設には多額の税金を投入しながら、バスや鉄道にはわずかしか公費が出されません。
提供者側の論理、これまでの行政の仕組みでは、こうなっています。移動する生活者から考えると、違ったものが見えてきます。

供給側の論理で考えるか、利用者・生活者の立場で考えるか。モノやサービスが十分でなく、それらをそろえる際には、供給側の論理が有効でした。しかし、一通りのモノとサービスがそろった段階では、利用者・生活者の立場で考えるべきです。
その一つの例は、この連載の第16回「未来との対話」で提案しました。

弁護士、福祉と連携して出張相談へ

4月30日の日経新聞に「法テラスの出張相談 福祉と連携、利用広げる」が載っていました。

・・・お年寄りや障害者ら、生活面で支援が必要な人が直面する法的トラブルをうまく解決してもらえるよう日本司法支援センター(法テラス)が力を入れている。こうした人たちの被害は法的なサービスにつながりにくい実態があるためだ。今年1月からは、認知症などで被害の自覚がないお年寄りらの自宅での相談に応じる新たな取り組みが始まった・・・
・・・法テラスは開業後、お年寄りや障害者ら福祉支援が必要な人たちの法的課題を巡り「被害が当事者にも認識されず、情報も届いていない」といった反省点が浮かび上がった。その結果、福祉分野で広がる「アウトリーチ」を導入。「相談待ちでなく、援助者の側から積極的に問題を見つけ出す」(法テラス本部)手法で、福祉機関と連携した出張相談などに取り組んできた・・・

記事には、判断能力が低下したと思われる高齢者が金銭の被害にあっていて、それを弁護士が救った事例が紹介されています。
困っている人をどう救うか、自分では判断できない人、行政の窓口に相談できない人をどのように救うか。様々な取り組みが広がっています。