砂原庸介教授、大佛次郎賞受賞

砂原庸介・神戸大学教授が、第17回大佛(おさらぎ)次郎論壇賞、を受賞されました。『分裂と統合の日本政治――統治機構改革と政党システムの変容』(千倉書房)です。
・・・二大政党制を目指した政治改革が行われたはずなのに、なぜ実現しないのか。本書はその原因を「地方」の政治ログイン前の続きや選挙のありようの中に探り、今の制度の中には有力な野党が育ちにくい構造があることを示した。与野党が公平に競争できる政治を目指し、改善の提言も行っている・・・
続きは、12月18日の朝日新聞をお読みください。

関西大学経済学部で講演

今日12月18日は、関西大学経済学部で、講演をしてきました。テーマは、「大震災から7年-街をつくるということ」にしました。3年生が主なので、大震災は彼らが中学生の時です。
スライドを使って、被害の大きさと政府の対応、現地の復旧の様子を見てもらいました。そして、町のにぎわいを取り戻すには、インフラ復旧だけでは駄目で、産業の再開、コミュニティ再建が必要なことを、事例交えて説明しました。
皆さん、熱心に聞いてくれました。
大学から、「客員教授」の称号をいただきました。

「失われた20年」という命名

12月12日の朝日新聞経済面コラム「波聞風問」、原真人・編集委員の「「失われた20年」だったのか」から。

・・・同じように、「失われた20年」という言葉の罪も小さくない。白状するが、これを初めて世に問うたのは私たち朝日新聞取材班だ。8年前、日本経済の四半世紀の変化を描いた連載をもとに「失われた〈20年〉」(岩波書店)という本にした。その後、この言葉を表題に盛り込んだ経済書の出版が相次いだ。
当時、表題をめぐって取材班と編集者でかなり議論になった。バブル崩壊後の経済低迷の長期化は「失われた10年」と呼ばれていたが、さすがに「20年」という認定はなかった。でも、私は推した。かつての日本経済の栄光、日本企業の強さを懐かしみ、それに比べ今は・・・という意識がどこかにあったのだろう。
二つのキーワードは「失われた」成長を取り戻すためならギャンブル的な政策もやむなしという空気を生んだ。そして低成長や低インフレのもとでも持続可能な財政や社会保障にしていくのだという、本来めざすべき道を見失わせてしまったのだと思う。いまは名付けを悔やんでいる・・・

全文をお読みください。

視野の時間的広さ・ゾウの時間 ネズミの時間2

昨日の続きです。視野の時間的広さ(長さ)を表す表現として、「ゾウの時間 ネズミの時間」が一つの案です。

本川達雄著『ゾウの時間 ネズミの時間』やその他の先生の発言も利用すると、時間は体重の4分の1乗に比例します。体重の4分の1乗に比例するということは、体が16倍大きくなると、時間は2倍ゆっくりと経過することになります。
心臓が1回ドキンと打つ時間は、ヒトはおよそ1秒。ハツカネズミは1分間に600回から700回で、1回のドキンに0.1秒。普通のネズミは0.2秒、ネコで0.3秒、ウマで2秒、ゾウだと3秒かかります。
30gのハツカネズミと3tのゾウでは体重が10万倍違うので、時間は18倍違います。ゾウはネズミに比べ、時間が18倍ゆっくりだということになります。

ネズミが短命でゾウが長生きするだけでなく、「生活の時間単位」が寿命に比例しているのです。心臓のドキンを「1生活秒」とすると、ハツカネズミの「1生活秒」は時計では0.1秒です。人間は「1生活秒」は1秒、ゾウの「1生活秒」は3秒です。
ネズミは細かいことはよく見えるのでしょうが、長期的視点では考えることができないのでしょう。ゾウはその逆になります。セカセカして生きるか、鷹揚に生きるか。

興味深いのは、哺乳類の場合、いろんな動物の寿命を心周期で割ると15億になります。つまり、哺乳類の心臓は一生の間に15億回打つという計算になるのです。
ハツカネズミの寿命は2~3年で、インドゾウは70年近くは生きますが、心拍数を時間の単位として考えるなら、ゾウもネズミもまったく同じ長さだけ生きて死ぬことになるのです。すなわち、ネズミもゾウも、同じだけの生物時間を生きていて(と言っても、本人は比較のしようがありませんが)、早く駆け抜けるか、ゆっくりと生きるかの違いなのですね。

北村亘先生の新著『地方自治論』

北村亘・大阪大学教授が、『地方自治論 2つの自律性の狭間で』(2017年、有斐閣)を出版されました。お三方の共著です。
大学での地方自治論の入門的教科書です。「これまでに出版されてきた研究書や論文の成果をできるだけ取り入れて、わかりやすく書いたつもりです」と書かれています。
また、「地方自治の研究者の関心を意識すると、学生の視点から乖離する。そのバランスをどう取るかについて苦労した」との趣旨のことが書かれています。

そこなのですよね、大学の授業や教科書を書く際の苦労は。相手が地方自治を専門に学ぶ人や自治体職員なら難しくてもよい、いえどんどん詳しくしてもかまいません。
しかし、学部生は、彼らの関心の一つとして地方自治論の授業を取っています。また、地方公務員になる人も多くはありません。
すると、話を何に絞るか、最低限何を理解してもらうかを考えなければなりません。そして、興味を持ってもらうことも、必要です。
本書では、制度論だけでなく、地方政治や地方行政の運用や実態について、多くの記述がされています。学生には、取っつきやすいでしょう。

本書では、2つの自律性に着目しています。一つは、地域社会に対する地方政府の自律性です。住民自治の世界です。もう一つは、中央政府に対する地方政府の自律性です。団体自治の世界です。
また具体政策分野として、教育、子育て、高齢者福祉を取り上げています。わかりやすい、読みやすい教科書です。