昨日、砂原庸介教授の大佛次郎賞受賞を紹介しましたが、今朝(12月19日)の日経新聞経済教室「二大政党制を考える」で、「首長党の出現で競争激化」を論じておられました。
・・・民主党が衰退する一方で、10年代に存在感を増したのは地方自治体の首長が結成に深く関わる「首長党」ともいうべき地方政党だ。特に注目されたのが、橋下徹氏が率いて大阪府議会で過半数の議席を獲得した大阪維新の会、河村たかし氏が名古屋市議会のリコール(解散請求)の過程でつくりだし市議選で躍進した減税日本、そして小池百合子氏の下で東京都議選で大勝した都民ファーストの会だ。
これらの地方政党は日本維新の会、日本未来の党、希望の党という国政政党に関与する形で衆院選に候補者を立てた。だが野党第1党だった民主党・民進党に代わり、自民党に対抗する二大政党の一つになったわけではない。むしろ野党勢力を分裂させて、衆院選での自民党・公明党の大勝を助けたとの批判もある・・・
・・・現状を考えると、以前の民主党のように都市部で野党が育つのは難しい。乱立する地方政党は都市一般というよりも特定の自治体の利益を重視する傾向があるし、自民党が以前と異なり都市を重視する政策を打ち出していることもある。他方で、実績のない野党が安定して自民党を支持してきた農村部から支持を広げるのは困難が大きいだろう。
野党が分裂の困難を抱え自民党が大勝しやすい理由は、小選挙区比例代表並立制という選挙制度の効果だけではない。地方の政治制度が、都市部でのみ政党間競争を激化させ、農村部で自民党の優位を維持するように作用していることが大きい。自民党に対抗する野党が政党名で選挙を戦えず、それが可能な地域では首長党の参入が脅威になる。
現在の地方議員は当選に必要な得票数が少なく、それゆえに地域の個別的利益を志向しがちだ。個人ではなく、政党を単位として当選のためにより多くの有権者の支持を必要とする制度が求められる。政党が首長とは異なる地方の集合的利益を掲げ、それを軸に政党の名前で選挙を戦えれば、政党の支持基盤の安定に資するだけでなく、地方政治の活性化をもたらすだろう・・・