年別アーカイブ:2016年

人事異動

2016年3月14日   岡本全勝

多くの職場で、人事異動の季節になりました。先日、楠木新著『左遷論』(2016年、中公新書)を読みました。で、今日は趣向を変えて、人事について書きます。この本は、左遷を軸にした、日本の企業での人事の仕組み、慣行を論じた本です。読んでいただくとわかりますが、日本の組織では、左遷はめったに起きません。よほどの失敗をしたか、ワンマン経営者ににらまれたときくらいでしょう。
本人は自分の希望のポストにつけないと、「左遷」と感じます。しかし、人事当局や上司からすると、組織の論理で人事異動を決めます。空いたポスト群に対し、異動対象となる職員群から、最適解を考えるのです。その際、個人個人の最適(部分最適)をすべてかなえることは難しく、全体として最適と考える人事異動(全体最適)を考えます。正確には、「不満を最も小さくする組み合わせ」を考えます。
他方で、異動対象の本人は、自分の実力を客観的評価(周りの評価)の1.3倍くらいに過大評価しているというのが、世間の通説です。この2つの要素によって、左遷でない異動を、本人だけが「左遷だ」と受け取ってしまうのです。この本の副題にあるように、「組織の論理、個人の心理」のずれが起きるのです。
さて、そこでの課題や対処方法は、2つあります。一つは、組織側の対策です。上司が異動対象者に、「これは左遷ではないのだよ」と、教えてあげることです。異動対象者がすねることが予想される場合は、難しい対話になります。
もう一つは、本人側です。自分の実力は、自分では見えないものです。いえ、見たくないものです。口では「私はそんなに優秀ではありませんから」と謙遜していながら、多くの人は内心で「俺様の実力は、こんなものではない」と自信(過信)を持っています。
まあ、人間とはそんなものです。自分自身に自信を持つことはよいことです。変に卑下する必要はありません。しかし、自信を持ちつつ、仕事場では困難な仕事から逃げていては、周りの人からは評価されません。実力は、仕事で発揮してこそ、評価されるのです。「内に秘めた能力」は、職場では、能力がないのと同じです。
もし、自分の意に反した異動があったら、つべこべ言わず、新しい職場で頑張りましょう。そこで腐っているようでは、あなたの評価は、ますます下がります。後は、ダウンスパイラルに陥ります。新しい職場で実力を発揮して、人事当局や上司に、「彼は、良くできるじゃないか」「今度は、××の仕事をさせよう」と言わせましょう。連載「明るい公務員講座」では、第14回(3月14日号)から、この話に入っています。

NHKスペシャル、復興予算の検証番組

2016年3月13日   岡本全勝

3月12日夜に放送されたNHKスペシャルは、「シリーズ東日本大震災 “26兆円” 復興はどこまで進んだか」でした。これまで5か年の予算を分類分析し、成果や関係者の言葉など現場からの報告を入れた、かなり力のこもった番組でした。「さすがNHK」と思わせる、分析と映像でした。私たち役人では、こうはいきません。盛岡のホテルの部屋で見たのですが、感慨無量でした。私が特に意義があると思ったのは、次の点を取り上げてくださったことです。
・番組の構成が、インフラ復旧だけでなく、産業再生とコミュニティ再建の3つから成っていたこと。そして、後ろの2つが復興に必要だということを指摘していたこと。これが、今回の復興の一番の特徴であり、私たちが力を入れたことなのです。
・そのために、産業再生とコミュニティ再建について、政府がこれまでにない支援に取り組んでいること。
・これまでにない復興事業に、市町村長が苦労していること。
・すべてがうまく行っているわけではありませんが、現地の人たちが、感謝してくださっている映像があったこと。
私たちが5年間やってきたことがまちがいなかったと、うれしかったです。報道は、とかく政府に批判的ですが、この番組は進んだところ、うまく行っていないところ、評価できる点、今後検討が必要な点を、バランスよく取り上げてくださったと思います。
見逃した方も、いずれ再放送があるでしょうから、ぜひご覧ください。オンデマンドでも、見ることができます。
私も、最後の部分に登場しました。先日、取材を受け、30分ほどお相手をしました。政府で最初から5年間携わっているのが、私だけだというのが、出演した理由のようです。使われたのは1分ほどですが。「うまく切り取るものだなあ」と感心しました。鎌田キャスターは、お上手ですね。かつて、「週刊こどもニュース」のお父さん(池上さんに続く2代目)でした。
番組を見た知人や職員から、「見たよ」と、携帯電話にたくさんメールが入りました。その中に「いつもは次官室の扉を開け放してあるのに、あの日は閉じたのですか」という、鋭い指摘がありました。鎌田さんが、次官室の扉をノックして、開けて入ってこられる映像だったのです。笑い。

大船渡駅前まち開き

2016年3月13日   岡本全勝

予定通り、昨日12日に盛岡に入り、今朝から大船渡市の駅前再開発まち開き式典に行ってきました。大船渡は町の中心部が津波とその後の火災に遭い、甚大な被害を受けました。その中心部を土盛りし、商業用地を作ります。また道路などで高くした後背地は、住宅にします。
発災直後の5月に視察に入り、戸田市長に案内してもらいました。避難所では、多くの避難者が元気のないところ、一部の漁師さんが、市長に声を荒げて「いつになったら復旧するんだ」と食ってかかりました。市長は丁寧に応対されるとともに、私に「あのような元気な漁師さんがいる限り、大船渡は復興しますよ」とおっしゃったのが印象的でした。
市長はその話のとおり、まず魚市場を完成させました。サンマの水揚げ日本一です。また、12日のNHKスペシャルでも紹介されていましたが、既存集落の空き地を活用して住宅を再建する方法を選び、早くかつ安い費用で住宅をたくさん再建されました。そして、今日の駅前まち開きです。
がれきの山だった当時を思い出すと、よくここまで復興したと感激しました。市長の力量に尊敬と感謝をします。そんなことを、祝辞で述べてきました。

5年目の現状

2016年3月12日   岡本全勝

10日の復興推進会議に「復興5年間の現状と課題」を報告しました。本体8ページ、参考資料3ページの簡潔な資料です。表紙に、目次を載せてあります。被災者支援、住宅の再建、産業の再生という3つと、福島の復興が大きな課題です。概要は1ページ目にまとめてあり、8ページに総括を載せてあります。
避難者は、47万人から17万人まで減少しました。介護サポート拠点や相談員の見守りなどにより、医療や心身のケア、孤立を防止しています。住宅は、工事がピークを迎えています。自主再建は、13万件が再建中又は再建済みです。高台移転などによる宅地造成は約2万戸、災害公営住宅は約3万戸を計画し、ほぼ半数ができています。平成30年度までには、工事を終了する見通しです(p4)。産業については、生産設備は復旧しましたが、売り上げは業種間にばらつきがあります。福島については、順次、避難指示を解除しています。帰還に向けて商店の再開などの生活環境整備を行い、長期避難者へは復興公営住宅を整備します。

原発被害への先入観、分断をなくす戦い

2016年3月12日   岡本全勝

朝日新聞紙面から。
3月12日1面、森北喜久馬・原発取材センター長の「福島への先入観、捨ててほしい」。
・・・福島県の農林水産物は出荷前に検査を受けている。2年前、緊張しながら福島市に住み始めた私は、いまでは最も安全が確認されたものを食べていると思っている。
もちろん、安心への感覚は人それぞれだ。伊藤さんも「個人の心の問題」と認める。ただ、安全への努力が伝わらないまま「福島=危険」という印象だけが固定化しているのでは、と私は危惧を覚える。
農林水産物の検査結果も県内外の空間放射線量もネットで公開されている。まずは先入観を捨ててほしい。どうか、そのデータを見てから判断して欲しい。そう強く願う・・・
3月11日社説「震災から5年 心は一つ、じゃない世界で」。
・・・南相馬市の番場さち子さんもその一人だ。医師と一緒に放射線についての市民向け勉強会を80回以上重ねた。まずは正しい知識を得る。それが今後の生活の方針を納得して選び、前向きになる支えになると考えた。
番場さんらがいま懸念するのは、5年にわたる苦悩と克服の歩みが、被災地の「外」に伝わらず、認識のギャップが広がっていることだ。
「福島県では外出時にマスクは必要か」「福島産の米は食べられるのか」。県外から、そんな質問が今も続く。
空間線量や体内の被曝の継続的な測定、食材の全量検査、除染作業などさまざまな努力を重ねた結果、安全が確かめられたものは少なくない。だが、そうした正常化された部分は、県外になかなか伝わらない。
郡山市に住む母親は昨年、県外の反原発活動家を名乗る男性から「子供が病気になる」と非難された。原発への否定を無頓着に福島への忌避に重ねる口調に落胆した。「まだこんなことが続くのか」・・・
人さまざまに、安心についての考えは異なるでしょう。しかし、原発事故から立ち直ろうと頑張っている人たちの元気をなくすようなことや、分断を助長することはやめて欲しいです。もちろん、放射能について正しい理解は必要です。