10月17日の日経新聞オピニオン欄、ジェレミー・リフキン氏の「迫り来る第3次産業革命 」から。
・・・19世紀以降、世界は2回の産業革命を経験してきた。1回目は19世紀で、中心的な存在は英国だった。2回目は米国を舞台に20世紀前半に起きた。今はそれに続く3度目の産業革命が生起しつつある。今回の産業革命は、私たち人類が地球温暖化や富の格差といった難問を克服していくうえで、大きな威力を発揮するだろう。
過去の2回を振り返ると、単なる個別の技術革新にとどまらない、イノベーションの連鎖反応が起きていたことが分かる。その結果、3つの非常に重要な分野、すなわちエネルギーとモビリティー(移動手段)、そして情報伝達の領域で同時並行的に飛躍的な変化が起き、社会の姿や生産様式を一変してしまった。
第1次革命では蒸気機関の発明によって、人手や家畜とは比べものにならない、桁違いの動力を人類が使えるようになった。その結果、大量生産に適した近代的な機械化工場が登場し、大量のヒトや物資を遠くまで運べる鉄道や蒸気船も普及した。電信サービスが商用化されたのも19世紀半ばのことだ。
第2次革命のエネルギーは電力が、最初は工場に、続いて家庭に普及した。モビリティーでは自動車が誕生し、コミュニケーション手段としては電話が注目を浴びた。この時現れた新技術は今の私たちにとってもなお身近なものだ・・・
第3次革命がどのようなものか。それは原文をお読みください。私は、情報の革命は同意しますが、エネルギーと移動手段は、「そうかな」とやや疑問です。
「第3次革命の結果、バラ色の社会が到来するのでしょうか」という問に。
・・・私はユートピア主義者ではないので、そうは言わない。逆に人類が明るい未来を手にするには、とにかく第3次革命を成功させなければいけない、と訴えたい。このまま人類が化石燃料への依存を続け、温暖化が進めば、大惨事が起きる。気温がセ氏1度上がれば大気に含まれる水蒸気は7%増え、それだけ大型のハリケーンや豪雨、洪水が増えるだろう。私の住んでいる米東海岸のボストンでも昨年は2.5メートルの積雪があり、異常気象を実感した。「環境の激変で今世紀末までに今地球にいる生物種の半分は死滅する」と予言する生物学者もいる。
もう一つの問題は富の格差だ。14年には世界で最も豊かな上位80人が保有する資産は、世界の全人口の貧しいほうの半分が持つ資産の総和に等しかった。第3次革命により貧しい人にも教育の機会が与えられ、資本力の乏しい小さな企業でも事業のチャンスが広がれば、富の格差が縮小の方向に向かうかもしれない・・・
そうですね。産業革命は技術の革命であるとともに、いえそれ以上に、社会がどのように変わったかで判断されるものです。すると、新しい技術を人類がどのように使うかによって、社会は変わってきます。
第一次革命で、農業社会から産業化社会になりました。農民から工場労働者になったのです。第二次革命では、豊かで便利になりました。勤め人がさらに増え、ホワイトカラーが増えました。大衆社会と民主主義が定着しました。では、第三次革命では、私たちの暮らしはどうなるか。それがまだ見えないのです。