年別アーカイブ:2017年

原発事故避難指示解除

2017年4月1日   岡本全勝

ニュースで報道されているように、原発事故避難指示区域のうち、飯舘村(の大部分)、川俣町山木屋地区、浪江町(の一部)、富岡町(のかなりの部分)が、3月31日と4月1日に、避難指示が解除されました。避難指示の区域は、1,150平方キロから370平方キロに、対象区避難者数は8.1万人から2.4万人に、それぞれ約3割になりました。「原子力災害対策本部資料p2
これで、帰還準備区域(緑)と居住制限区域(黄色)は、ほぼ解除されました。富岡町と浪江町は、解除されていない地区もあるのですが、町の中心部が解除されたので、街の機能を復興することができます。
残るのは帰還困難区域(赤)です。この区域は、線量が高く帰還の見通しは立ちません。双葉町と大熊町は、ほとんどがこの赤になっています。そこで、線量の低い町の中心部を復興拠点として、限られた区域ですが、そこから復興を進めることとしています。避難指示の解除は、ひとまずこれで一段落です。

帰還できるようになったとはいえ、一気に元のにぎわいが戻ることはありません。住民意向調査では、多くの人が戻らないと決めています。帰還する住民が少ないと、商店も成り立ちません。働き手の何割かは、避難先で新しい仕事についておられます。子供は、避難先の学校に通っています。
住む場所を決める要因は、「働く場所」「学校」などでしょう。年金生活者などは、自由に住所を選ぶことができますが、多くの生活者はそうはいきません。住みやすい環境を整えて、徐々に人が戻ることを待つことになります。

個人的な感想を述べるなら、6年前には、このように早く住民が帰還できるとは想像していませんでした。原発事故対処は私の所管でなく、原発事故の状況や避難指示などは、離れてみていました。目に見えない放射能、いつになったら住むことができるまで線量が下がるのか不明だったことなどの理由から、見通しが立たなかったのです。また、「帰還困難区域」(赤の区域)は、戻れないことを前提に、東京電力が土地建物などについては全額の賠償をして、故郷を失うことについての精神賠償をしました。この区域は、住民は戻れないとしたのです。
予想以上に放射線量が下がり、また放射性物質が風で飛んだり水に含まれることもありませんでした(土にくっつくのです。だから、真水は問題ありません。泥水は放射線物質が含まれることがあります)。土を剥がしたり草木を刈る除染作業も、試行錯誤の上で、効果を発揮しました。なにより、町長をはじめとする関係者たちの、「帰るのだ」という強い意思がありました。

避難指示解除は、帰ることができるという、出発点です。津波被災地で言えば、水が引いたと同じ状態です。これから、街のにぎわいを取り戻すために、息の長い取り組みが必要です。
また、避難先で定住された人のほかに、戻るために待っている人、迷っている人がおられます。その人たちの相談に乗ることが必要です。
4月1日の朝日新聞に長谷文記者が、福島県庁職員の家庭訪問の実態を書いています「復興へ、はじめの一歩」。一般の方には知られていない仕事です。報道してくださり、ありがとうございます。

「東大教師が新入生にすすめる本」

2017年4月1日   岡本全勝

東大出版会のPR誌「UP」4月号は、恒例の「東大教師が新入生にすすめる本」です。毎年楽しみにしています。
それぞれの学問では、どのような本が教えられているのかが、わかるのです。もちろん研究の最先端は、もっと専門的な研究書が出ているのでしょうが、それは私には歯が立たないでしょう。大学生が読める本程度が、私にはちょうどです。政治と行政分野は常に関心を持ちつつ、本屋を覗いていますが、それ以外の分野でどのような本が取り上げられているかが、勉強になります。
「こんな本があるのだ」「これって、買ったけど読んでいないよなあ」と思いつつ読んでいます。先生方の紹介文が、勉強になります。「この本は、このように読むんだ」とです。また、先生方の若き日の学問との苦闘が書かれていたりして、これもまた勉強になります。

新聞の書評欄もそうですが、本屋で見ても買わなかった本を、識者の解説や書評を見て「それなら読もう」という気になります。問題は、買うけど読まない本がたまることです。
過去の分は、『東大教師が新入生にすすめる本 2009‐2015』(2016年、東大出版会)にまとめられています。「UP」は、大きな本屋では、無料で配っていることがあります。

経済同友会、人を育てる支援

2017年3月31日   岡本全勝

経済同友会の会報「経済同友」3月号が、「東北未来創造イニシアティブの5年間」を特集しています。詳しくは、原文をご覧いただくとして。この企画は、被災地での人材育成を、経済界が応援してくださるものです。企業から派遣されて活躍された方々、受け入れた自治体、塾で養成された人たちの話が、詳しく紹介されています。
お金や物資以外の支援、これが今回の東日本大震災で目立った、企業の支援です。人材派遣、ノウハウの提供など、各企業の特性を生かした支援です。私は、企業の社会責任・社会貢献に、新しい地平を開いたと考えています。
今回の取り組みを良い事例として、今後、様々な分野でこのような企業と地域との連携ができると良いですね。しかし、お金やモノの支援と違い、いろいろと難しい課題があります。また、受け入れる自治体側の意欲、両者をつなぐ役割が必要です。
このような支援をしてくださった同友会と企業の皆さんに、お礼を申し上げます。ありがとうございました。

危機対応、マニュアルを作っても。

2017年3月31日   岡本全勝

3月27日の日経新聞の法務欄は、「DeNA問題、法令順守迫る」でした。いわゆる「まとめサイト」が、出典不明や根拠のない記事、著作権侵害の記事のコピーを載せていた問題です。詳しくは本文を読んでいただくとして。ここでは、問題が起きた際の対処について、上沼紫野弁護士の発言から。
・・・DeNAがトラブルを広げてしまったのは、問題を初期段階で見つけ、対処する体制が整っていなかったためだ。第三者委員会の報告書を読むと、部門間、現場と管理者などの間で意思疎通ができていなかったことが分かる。マニュアルを作っても、内容が適切か、正しく運用されているかをチェックする体制ができていなかった。
法的責任を避けることだけを重視してモラルが低下したことが、確認の甘さにつながり、著作権法や医療関係の法律に触れる事態を招いた。企業が挑戦することは悪いとはいえないが、行為の結果を背負うのは企業自身だ。挑戦はリスク管理と両輪で行わなければならない・・・

憲法改正論議

2017年3月31日   岡本全勝

3月23日の朝日新聞オピニオン欄「改憲議論とアメリカ」、阿川尚之さんの発言(3月28日の記事)の続きです。
・・・私も改憲論者ですが、大幅な改正、新憲法の制定は、約70年間、最高法規として機能してきた憲法の正統性を傷つける可能性があります。米国の憲法史から学べることの一つは、条文ごとに修正の是非を議論し、実質的改憲についても議論を重ね、大方の国民が納得する憲法の改変を一つ一つ慎重に実現しながら、憲法全体の正統性を保ってきたことでしょう。
保守派が憲法の根本的見直しを主張する一方で、リベラルの側が一切改正すべきでないと主張しているのは皮肉です。9条をめぐる議論をはじめ、私にはいずれも「鎖国状態」、国内だけで通じる「一国立憲主義」に思えます。
米国憲法制定の際には、独立した13の旧植民地の安全保障が強く意識されていました。日本でも、現行憲法はもちろん明治憲法、さらに古くは律令制度を採用したのも、当時の国際環境に対応し国家の安全を保障する必要があったからだと思います。憲法を考えるには、安全保障や国際関係からの視点が欠かせません・・・