2016年12月10日の日経新聞夕刊「こころ」面、長尾和宏医師へのインタビュー「親の老いを見守る」から。
・・・「親の人生の穏やかな終末期や臨終を子供たちが邪魔している。20年にわたる在宅診療で約1000人を看取った長尾和宏さん(58)はそう言い切る・・・
・・・担当する高齢患者の家族や親の介護の相談に訪れる方々の話には共通点があります。「親の体が衰えたり認知症になったりして困っている。医療や薬の力でなんとかしてほしい」というのです。本人はちっとも困っていないのに、子供たちがうろたえている、という構図です・・・
・・・子供にとって親は、ある時期まで強くて頼りになる存在です。親しみを持ち敬意を払う対象でもあります。親の老いを受け止められないのはこうした親像から離れられないのも一因でしょう。
しかし、そんな親もいつかは老いていきます。元気いっぱいだった母親にがんが見つかり、物知りだった父親が認知症になる。子供は戸惑い、嘆きますが、今や2人に1人ががんになり、認知症も2人に1人がなる時代が間もなくやってきます。「当たり前」のこと親に起きているだけで、自分の親だけはそうならない、と考えるのは現実を直視しない独りよがりです・・・