公文書館、憲法の展示

国立公文書館で、春の特別展示「誕生日本国憲法」を見てきました。
今回の「売り」は、日本国憲法の原本が展示されていることです。いつもは、複製が展示されています。現憲法が、どのような過程をたどって制定されたか。内閣、GHQとの関係などは、学校でも習いますが、その記録が展示されています。
それらの解説は、展示と図録(これはよくわかります)をご覧いただくとして。私が興味を持ったのは、次の点です。

昭和21年3月4日、GHQから日本側に草案を早く出せと督促があり、松本烝治大臣と内閣法制局幹部が草案を持っていきます。説明の過程で、どうやら腹を立てた松本大臣が帰ってしまい、佐藤達夫・法制第一部長がその場で草案を英訳し、逐条審議します。松本は1877年生まれ、当時69歳。佐藤は1904年生まれ、当時42歳で元気があったのでしょうね。
占領軍対敗戦国。対等な議論にはなりません。しかも、天皇制を廃止し、民主主義への大改革です。彼らの苦悩は、察するにあまりあります。そして、当時は食糧難、食糧メーデーは、昭和21年5月のできごとです。きっと、お腹をすかせて、占領軍に説明したのでしょうね。

2月15日付けで、白州次郎がホイットニーに送った、英文の書簡があります。そこに、絵が描いてあります。占領軍が求める目的地と、日本が考えている目的地は同じである。しかし、占領軍は飛行機で一足飛びに目的地にたどり着こうとするのに対し、日本はいくつもの山の間をあたかもジープに乗って乗り越えて進むのだというのが、絵で描かれているのです。
国内の政治情勢から、そんなに簡単に憲法改正が進まないことを、理解してもらうべく、書かれたものでしょう。長々と文章を書くより、この方が効果があったのではないでしょうか。もちろん、文章でも、改正を進める際に何が問題で何が必要かを述べているのですが。

天皇の文書が、漢字カタカナの文語体から、漢字とひらがなの口語体になります。文章の最初の字が一画下がり、句読点が打たれるようになります。そして、「朕」が「わたくし」になります。
驚くのは、それら原本の紙の質の悪さです。物資が不足していたことを物語っています。即物的な感想ばかりで、申し訳ありません。

入場料無料、5月7日までです。皇居のお堀の桜は八重桜がきれいです。皇居東御苑(江戸城本丸跡)も見どころです。ここは案外知られていない、観光名所です。ここも無料。公文書館の前の平川門が便利です。帰りは大手門から出れば、東京駅にも近く、良い散歩コースです。一緒にご覧ください。