11月10日の朝日新聞オピニオン欄「トランプ大統領の衝撃」、久保文明・東大教授の発言から。
・・・その白人中間層が「とにかく現状を変えてくれ」というギャンブルに近い思いを込めた票が、トランプ氏に結集したのでしょう。
逆に、元大統領夫人であり、上院議員や国務長官を経験したクリントン氏は、既存の政治を嫌い、変化を求める有権者の流れに押しつぶされてしまいました。
ある意味、敗者はクリントン氏と民主党だけではありません。自由貿易、国際主義を掲げ、国際秩序を支える立場の政党だった共和党は見る影もありません。トランプ氏という反自由貿易主義、孤立主義でアメリカ第一主義の前に、これまでの共和党主流派は敗れ去りました。明らかに共和党の政策の限界を示すものでしょう・・・
・・・クリントン氏が民主党の予備選でサンダース氏に苦戦した通り、全体として、米国のエリートが米国政治の方向性をコントロールする力がだいぶ弱くなっているのかも知れません。これは英国でもそうでしょう。欧州連合(EU)からの離脱を決めた「ブレグジット」がそうでした。また、トランプ氏がこの選挙戦を通じて行ったことは有権者の不満に火をつけることで、人種や民族などの集団間の対立、分断を促進することでした。これから米国のリーダーとして、分断、対立ではなく、融合と統合を行えるのか、集団と集団を隔てる壁ではなく、架橋になることができるかが重要です・・・(2016年11月10日)