「ケインズ予測の的中と外れ」(5月12日)の続きです。詳しくは原文をお読みいただくとして。私は、ここから次のようなことを考えました。なぜ、ケインズは誤ったか。
1つは、人間の欲望には限りが無いことです。ここには、2つの無限があります。
その1つは、各人の欲望に限りが無いことです。お金はいくらあっても、まだほしい。もっとも、これには限界効用逓減の法則が働き、有り余るほどお金を持つと、うれしさもしぼんでくるでしょう。
ところが、人の欲望をさらにかき立てるものがあります。それは、新しい欲望の対象が生まれることです。科学技術の進歩によって、新しいモノやサービスが生まれます。新しい車、新しいスマホです。また、機能はさほど変わらないとしても、他人が持っているものより「よりよいもの」が生み出されます。こうして、欲望を刺激し、新しいものがほしくなります。
2つめは、人は他人との差を求めることです。
平等は社会の目標です。しかし、完全な平等はあり得ません。共産主義は失敗に終わりました。一定の制約をつけつつ、各人の自由に委ねないと、満足は得られないことが実証されました。すると、持って生まれた能力の差、努力の差、そして運によって、結果に差がつきます。
いえ、差をつけようと、各人は努力するのです。努力しても結果が同じなら、人は努力しません。学級の中、会社の中でも、差がつくのです。人には、他人より抜きんでたいという願望があるのです。
ケインズは、この2つのことを忘れていたのです。