司馬遼太郎著『ビジネスエリートの新論語』(2016年、文春文庫)が、書評などで取り上げられています。司馬さんの本、サラリーマン向けの人生講話となると、読まないわけにはいきません。
各項目に古今の名言が掲げられ、それをテーマに、いつものと言うか、いつもの司馬遼太郎節よりさらに軽妙な文章が綴られています。例えば、「サラリーマンの元祖」は、鎌倉幕府の初期を支えた文官、大江広元の生き様を描き、サラリーマンの元祖として紹介しています。これなどは、さすがと思わせます。随所に、なるほどと思う記述があります。
もっとも、書かれたのは昭和30年、私の生まれた年です。司馬さんもまだ32歳、小説家としてデビューする前、新聞記者の福田定一として出版しています。
サラリーマンの一種を38年間続けた私としては、司馬さんは若くしてよくこれだけ見抜いているなあと思うとともに、まだまだ若いなあとも思います。大先輩に向かって失礼ですが。
また、戦後すぐの昭和30年と平成28年との、60年の社会の変化も感じられます。たぶん司馬さんも生きておられたら、原文のままの形での再刊は、同意されなかったでしょう。