イタリアでも引きこもり

8月31日読売新聞国際面に、「引きこもり増、悩むイタリア」が載っていました。
・・・陽気で楽天的な国民性で知られるイタリアで、「引きこもり」問題への関心が高まりを見せている。自宅から出ず、他人と関わらない若者は「HIKIKOMORI」として認識され始め、対策に日本の知見を期待する声も上がっている・・・
イタリアでは引きこもりの若者が10万人ほどいるとみられています。しかし、認知度が低く、支援団体もなく人知れず悩んでいるとのことです。

イタリアは日本と同様、家族のつながりが強く、その象徴がマンマ(お母さん)だと聞いたことがあります。引きこもりができるのは、家族の支援があるからという面があります。家族の絆の強さ、それへの依存が背景にあるのかもしれません。他の国では、どうなっているのでしょうか。

以下、脱線です。
対になるお父さんは、イタリア語で何というか、知っていますか。私を含め、多くの人が知らないでしょう。家庭は、母で持っているのでしょうね。

明るい公務員講座・中級編35

『地方行政』連載「明るい公務員講座・中級編」の第35回「職場の無駄(3)資料作りその1」が発行されました。会議の無駄に続き、資料作りの無駄について解説しました。

資料作りに、必要以上の時間と手間をかけているというのが、今回の話です。ただし、よく見ると、資料の中身を考えるのに時間をかけているのではなく、パソコンで文書にすることに時間をかけ過ぎているのです。活字の字体は何にするか、大きさはどうするか、一行に何文字入れるか・・・。
もっといけないのは、パワーポイントです。色を変えたり、矢印を多用したり。本人は分かるのでしょうが、読む方はその矢印が何の意味か分かりません。時系列か、因果関係か、単なる関係があるのか。
本来何を伝えたいかを忘れて、技巧に走ります。それも、何枚も作って。「1枚で報告せよ。簡潔な文章で」という私の主張に反します。パワーポイントは、紙芝居の道具です。社内資料にパワーポイントを使うことを禁止している会社もあります。

パソコンで資料作りに時間をかけることが、残業につながっています。パソコンがない時代は、こんなことに時間をかけませんでした。パソコンは、業務の効率化のために導入したのに、資料づくりに関しては、逆に労働強化になってしまいました。職員が抵抗してもよかったのに、喜んでパソコンに取り組んだのです。
そしてこの無駄に、多くの職員が気がついていません。本人は、一生懸命仕事に打ち込んでいると満足しているのです。
今回の内容は次の通り。
パソコンで便利になった、機械化が招く労働強化、書式を決めておく、パワーポイントを使うな、庁内説明資料と住民広報資料は別。

アメリカ旅行6

いくつか、今回の旅行での困った点を書きました。それでも、海外旅行は面白いですよね。知らないところを見ることは、楽しいです。
そして、比較することで、日本を知ることができます。かつ、私を含めて多くの日本人が、海外旅行をすると、日本が良いと再認識して帰ってきます。
安全で清潔で豊か。これは、日本が世界最高水準でしょう。食べ物もおいしいし。

ところで、ティップの慣習はなくならないのでしょうか。この制度は厄介ですよね。お店で、サービス料込みなのか、ティップを払うものなのかを迷います。また、レストランでの支払いも、まず請求書を見て納得し、クレジットカードを渡します。そして、もう一度来た請求書に、ティップを上乗せした金額を記入します。2度手間なのです。そしてご丁寧に、ティップの推薦額が(15%ならこれだけ、18%なら、20%ならと)書かれているのです。それなら最初から15%を加算しておけば良いものを。何かと合理的なアメリカで、続いていることが不思議です。

司馬遼太郎さんに『アメリカ素描』(文庫版、1989年、新潮文庫)、『ニューヨーク散歩(街道をゆく39)』(文庫版、1997年、朝日文庫)があることを思いだし、読み返しました。
彼の地の社会の分析もありますが、多くは日系人や日本研究者との交遊録でした。司馬さんが自らおっしゃっているように、「日本と中国の専門家」である氏が、短期間の旅行でアメリカをとらえることは難しく、避けておられるように思えました。

トランプ大統領の効果、欧州共同防衛構想

8月28日の読売新聞コラム「地球を読む」は、ジョセフ・ナイ氏の「欧州のトランプ観 不人気だがよい大統領」でした。詳しくは原文を読んでいただくとして。
トランプ大統領の言動によって、欧州ではとても不人気です。信頼すると答えた人は、イギリスでは22%、フランスで14%、ドイツで11%です。しかし、この不人気こそが、ヨーロッパの価値観を強化するのに役立っているという見方です。

欧州でも盛り上がったナショナリズムとポピュリズムは、トランプ大統領当選以降、低下しつつあります。

ヨーロッパ統合は、関税同盟、共通通貨、国境検査廃止と来て、次は共同防衛が議論にのっています。これまでは、アメリカの傘の下(任せておけばよい)で、足並みが揃いませんでした。それぞれの国の事情もあります。
ところが、トランプ大統領が頼りない(頼りにならないかもしれない)という危機感から、ヨーロッパ各国が共同防衛構想を進めざるを得なくなったのです。
皮肉といえば皮肉ですね。時代というのは、敵があることや、危機が進めるのでしょう。

幕末の天皇

藤田覚著『幕末の天皇』(2013年、講談社学術文庫)が勉強になりました。近代の天皇制を理解するには必須の本だと、書評で書かれていたので、手に取りました。
江戸時代、それ以前から、天皇・朝廷は権威は持ちつつ、権力は持ちませんでした。そもそも「天皇」という呼び名も、長く途絶えていたのです。権威も、徳川幕府に押さえ込まれた形での権威です。これは、多くの人が知っていることです。
では、どうして突然、幕末に天皇の権威がさらに上昇し、権力を持つにいたったか。そこに、光格天皇と孝明天皇の存在が大きいのです。著者は、冒頭に次のように書いています。
・・・なかでも孝明天皇は、欧米諸国の外圧に直面し国家の岐路に立ったとき、頑固なまでに通商条約に反対し、鎖国攘夷を主張しつづけた。それにより、尊皇攘夷、民族意識の膨大なエネルギーを吸収し、政治的カリスマとなった。もし、江戸幕府が求めたとおりに通商条約の締結を勅許していたならば、その後の日本はかなり異なった道を歩んだのではなかろうか。
たとえば、反幕運動、攘夷運動の高揚による幕府の崩壊とともに、幕府と一体化した天皇・朝廷もともに倒れ、その千数百年の歴史にピリオドを打つという事態も想定される。また、外圧に屈服した幕府・朝廷に対する反幕府反朝廷運動と、攘夷運動の膨大なエネルギーの結集核が不在のため、長期に内戦状態が続き、植民地化の可能性はより高かったのではないか・・・

知らないことが多く、何か所も「そうだったんだ」と驚かされます。また、「歴史のイフ」という視点から、事実を追いかけるだけの歴史学ではない、興味深い分析が書かれています。これだけの内容が、文庫本で読むことができるのです。お勧めです。