6月16日の日経新聞オピニオン欄、アメリカの3M会長のインゲ・チューリンさんのインタビューから。3Mはアメリカの素材メーカー、ポスト・イットなどが有名です。
・・・3Mの商品は工業用の研磨材から医療材料、「ポスト・イット」のような文房具まで幅広いが、総じて言えば、既存の商品は陳腐化によって毎年4%程度売り上げが逓減していく。その結果、5年経つと2割減る。その穴を埋め、さらに会社全体の売上高を押し上げるには、切れ目なくイノベーションを起こし、製品群の新陳代謝を活発にしないといけない・・・
・・・当社のイノベーションには2種類ある。一つはカスタマー・インスパイアード(顧客触発型)イノベーションと呼んでいる、お客さんと一体になって新しいモノを創る仕組みだ。日本での最近の成果としては、電車の外装を丸ごとラッピングする特殊フィルム素材がある。東京メトロやJR東日本向けに開発した・・・
・・・(もう一つのイノベーションの類型は)社内用語でインサイト・ツー・イノベーション(洞察による革新)と名付けたもので、これは特定顧客向けというより、もっと幅広く新たな市場の創出を狙ったものだ。例えば従来製品に比べて耐久性を4倍に高めた内装用の研磨材や「アイガード」という患者の血液などから医療従事者の目を守る防護具は、日本の建設現場や病院でも広く使われている・・・
西條都夫・編集委員の言葉
・・・近年、経営学で「トランザクティブ・メモリー」という概念が注目されている。企業は膨大なメモリー(記憶=知)を蓄積しているが、それが活発にやりとり(トランザクト)されることで、イノベーションの生産性が上がる、という考え方だ。逆に言えば、せっかくの「知」もたこつぼ的な組織に埋もれたままでは有効に活用されず、宝の持ち腐れに終わる。
優れた文化は一朝一夕には生まれない。3Mは1951年から社内の技術見本市を毎年開き「誰が何に取り組んでいるか」の情報を共有してきた。異分野の技術者が集まるイベントや研究発表会も多く、組織内の「知の巡り」が向上する・・・
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