1月9日の日経新聞オピニオン欄、ニック・クレッグ、前イギリス副首相の「英、単一市場残留へ譲歩を」から。
・・・大衆迎合主義(ポピュリズム)に対抗するには3つのことが必要だ。第1に、ポピュリストに失敗させることだ。大衆迎合の政治家にとって最悪なのは、実際に責任を引き受け、様々な代替案から物事を決めねばならないことだ。
第2に、主流派の政治家は自由民主主義の価値をあきらめてはいけない。第3に、最近の経済環境になぜ市民が怒り、幻滅を抱いているかを真剣に考える必要がある。賃金はおそらく前世紀のいつの時代よりも長く停滞している。賃金制度や労働法、税制を通じて解決策を見つけないと、ポピュリストが得をする・・・
年別アーカイブ:2017年
砂原庸介・准教授。個別政策、パッケージで議論
1月9日の日経新聞経済教室「大転換に備えよ」は、砂原庸介・神戸大学准教授の「非主流派政治に取り込め。政策提示、個別より一括で」でした。配偶者控除の改正が、2017年度の税制改正で議論になりつつ、選挙を前にして進まなかったことについて紹介した後。
・・・配偶者控除のように個別のテーマごとに議論すると政治的にリスクが大きい中で、働き方改革のようにパッケージで議論することには意味がある。なぜなら一つのテーマでは負担が増える敗者となったとしても、別のテーマと組み合わせることで、その負担を軽減できるからだ。
例えば配偶者控除を廃止するのならば、他方で育児に対する給付を増やすことで専業主婦世帯に報いられるかもしれない。また、単に共働き世帯を優遇するだけではなく、子どもへの一定の給付を前提として、保育所の利用料引き上げにより収支のバランスを考える方法もありうる・・・
・・・そこで政党は世論の反応をみながら支持拡大につながるパッケージを提示し、既存の政策的対立軸とは異なる形で新たに包括的な改革連合を形成していく必要がある。そのとき、従来は政治的に代表されてこなかった女性を中心とした非正規労働者などの「アウトサイダー(非主流派)」を政治過程に包摂することは政党の支持基盤を広げるという点でも重要な意味を持つ。
近年の日本政治でこうした取り組みがなかったわけではない。具体的には、各省庁にまたがる論点を包摂する形で、内閣府に首相直属の会議体を設け、調整がなされてきた。しかし党内に「抵抗勢力」を定めて、それとの積極的な対立を辞さない姿勢をとった小泉政権を除けば、基本的に関係者のコンセンサス(合意)を重視するコーポラティズム(協調主義)的な手法がとられてきたといえる。
そうした手法ならば、関係者にとって受け入れやすい漸進的な改革が中心となる。しかし、それでは従来の政治過程から排除されてきたアウトサイダーの利害が反映されるのは難しいところがある・・・
続いて、次のような指摘もあります。
・・・しかも会議の乱立は重要な首相の時間資源を奪うことになった。外交における首相個人の役割が大きくなる中で、すべての重要案件を首相の責任の下で処理するのは不可能に近く、積極的なリーダーシップを発揮するのは困難だ・・・
原文をお読みください。
高齢化社会、社会の変化と意識の変化
先日(1月6日)、「高齢者は75歳以上」で、「課題は、75歳までの人たちに、活躍の場を提供することです」と書きました。私たちの寿命が延びることは望ましいのですが、二つ条件があります。一つは健康でいることと、もう一つは生きがいを持って生きることです。そして、後者は個人で趣味に生きることだけでなく、社会での「位置」も必要でしょう。元気な高齢者が、毎日趣味だけで時間をつぶすのは、難しいでしょう。皆が皆、それをできるとは思えません。
すると、個人に任せるだけでなく、高齢者の「活躍場所」を社会で用意する必要があります。活躍できる場を与えるということです。少しずつ定年を引き上げてきたのですが、それですべての高齢化を引き受けることは難しいようです。
今回の老年学会の提言での「65歳から74歳までの人たちを准高齢者と位置づける」ことは、一つの良い方法だと思います。全員が、現役を続けると若者の出番を取ってしまいます。他方で現役並みに仕事を続けるのは、すべての人にとってはしんどいでしょう。「准」という移行段階を設営するのです。それは、個人にとっても、社会にとってもです。その受け皿を、個人に任せるのではなく、意図的に設計するべきでしょう。
個人の寿命が延びるという事実の変化に対して、社会や意識を変える、制度を変更する必要があります。その際に、意図的に制度を変えるか、少しずつ微修正を加えていくか。高齢化が進み、元気な高齢者が増えている事実に対し、社会の制度と意識は追いついていないようです。
また、「時間」という要素が重要です。短期間に劇的に変化するか、緩慢に時間をかけて変わるかです。劇的な変化は認識されやすいのですが、緩慢な変化は意識しないと分かりません。「いつの間にか変わったなあ・・」とです。そして緩慢な変化に際して、社会の制度や意識が追いつくか、先取りするかです。
緩慢に高齢化が進んだ国・社会と、急速に進んだ国・社会とがあるのです。例えば、高齢化率が7%から14%になった「倍加年数」を比べると、フランス115年、アメリカ72年、イギリス46年に対し、日本は24年です(国立社会保障・人口問題研究所の人口統計資料集)。なお、韓国は18年、中国は24年です。緩慢に進むと、徐々にそれに会わせて社会も変わるのでしょう。しかし、急速に進むと、制度や意識をそれにあわせて変えることは、重要になります。
年金制度や年金財政については、高齢化を意識して整備、改正を加えてきました。介護保険と老人ホームなども、整備しました。問題はあるのですが、ひとまず用意されています。課題は、このようなお金と設備とサービス以外の、生きがいの場を社会としてどのように用意するかです。そして、高齢化では年齢や比率で、日本が世界の最先端を走っています。単に老人が多いだけでなく、その高齢者が生き生きとしている社会をどのように作っていくかです。
雇用者数は増えている
1月8日の日経新聞「雇用 4年で250万人増」が、興味深い分析を載せています。詳しくは記事を読んでいただくとして。
1 日本の雇用者数は、2012年12月からこの4年間で、250万人増えています。人口が減少しているのですが、働く人が増えているのです。それは、女性と60歳台です。
2 増加したうち170万人が女性で、40~59歳の女性が130万人増えています。25~39歳の女性も増えていて、M字カーブは解消しつつあります。記事のグラフをご覧ください。
3 65歳以上の雇用者は男性で100万人近く、女性も60万人増えています。60~64歳男性の労働力率は8割近くで、65~69歳も5割を超えています。60歳台の人も多くは働いているということです。
働きやすくなったという面と、働かざるを得ないという両面があると思います。また、この数字だけでは、正規非正規の問題は見えません。
田村太郎さん、移民の受け入れ方
1月8日の朝日新聞オピニオン欄「移民の受け入れ方」に、田村太郎・ダイバーシティ研究所代表理事が出ておられます。
・・・日本はもはやアジアで唯一の経済大国ではなく、外国人からみれば自国の何倍もの賃金をもらえる国でもない。門戸を開けば、人がわっと押し寄せると心配されたのは、もう20年以上前の話です。生活支援政策を充実させなければ、だれも日本には来なくなります。
少子高齢化は中国や韓国でも進んでいます。日本人の介護福祉士が国外へ働きに行くかもしれません。すでにフィリピンにはカナダなどの国々が、専門学校を作ってケア人材の確保に動いています。国際的に人材の奪い合いが起きているなか、アジア全体の少子高齢化を見据えた議論を、日本が呼びかけるべきです・・・
・・・異なる人たちと接することに不安を抱くのは当然です。不安を減らすには、出会っていくしかありません。外国人に偏見があった人でも、○○さんと固有名詞でつながると意識が変わる例を、私は数多く見てきました。治安の悪化を懸念する声もありますが、外国人の犯罪検挙者数は減っています。
愛知県の県民意識調査では、はじめ外国人の存在を否定的に見る人が半数以上いたのが、生活支援や住民との交流を進めたところ、肯定的にとらえる人の方が多くなったという結果があります。
これまで外国人住民が増えても大きな問題が起きなかったのは、地域の人たちやNPO、自治体が熱心に共生に取り組んできたからです。こうした素地も生かしながら、「うちの街でチャンスをつかみたい人は、だれでも来てください」と自治体が競い合えば、地方創生にもつながります・・・