大木毅著『灰緑色の戦史――ドイツ国防軍の興亡』(2017年、作品社)を読みました。「無敵の軍隊」の虚像が、剥がされます。
子供の頃、「ドイツ陸軍、日本海軍はとても強かった」と教えられました。「アメリカの物量に負けた」ともです。そのような俗説、神話が普及していたのでしょうね。
高校生の時に、日本軍の戦記物が好きな友人がいて、その影響でいくつか関係の本を読みました。
しかし、もう少し客観的な本を読んだのは、大学生の時です。決定打は、有名な『失敗の本質―日本軍の組織論的研究』(1984年、ダイヤモンド社。中公文庫に採録)です。日本軍の失敗が、明らかにされます。
ミッドウェー海戦も、物量では日本海軍の方がアメリカ海軍を上回っていました。負けたのは作戦の失敗です。いくらドイツ陸軍、日本海軍が強いと言っても、結果として負けているのですから、強くなかったことは証明されています。神様が、イタズラをしたわけではありません。
そもそも、物量において圧倒的に差があることは、開戦前から分かっていたことです。分かっていながら戦争をする。これほど不合理なことはありません。
結果は、あのひどい敗戦。国民は空襲やその後の混乱で、戦死、飢餓など塗炭の苦しみを受けました。戦争孤児もたくさん生まれました。軍隊はお取りつぶし。アジア各国にも大変な被害を与え、後世の日本国民にその「負の遺産」を半永久的に負わせることになったのです。戦争指導者の責任は、追及されてしかるべきです。
ドイツにしろ日本にしろ、負け戦の物語を読むことは、楽しくありません。勝った戦争は、勇敢な兵隊と有能な指揮官がいてと、楽しいですが。しかし、負け戦にこそ、学ぶべきことはあります。