2月17日の朝日新聞オピニオン欄「最低限の住まいとは」、奥田知志さん(NPO法人「抱樸」理事長)の発言から。
・・・1月に火災が起きた札幌市のそしあるハイムは、「無届け施設だ」という指摘があります。「届けを出さねばならなかったのに、出していない」という批判がこめられていますが、的外れです。「届け出なかった」のではなく、「届け出ることができなかった」あるいは「あえて届け出なかった」のだと思います。
法律に基づき届け出が必要な施設は利用者資格が明確に決まっていて、障がい認定や介護認定がなければ利用できません。つまり、制度ごとの縦割りになっています。そしあるハイムのような、40代から高齢者までいて、住まいの確保から就労支援、食事の世話、介護まで担う施設の枠組みはいまの日本になく、届け出のしようがないのです。
制度の狭間に置かれた、行き場のない人々が増えています。貧困だけでなく、社会参加できない、認知機能に問題がありそうだが介護保険の対象になっていない、家族と縁が切れているなどの複合的な要因を抱え困窮する人たちです。私も北九州市で無料低額宿泊所を運営していますが、公的支援はありません。縦割りで「入居者を限定する施設」ではなく「だれでも入れる施設」が必要だからです・・・
・・・もう一つ、民間施設には残念ながら「貧困ビジネス」もあり、玉石混交です。
そしあるハイムは生活保護受給者でも月に3万円程度手元に残る良心的な価格の施設でした。一方で、食事付きと称してカップめんだけとか、生活保護費を全額徴収し、入居者が自由になるお金がない施設が問題になっています。貧困ビジネスは規制し、必要な施設を応援するルールづくりが求められています・・・