地球規模の貧富の差

1月16日の日経新聞電子版が「世界の富裕層上位8人の資産、下位50%と同額」を伝えています。世界で最も裕福な8人と、世界人口のうち経済的に恵まれていない半分に当たる36億7500万人の資産額がほぼ同じなのだそうです。8人の資産が計4260億ドル(約48兆7千億円)で、世界人口73億5千万人の半分の合計額に相当します。
改めて驚きます。
NGOのオックスファムが発表したものです。「Just 8 men own same wealth as half the world」。

オックスファムが指摘するように、このような格差が続くと、社会は安定しません。自由主義経済だからとか、本人の才能だからというだけで、放置するわけにはいきません。「神の見えざる手」(経済)だけに任せず、「国の見える手」(政治)の責任です。
なお、8人の富豪の名前も、資料の後ろに載っています。

民主主義の困難さと憲法の役割

1月6日の朝日新聞、長谷部恭男・早稲田大学教授と杉田敦・法政大学教授の「考論」「混迷の世界行く先は」から。
アメリカの「ラストベルト(さび付いた地帯)」の人たちは、自分たちが祖父母や親の代のような豊かな生活ができないのはおかしいと主張し、その切実な声に寄り添わないリベラルやエリートが悪いという議論も最近多いということについて、杉田教授の発言。
・・・グローバル競争で、地域や個人が海外と直接に競争力を比べられてしまう状況になり、その中で、地域の切り捨ても起きている。由々しき事態ですが、根本的な対策がない点では、リベラルだけでなく、トランプ氏もEU離脱派も実は同じです。しかし彼らは、国境に壁を作るとか、移民排斥とか、見せかけの対策をショーアップし、つかの間の人気を得ている。本来なら産業・経済構造の変化という「不都合な真実」を伝え、それに対応して生き方を変えるよう人々に求めるしかありません。しかし、それは人々に我慢を強いる「縮小の政治」という面があり、どうすればそんな不人気な政治を、人々の支持を得ながら民主的に進めることができるか。難題です・・・

憲法の機能についての、長谷部教授の発言。
・・・今年はいろいろなことが試される年になるでしょう。まずは、権力を分立し、おかしな党派にすべての権力が掌握されないように設計されている憲法システムや政治システムが、トランプ次期大統領の暴走を抑えることが本当にできるかが試されます・・・

立ち乗り2輪車の活用

今日、ご近所で、セグウェイに乗った人を見かけました。電動立ち乗り2輪車、と呼んだら良いのでしょうか。開発された頃はニュースで見ましたが、その後お目にかかったことはありませんでした。
「それほど便利ではないな、遊び用かな」と思っていましたが、今日の使われ方を見て、これは価値があると思いました。
乗っているのは中年男性で、左足が少し不自由なようです。ギプスの様な補装具をつけておられます。横断歩道を渡って歩道に乗る際に、タイヤが小さいので(直径30センチくらいでしょうか)、そのまま乗り上げることができず、いったん降りて歩道に引き上げて、再度乗り直して行かれました(その際に、足が不自由だとわかったのです)。歩いている人たちより、少し速い速度です。
納得です。この方は、車いすに乗るほどの障害ではなく、歩くことはできるのですが、不自由なのです。このような使い方は、活用されて良いと思いました。セグウェイは。公道で使うには、まだ制約があるようですが。

バブルの列伝

永野健二著『バブル 日本迷走の原点』(2016年、新潮社)を紹介します。既に新聞の書評欄などでも取り上げられています。元・日本経済新聞社記者による、バブル期を振り返った書です。
当時の取材を元に、バブルに関与した経済人・金融機関などの「列伝」です。バブル発生の前から、バブルの膨張、そして破綻と時系列に、事件とその主役を取り上げ、マスコミのニュース報道ではわからなかった事件の背景や裏が解説されています。
「主役たち」の行動、それも表に出なかったことを含めての解説ですので、どこまでが真実か、またここには書かれたことが「全体に占める割合」は、わかりません。しかし、当時の新聞記事と、筆者の取材による記述は、説得力があります。

バブルの検証については、様々な書物が出ています。巨大な経済事象であっただけでなく、多くの日本人を巻き込んだ社会現状、そして行政のあり方や社会の仕組みを変えた変革でもあったのです。日本の経済成長の象徴でもあった興銀がなくなり、金融行政が大蔵省から切り離されました。直接的な原因である金融政策の問題だけでなく、構造改革を求められていた金融のあり方と金融行政、地価への神話などそれを支えた日本人の意識など。全体像を記述することは、難しいです。経済学からの分析、行政や政治の役割(失敗)としての分析、日本社会の大きな変革(その失敗)としての分析などが考えられます。
他方で、この本のように、その主役たちに焦点を当てての分析は生々しく、価値があります。社会の現象としてのマクロからの視点は重要です。しかし、腑分けしてみていくと、そこにあるのは個人や会社の行動です。それが積み重なったものが経済の動きであり、社会の現象です。難しいのは、個人や会社の行動を、経済社会の大きな変動の中に位置づけて、記述することです。この本は、それに成功していると思います。
バブル崩壊から既に四半世紀が立ちました。若い人は経験していません。学術書とともにこのようなノンフィクションも、わかりやすいと思います。

河北新報、被災地での企業の役割

前にも紹介しましたが(被災地での企業の社会貢献、社会的役割。1月5日)、河北新報が、被災地での企業の貢献「トモノミクス」連載を続けています。
1月8日から12日は、発災直後の混乱期に、企業がどのように地域の暮らしを支えたかです。
企業もまた被災していました。従業員もです。その中で、店を開いたスーパーマーケット。なくなった粉ミルクを、東京まで仕入れに行ったスーパー。がれきの街で、無償で道を切り開いた建設業者。預金通帳無しでお金を払い戻した銀行・・・。
そして、町の復興には商業や産業の再開が不可欠であることが、紹介されています。これらは、重要な「社会インフラ」です。