現地を取材している記者さんとの意見交換

12月12日は、岩手県の被災地で取材している新聞記者さん数人との勉強会に、盛岡に行ってきました。
私は国から全体を見ていますが、記者さんたちは現場を見ています。現状と問題点を把握するためには、鷹の目と蟻の目の両方が必要です。合わせて、縦軸と横との比較も。縦軸は時間軸で、これまでの経緯と未来です。過去はこの5年余りだけでなく、過去の災害復興との比較も含めてです。未来は、この後どのような課題が出てくるか、その予測です。そして、市町村長という当事者とともに、記者という第三者の目が重要なのです。
課題の認識を確認する上で、有意義な意見交換になりました。共通認識の面と、違う点と。記者さんたちはこう見ているんだと。同じ視点で見ていては、問題点が見えません。それが異業種交流の意義です。
お互いに認識している課題は、おおむね共通でした。問題は、それにどのように対応するかです。インフラ復旧ができたとしても、産業の再生、コミュニティの再生が難しいです。そしてこれは、被災地独自の課題でなく、日本の多くの地域の課題です。

司馬遼太郎さんのサラリーマン向け人生講話

司馬遼太郎著『ビジネスエリートの新論語』(2016年、文春文庫)が、書評などで取り上げられています。司馬さんの本、サラリーマン向けの人生講話となると、読まないわけにはいきません。
各項目に古今の名言が掲げられ、それをテーマに、いつものと言うか、いつもの司馬遼太郎節よりさらに軽妙な文章が綴られています。例えば、「サラリーマンの元祖」は、鎌倉幕府の初期を支えた文官、大江広元の生き様を描き、サラリーマンの元祖として紹介しています。これなどは、さすがと思わせます。随所に、なるほどと思う記述があります。
もっとも、書かれたのは昭和30年、私の生まれた年です。司馬さんもまだ32歳、小説家としてデビューする前、新聞記者の福田定一として出版しています。
サラリーマンの一種を38年間続けた私としては、司馬さんは若くしてよくこれだけ見抜いているなあと思うとともに、まだまだ若いなあとも思います。大先輩に向かって失礼ですが。
また、戦後すぐの昭和30年と平成28年との、60年の社会の変化も感じられます。たぶん司馬さんも生きておられたら、原文のままの形での再刊は、同意されなかったでしょう。

大企業による被災地企業の支援

復興庁では、事業の展開に悩む被災地の企業と、応援したい大企業とを結ぶ、「結いの場」を続けています。いわば、支援して欲しい企業と支援したい企業の、お見合いの場です。お見合いするだけでなく、その後の実現へ向けての取り組みが重要です。新商品の開発、新分野への進出、販路拡大、営業支援などです最近の事例をまとめました。
事例を見ていただくとわかりますが、支援企業は関係深い製造業や販売業だけでなく、まったく「畑違い」の企業が、営業や業務改善などにも支援をしてくれています。積水ハウス、パナソニック、富士通、NTTドコモ、住友不動産、三井住友銀行、三井住友海上火災保険・・・。ありがとうございます。

このような、被災企業へのノウハウの支援、大企業の支援を結びつけることも、東日本大震災で始めた政策です。主に民間企業から復興庁に派遣された・採用された職員が、考え実行しています。彼らにも感謝します。

最高裁判所の違憲判断を支えるもの

12月2日朝日新聞オピニオン欄「憲法の価値を守るもの」、見平典・京都大学准教授の発言から。日本の最高裁判所が、アメリカなどと比べて、違憲判断に消極的だったことについて。
・・・二つめが「規範的資源」です。積極的な違憲審査の根拠となるような、法理論、判例、司法の果たすべき役割に関する共通理解がどの程度存在しているか、ということです。日本では米国と比較して司法が議論の分かれる社会問題の解決にどの程度踏み込むべきかについて狭く理解されてきました。
三つめが「政治的資源」です。最高裁が違憲判決を下したときに最高裁を政治的攻撃から守る政治勢力のことです。米国では法曹集団や訴訟団体、公益団体が裁判所を支えてきました。政治指導者も、連邦と州が対立した時や立法による政策実現が困難な場合などに、しばしば積極的司法を支持してきました。しかし、日本ではこうした基盤が欠けていました。
近年、婚外子の相続分規定や投票価値の格差に関する判決にみられるように、最高裁は従来より積極的に違憲審査に取り組んでいます。司法制度改革で立法・行政に対する司法のチェック機能の強化に政治的正統性が付与されたことや、裁判官・調査官の世代交代と努力が背景にあるとみられます・・・
原文をお読みください。

この記事は、12月11日に書いています。新しいホームページ作成ソフトには、「公開予約機能」がついているので、12日17時半過ぎに公開するように設定しました。「土日の投稿が多いですね」との、読者の意見があります。時間があるときに書くので、どうしても休日の執筆が多くなります。そこで日曜に書いて、公開日をずらしました。うまく行くかな?

商店街の復興

今日12月11日で、大震災から5年9か月です。復興は進んでいますが、新しい課題も出てきています。その一つが、商店街の再建です。12月10日の朝日新聞夕刊は「岩手・山田 JR駅前に新店舗棟完成、国道沿いにも商店街」を載せていました。11日の読売新聞は「仮設商店街、不安な再出発」として、岩手県大船渡駅前の「おおふなと夢商店街」を解説していました。

津波被災地では、町が流され、隣接する町も流されたので、買い物をするところがなくなりました。そこで、初めてのこととして、国費でプレハブの仮設商店を作り、お店に入ってもらいました。使用料も、無料です。仮設商店と仮設工場は、合計で570を超えます。事業者の数では、約2,800です。
町並みの再建が進み、仮設店舗を撤去し、本格的な商店街に移ってもらっています。市町村は、町の再建を機に、点在していた商店を駅前に集約する、ショッピングセンターを作ってそこに入居してもらうなど、工夫を凝らしています。しかし、発災前から人口減少に苦しんでいて、さらに人口=お客さんの数が減るなど、難しい課題もあります。
復興庁は、商店街再建のためのノウハウの支援や、施設設備への補助金での支援をしています。もっとも、運営費に補助金を出しては、持続する経営ではなくなるので、そこには補助金を出しません。