ホワイトハウスの記者会見に出席しない

3月7日の日経新聞オピニオン欄「トランプ氏VSメディア」、ジョン・ミクルスウェイト、米ブルームバーグニュース編集長の発言から。
・・・過去の大統領も一部のメディアを嫌い、不安定な関係にあった。トランプ氏だけが特別ではない・・・ただ、これまでにない異例なことが起きた。ホワイトハウスで開催された記者懇談で一部の記者が排除されたのだ。ブルームバーグの記者はそうした状況を知らずに参加したが、今後こうしたことがあれば、出席しないと決断した。公共の利益に反すると思うからだ・・・
「あえて参加し、情報を得たり、その場で意見を述べたりする道もあるのでは」という問いに。
・・・白か黒かすっきり割り切れる問題ではなく、逆の考え方もあり得る。ブルームバーグの顧客にも「内部で何が起きているか知りたい」という人がいるかもしれない。しかし、情報の流れをオープンに保つことが公共の利益にかなうと思う。何ら抗議せずに参加すれば、さらに悪いことが起きる・・・
原文をお読みください。

被災市町村長の評価、8割が進んでいる。

今日3月7日の朝日新聞は、被災42市町村長のアンケート結果を載せていました。2013年から毎年行っているものです。
「復興は順調に進んでいますか」という問に対して、「進んでいる」「どちらかと言えば進んでいる」が32人、「進んでいない」「どちらかと言えば進んでいない」が7人でした。約8割の首長が、進んでいると答えています。進んでいない方の内訳は、岩手県が1人、宮城県が2人、福島県が4人です。
2013年では、進んでいる方が22人、進んでいない方が19人で、ほぼ半分でした。その後、順次、進んでいる方が増えてきました。また、復興状況は何点か(100点満点で)という問もあります。
これは、復興庁への採点であり、現場で取り組んでおられる首長さん自身の採点でもあります。ここまで来ることができました。関係者の方にお礼を言います。

「職員派遣などこの6年間の国の人的支援は十分でしたか」という問には、十分が25人、不十分が16人です。国も他の自治体も、今回初めて本格的な職員支援をしたのですが、それぞれに事情があり、すべての要望にはお応えできていません。

読売新聞も、42市町村長へのアンケート結果を載せています。
復興完了の見通しについては、すでに完了と4年以内に完了するがあわせて24人です。5年以内に完了する7人をあわせると、31人が5年以内に完了するとみています。これも、約8割の町で完了が見えてきました。
町の中心部が流された陸前高田市、山田町も、5年以内で完了するとみています。石巻市、南三陸町、気仙沼市、釜石市も4年で、女川町は3年以内に完了です。
他方で、5年から10年かかるが4人(岩手県1人、福島県3人)、見通せないが7人(福島県内)です。原発事故避難区域は、避難指示が解除されてから復興に入るので、まだまだ時間がかかります。

遅れているものを聞いたところ、朝日新聞では、農林水産業、商工業、道路と鉄道、雇用、住まいの順です。読売新聞では、防潮堤、農林水産業、鉄道と道路、住まいの順です。(3月8日加筆)

住民と作る復興計画、南三陸町長

3月7日の日経新聞「私見卓見」は、佐藤仁・宮城県南三陸町長でした。
・・・6年という年月がかかったが、「よくここまで来たな」というのが正直な感想だ。もちろん、仮設住宅での生活を余儀なくされている町民の方にとっては「何でこんなに時間がかかるのか」との思いもあるだろう。しかし「二度と津波で命が失われない町を作る」という考えを実現するのは、国の全面協力があってもたやすいことではなかった。
復興計画を作るにあたって重視したのは、町民の意見を取り入れることだ。繰り返し、繰り返し住民説明会を開いた。阪神大震災の際には行政主導で短期間で計画がまとまっただけに「住民の意見を余りにも聞き過ぎると計画策定が遅れる」との批判の声もある。しかし町をつくり直すには町民の意見を反映させないといけない。それが真の意味での復興だ・・・
原文をお読みください。

朝日新聞に登場しました。政治の役割

朝日新聞が3月5日から「首長と震災」の連載を始めています。5日は伊澤史朗・福島県双葉町長、6日は阿部秀保・宮城県東松島市長でした。
阿部市長は発災直後から、すばらしいリーダーシップを発揮して、復興を進められました。がれき片付けについても、がれき置き場を性質別に分類して、市民が運ぶ際に分別するようにしました。たたみ、木材、燃えるゴミ、燃えないゴミ、金属など。混ざっていると、その後で分別する手間が大変なのです。金属類は、売るとお金になります。初めて視察に行ったときは、その手際よさに驚きました。かつての経験があったとのこと。他の市町村では、そこまで気が回りませんでした。この経験は、その後の災害、例えば熊本地震などでも生かされています。
また、新しい町での町内会作りについても、このホームページで、取り上げたとおりです。これらのことも、書いてほしかったですね。

さて、その記事の中に、私の発言が紹介されています。
・・・被災3県では新しいまちが出現しつつある。高台移転と土地のかさ上げによる宅地造成は1万9385戸が計画され、3月末までに69%が完成する。災害公営住宅も含めると、投じられた国費は2兆円。復興庁の前事務次官の岡本全勝(62)は「地元に住み続けたいという情念と、経済合理性は比較不能。それを決断するのが首長の仕事だ」と語る・・・

復興の過程で、時々質問を受けました。「このような大規模な工事をして防潮堤を作ったりや高台移転などせずに、住民に安全なところに引っ越ししてもらった方が、安くできるのではないか」とです。そのような考え方もあります。しかし、ふるさとで暮らしたい、もう一度町を復興したいという住民の気持ちと、外部の人が考える経済合理性とは、同じ尺度で判断できない選択です。諸外国ではこのようなふるさとを復興するのではなく、他の土地に移住する、あるいは国は支援せず住民に任せることが多いようです。これは、このホームページでも書いてきたように、日本の国柄でしょう。
それを前提として、多額の税金でふるさとの復興を支えるのか、引っ越しを勧めてそれを支援するのか。これは、官僚が決めることではないでしょう。民主主義国家、日本国憲法の下では、「比較不可能な複数の価値」に序列をつけるのは、政治家の仕事です。国民にそのために増税をお願いすると判断するのも、政治の役割です。もちろん、任せてもらえれば、官僚が「合理的」と考える判断をします。また、方針が決まれば、最も合理的な方法で工事を行います。
私の発言は、正確には「それを決断するのは政治の仕事だ」です。

近づく3.11。各紙の特集

もう、3月です。あの日から、6年が経とうとしています。6回目の3.11が近づき、新聞各紙が特集を組んでいます。ありがとうございます。風化しつつあると言われる、あの大災害。その記憶を、国民の皆さんに引き継いでいただきたいです。

岩手、宮城の津波被災地では、高台移転やかさ上げによって町の再建が進んでいます。その様子が、写真を使って報告されています。写真の力は大きいですね。発災前の街の様子、津波の直後、片付けが終わった後、そして今。言葉で説明するより、わかりやすいです。もちろん、説明をつけないと、部外者にはわかりませんが。
工事は進んでいるのですが、他方で課題も指摘されています。人口流出、公営住宅の入居者の年齢が高いこと、孤立、商店の苦戦、高台の住まいから商店まで買い物に行くことが不便なことなど。これから、住民と自治体が、どのようにこれらの課題に取り組んでいくか。もちろん、国も支援団体も支援を続けますが、中心となるのは地域です。

違った条件にある福島の原発被災地では、順次避難指示が解除されています。報道でも、商店や住民が戻りつつあることが、報告されています。こちらも、まだ戻る住民が少ないことが、課題です。

各紙が取り上げてくれていますが、子どもたちが大きく成長した姿をみると、うれしいですね。彼ら彼女たちは、狭い仮設住宅、長距離通学、仮設校舎、避難先でのなじめない学校など、子供心に苦労をしています。それを乗り越えて育っています。この子たちを育てることも、復興の大きな要素です。

マスコミ各社が、客観的、長期的な視点で、この復興を取り上げてくれています。これもまた、各社と日本社会の成熟を示していると思います。昔だったら、「進まない復興」「住民に不満」など、行政に対する批判記事が定番でした。
でも、根拠と代案のない批判は、生産的ではありません。住民も、自治体も、応援に行った職員も、それぞれ精一杯に努力しています。もちろん、復興庁をはじめとする国も。
全員が満足する答えがない課題、直ちには解決できない課題があります。その際に、一部の立場に立って、ほかを批判する。わかりやすいですが、それでは前進はありません。