政官関係、代理人としての官僚

日経新聞7月24日の経済教室「政官関係の課題」は、曽我謙悟・京都大学教授の「官僚、専門性・透明性高めよ」でした。
・・・代理人としての官僚制の実態は4つに大別できる。第1は政策執行者としての官僚制だ。官僚制が政治家のコントロールの下で政策の実現に専念する。第2は逆に超然的な国士型官僚制だ。代理人が自律的な政策決定をしており、エージェンシー・スラックが発生しうる。第3は委任により本人が時間や労力を節約する場合だ。第4は委任により本人が知識や情報を補う場合だ。第3と第4は、第1と第2の両極の中間に位置する。
日本の官僚制は明治国家の成立以来、第2次大戦後もしばらく第2の類型に位置してきた。だが自民党長期政権の下で第3の類型に移行した。社会や野党との調整を含む多くの政策形成時の作業が官僚制に委ねられてきた。2000年代以降の政治主導の流れは第1の類型への転換を迫る面もあったが、実態は第3の類型から変わっていない。

学部認可問題を巡り、文部科学省の前事務次官は「公平、公正であるべき行政のあり方がゆがめられた」と記者会見で述べた。根底にあるのは第2類型の国士型という理想像だろう。しかしその時代は遠く過ぎ去り、政治家の労力と時間を節約するための第3類型の代理人が現実なのだ。
第3類型の本人・代理人関係で軽視されるのは、国民に対してアカウンタビリティー(説明責任)を果たすことだ。学部認可問題では文書の存否やその位置づけを巡る水掛け論が続いた。それは政府としての決定プロセスを記録・保存し開示することが制度化されていないからだ。政治家と官僚制の双方とも、いかなる政策決定をいかなる理由で行ったのかを、正確に国民に伝えることができていない。
また第4類型の本人・代理人関係は現実に遠い。現在の獣医学部の設置状況がどのような社会的、経済的な帰結を生み出しており、規制緩和でどう変化すると予測されるのか、データや客観的事実に基づく議論がなされていない。官僚制が知識や情報に優れるからこそ、委任を受ける存在となっていないのである・・・
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