朝日新聞6月8日オピニオン欄「認知症、家族と社会と」から。
「もしこの人がいなかったら、認知症に対する社会の関心はもっと低かったのではないか。公益社団法人「認知症の人と家族の会」代表理事・高見国生さん(73)。認知症対策が皆無だった1980年に、会は京都で生まれた」
高見さんのインタビューから。
・・・会を結成したころ私は母を介護していて、介護で苦しんでいる家族で励まし合おうとしたんですが、もっと政治の光が当てられないかと最初から言うてました。2年後に最初の要望書をまとめて厚生省に持っていった時は、担当課も決まってなかった。けども認知症問題が出てきそうやという気配はあった。時代に合うたんですよ。厚生省が大蔵省へ予算要望する時の資料に、その要望書を入れたと言うてましたからね。
そのころは役場に相談に行っても、認知症は対象外やと言われた。要望書では患者への定期的な訪問、援助のほか、通所サービスや短期入所をさせてくれと言うたんです。今のホームヘルパー、デイサービス、ショートステイですわ。「在宅福祉の3本柱」として厚生省が政策にしたんは89年のゴールドプラン(高齢者保健福祉推進10カ年戦略)でしたな・・・
「介護保険で家族の状況は変わりました」という問いに。
・・・そりゃ雲泥の差です。会員にアンケートを取ると、デイサービスやショートステイに行ってくれることで「自分の時間ができた」とか「外出できるようになった」という回答が増えた。ただ変わらないのは、気持ちのしんどさ。認知症の人の介護は毎日が新しい出来事の連続で、気が休まらない・・・
元厚生労働省老健局長・中村秀一さんの発言。
・・・旧厚生省が本格的に認知症に取り組んだのは、1986年の「痴呆性老人対策推進本部」からです。それまで老人福祉では、寝たきり対策と施設整備が主な課題で、認知症は遅れていました。私は本部の事務局にいましたが、患者さんの数も不明という状況・・・概して患者さんの声は予算を獲得するバックアップになります。財務省も当事者の要望は預かる。もっとも、本格的な高齢社会を迎えるにあたり、老人福祉は予算が付きやすかった。89年からゴールドプランの作成にかかわり、90年に老人福祉課長になったのですが、他分野を担当する役人仲間からひがまれたこともあります・・・
・・・介護保険の給付は初年度の3・6兆円から、現在は約10兆円となりました。医療は約40兆円。介護も医療も、限りのある公的財源をどう配分するかというシステムです。人為的に公定価格を付けるからこそ、公開の場で関係者が納得するまで議論する必要がある・・・
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