連載「明るい公務員講座・中級編」第4回、「事務の管理(1)指示の出し方」が発行されました。課長の仕事のうち、まず、部下の仕事を管理することを解説します。
課長が指示を出し、部下が仕事をします。そして、その結果について、課長は責任を持ちます。部下の仕事の出来が悪いときは、自ら手を入れる必要があります。任せただけではダメなのです。指示と確認、そして添削が、課長の仕事です。指示の出し方の例として、表を作る場合を紹介しました。「臨場感」を出すために、恥ずかしながら、私の手書きの指示を載せました。今回の内容は次の通り。
部下への指示・確認・添削、悪い指示の例、任せる上司は良い上司か、部下の能力に応じた指示、仕事の困難度に応じた指示、ボトムアップ型とトップダウン型、効率的な議会答弁案作成、答弁を読むのは大臣や知事。
月別アーカイブ: 2016年11月
アメリカ社会と政治、大統領の限界
アメリカ大統領選挙は、接戦の末、トランプ氏に決まったようです。
渡辺将人著『アメリカ政治の壁―利益と理念の狭間で』(2016年、岩波新書)が、勉強になりました(かなり前に読んでいたのですが、ここに書くのを怠っていました。何事も、思い立ったときに、しておかなければなりませんね。反省)。著者は、マスコミ記者やアメリカでの政治事務所での経験をもつ、北海道大学准教授です。
8年前、熱狂的に迎えられたオバマ大統領が、なぜ思うような政治ができなかったか。その政治・社会的背景が描かれています。
分析視角として、民主党と共和党との対立や、大統領より強い議会という構造だけでなく、その対立をさらに複雑にする社会の分裂を指摘します。一つの補助線は、「利益の民主主義」と「理念の民主主義」です。これが、宗教、マイノリティー、経済・貿易などの争点で、支持政党とは違う分裂を生んでいます。オバマ大統領の敵は、共和党ではなく、民主党内にいるのです。新書という分量に、わかりやすく書かれています。是非、本をお読みください。
新しいアメリカ大統領もまた、国民の政治的意識の分裂の中で、難しい舵取りを迫られます。自らの主張を実現しようとすると、法案を議会で成立させる必要があり、その議員たちは有権者の意向を無視できません。
オバマ大統領が、1期目に早々と求心力を失う模様は、ボブ・ウッドワード著『政治の代償』(邦訳2013年、日本経済新聞出版社)が生々しく描いています。
ところで、かつて日本では、決められない政治を打破するために、大統領制にすべきという主張もありました。しかし、構造的には、衆議院が必ず与党優位になる議院内閣制の方が、大統領の与党が必ずしも議会で優位にならない大統領制より、強いはずなのです。現に、今やアメリカより日本の政治の方が「決めることができる」政治になっています。
さて、海の向こうの大国の政治も重要ですが、我が日本の政治はどうか。利益と理念の政治はどう対立し絡み合っているか。考えさせられます。
社会の亀裂の状況が、日本とアメリカでは大きく違います。アメリカでは「全員がマイノリティなのです」という指摘があります。日本ではかつて、「単一民族、一億層中流」という説明が受け入れられていました。しかし、そのような時代は過ぎ、正規非正規、子どもの貧困といった「亀裂」が大きな課題になっています。それを、政治・政党がどう拾い上げるか。その役割の差もあります。(2016年11月9日)
被災地視察、宮城県北
6日夜は仙台のホテルに泊まって、7日8日と、宮城県北部沿岸市町に、復興状況の視察に行ってきました。復興庁事務次官を退任した際(6月)に、復興状況を見届け、また市町村長さんたちにきちんとご挨拶したかったのですが、福島の仕事が忙しく、今頃になりました。
この地域の視察は、ほぼ1年ぶりです。あの大被害を思い出すことが、難しくなっています。町を造り替える大工事や住宅再建が、着実に進んでいます。もちろん、残る工事を完成させること、産業再生を軌道に乗せること、コミュニティ再建と仮設住宅の終了など、まだまだ課題はあります。しかし、あと2年で、住宅再建の工事は、ほぼ終わる見通しです。
水産加工業やハウス園芸に取り組む事業者にもお会いして、状況をお聞きしました。施設設備復旧までは国費で支援したのですが、販売が軌道に乗るかが課題なのです。
5年間一緒に苦労した(しばしばお叱りを受けた)首長さんたちとも、久しぶりにお会いしました。皆さん、自信に満ちた笑顔でした。5年半の時間が経つことの早いことを、一緒に振り返ってきました。「あの頃は、がれきがいつになったら片付くのだろうかと思った」「民地のがれきは将来も片付かないだろうなと思っていた」との思い出も。それらも、片付けたのですよね。いくつも前例のない対応をしたことや事業を作ったことに、感謝してもらいました。
「途中で逃げて(次官を辞めて)、ひどいじゃないですか」と、お叱りも受けました(苦笑)。いえいえ、公務員を辞めても体力の続く限りは、被災地を見守り続けますよ。(2016年11月8日)
経済同友会の実業高校実習機材支援
11月6日日曜日は、経済同友会の「IPPO IPPO NIPPON プロジェクト 東北支援終了式典」に、仙台まで行ってきました。「IPPO IPPO NIPPON プロジェクト」は、経済同友会が行ってくださった、被災地の専門高校などへの実習用機材などの寄付です。パソコン、工作用機械など、実業系の高校の実習には、なくてはならない機材です。5年間で、約22億円の寄付をしてくださいました。私も、お礼の言葉を申し上げました。
災害復旧では、元に戻すことが原則なので、今や使われなくなった機械を買い換えるという「変なこと」が起きそうになりました。製図台はもう使いません。コンピュータです。学校を再建する際に、現地で同一のものを再建することは、危険だし無駄なのでやめたのですが、備品の類いまでは、この「融通性」が徹底しなかったようです。反省です。
また、備品台帳に載っていないものは、復旧予算の対象にならないということも起きたようです。さらに、事務処理に時間がかかったり。多くは県立高校なので、県庁において、もう少し弾力的迅速に対応して欲しかったです。ここも反省。
これらを、同友会の皆さんが支援してくださったのです。「高校生たちの感謝の声」をお聞きください。5年間の成果の概要は、おって、同友会のホームページに載ると思います。ありがとうございました。(2016年11月8日)
明るい公務員講座、単行本作業、2
連載した「明るい公務員講座」を、単行本にする作業を進めています。第2校を、編集長に渡しました。初級編である第1次連載は、合計35回にもなり、大変な分量になっています。編集長と相談の結果、分量をほぼ半分にして、基礎的なものに絞りました。そして、順番を並び替え、冗長な文章を削除したり。最終稿になるには、まだいくつか作業が必要です。(2016年11月6日)