NPO、公共を担う思想の広がり

4月5日の朝日新聞オピニオン欄、「NPO埋もれていない?」、橋本努・北海道大学教授の発言「「公共を担う」、育った20年」から。
・・・NPOの活用や「新しい公共」など、政府機能を中間集団に担ってもらう発想は、1970年代の「新保守主義」から生まれたといえます。
米国の新保守主義、つまり「ネオコン」は、自国第一主義の外交政策というイメージです。しかし国内政策では、自発的に公の役割を担う精神や道徳性を強調し、ナショナリズムと結びつけて、NPOの活動を後押ししました。
英国では、79年に誕生したサッチャー政権がNPOを推進します。新自由主義と言われますが、「ビクトリア朝の美徳の再興」を訴え、人々の道徳や公共心を動員できると考えた点では、新保守主義的でした。
NPOの活用は、政府の財政危機を救うために人々の公共心を導入するという保守派も、政府に任せず市民が自発的に公共を担うべきだという急進的な左派も、賛成できた。だから広まりました。
活用の仕方は、アウトソーシング型と社会的起業型に大きく分けられます。アウトソーシング型は、政府機能を低コストで委託します。体育館運営などが典型で、新自由主義や「小さな国家」と親和性が高いです・・・

村上信一郎著『ベルルスコーニの時代』

村上信一郎著『ベルルスコーニの時代 崩れゆくイタリア政治』(2018年、岩波新書)を読みました。政治、特に西欧民主主義の現在に関心のある方には、お勧めです。
面白いと言ってはお叱りを受けますが、イタリア政治の実態がよくわかります。そしてそれを通して、政治が制度や理論では動いていないことが、よくわかります。複雑怪奇なイタリアの戦後政治を、著者は切れ味良く整理して見せてくれます。
ベルルスコーニの時代と銘打っていますが、それとともにイタリア政治の実情と大変化が主題です。

イタリアは、キリスト教民主党が戦後長く政権にあり、しかし内閣は短命で交代を繰り返していました。また、共産党が大きな勢力を持っていました。それが、1990年代初めに両党がなくなるという、大変化が起きたのです。
私も新聞報道を読んでいましたが、この本を読んで、その背景と過程がよくわかりました。一つは、東西冷戦の終結です。
しかしもっと大きいのは、イタリアの政治と経済を仕切っていたマフィアと秘密結社への戦いが進んだことです。この二つの裏の力には、改めて驚きます。検察と裁判(イタリアでは検察は内閣の下ではなく、この二つが同じ組織に属します)が、暗殺による多数の被害者を出しつつも、切り込みに成功するのです。
戦後長く続いた第一次共和制は、制度と主たる担い手とともに終わるのですが、第二次共和制への移行は混乱を極めます。
この項続く。

学校への満足度上昇

4月5日の朝日新聞に、朝日新聞社とベネッセ教育総合研究所が共同で実施する「学校教育に対する保護者の意識調査」が載っていました。それによると、
・・・子どもが通う学校について「とても満足している」「まあ満足している」と答えた保護者は計83・8%だった。過去の調査の「満足度」をみると2004年73・1%、2008年77・9%、2013年80・7%となっており、年を追うに連れて上がっている。
内訳では「まあ満足」が70・3%で調査開始からほぼ横ばいが続く。一方、「とても満足」は13・5%で、2004年の4・9%から上昇し、「あまり満足していない」は2004年の20・6%から11・8%まで減った。また、小中学校を比べると、小学校の満足度は86・8%で、中学校の77・8%より、9・0ポイント高かった・・・

・・・お茶の水女子大の耳塚寛明教授は「満足度が上昇を続けているのは、学校の方針や指導状況を保護者に丁寧に伝える活動が定着してきたことが影響しているのではないか。かつての『上から目線』ではなく、保護者の声をきちんと聞く姿勢が浸透したことも高評価の要因だろう」と話す・・・

結構、保護者の満足度は高いのですね。教育内容とともに、保護者の声を聞く姿勢が高い評価になっている、との解説は納得します。

企業が重視するリスク

4月5日の産経新聞に「企業の重視するリスク」が載っていました。東京海上日動リスクコンサルティングの調査結果です。

それによると、特に重視しているリスク(国内)は、第 1 位「労働・雇用問題」( 61.5%)、第 2 位「コンプライアンス違反・ガバナンス問題」(60.7%)。続いて、「情報・システムリスク」(58.0%)、「地震・噴火・津波」(44.0%)、「製品・サービスの欠陥」(40.9%)です。労働・雇用問題は、前回2年前の調査では、第4位だったのが、1位になりました(記事に、変化が表になっています)。

・・・中でも人手不足が深刻とされる建設業や運輸・物流業は8割以上がリスクとして重視しており、人手不足により業務が滞ることへの心配や、長時間労働につながる懸念が広がっていることがうかがえる結果となった。また、大手広告会社、電通の違法残業事件をきっかけに労務管理の重要性が再認識されたことも影響しているとみられる・・・
・・・労務リスクが意識される背景には労働者の権利意識の高まりもある。18年に労働審判制度が導入されて以降、企業が従業員などから訴えられるリスクが高まっている。27年3月には、長時間労働による鬱病から自殺したJR西日本の男性社員の遺族に、約1億円の賠償を命じる判決が出るなど高額な損害賠償が認められる事例も発生している。
また、労務問題が発生すれば“ブラック企業”とのレッテルが貼られ、企業イメージが大幅に悪化する恐れがあるほか、訴訟で多額の賠償金が発生するケースもある。
こうした意識の変化は保険の加入にも表れており、三井住友海上火災保険と、同じグループのあいおいニッセイ同和損害保険では、企業が加入する保険に「使用者賠償特約」を付帯する割合が2年前の約2倍に急増。セクハラやパワハラ、不当解雇などで訴えられた場合に備える特約の付帯率も約2・5倍に増えているという・・・

災害やサイバー攻撃など、リスクは組織の外から来ると思いがちですが、労働問題、コンプライアンス問題、製品やサービスの欠陥など、組織の中から発生するリスクも大きいのですね。