林景一・前駐英大使が、『イギリスは明日もしたたか』(2016年、悟空出版)を出版されました。
イギリスは、今年6月の国民投票で、EUからの離脱を決めました。今年の驚きの国際ニュースの一つでしょう。もう一つは、トランプ大統領候補の当選です。
林大使は、2011年から今年まで、5年間にわたって駐英大使を務められました。その視点からの分析です。イギリスのEU離脱の意味、なぜそうなったか、イギリス人はどう考えているか、この後どのようになるのかといった、イギリスのこれまでとこれからのほか、現在の国際関係が鳥瞰されています。アメリカ、ドイツ、ロシア、中国など。
イギリスの国民投票とトランプ候補の当選は、事前予想を裏切る結果で、識者には大きな驚きです。その共通の原因として、国民の国際化への反発、移民への反発、エリートへの反発などが挙げられていますが、イギリスとアメリカでは、意味合いがかなり違うようです。イギリスでは、必ずしも国際化への反発ではなく、EUによって「主権が侵される」ことへの反発が大きいようです。もともと、統一通貨ユーロには入っていないのです。
この本は、話し口調で書かれているので、読みやすくわかりやすいです。しかし、世界を見渡しかつ歴史から説き明かす内容は、深いものがあります。著者の学識ならではです。紀伊国屋新宿本店でも、新書のコーナーに平積みされていました。
私が総理秘書官を勤めていたとき、林先輩は内閣官房副長官補(外政担当)で、ご指導をいただきました。私の帽子のお師匠さんでもあります。イギリス紳士然として、格好良いのです。ちなみに、本の帯に顔写真が写っています(帽子はかぶっておられません)が、「福島民報社提供」とあります。イギリスのウイリアム王子が福島を訪問されたときに、同行されたときの写真でしょうかね。