反グローバル化、経済による説明

10月30日読売新聞「地球を読む」は、白石隆・政策研究大学院大学長の「反グローバル、経済低迷で欧米内向き」でした。
欧米で反グローバル化の動きが強いのに対し、アジアではほとんど見られないことに関して。
・・・これを考える上で参考になるのは、各国の経済成長の動向だ。1995年の各国通貨建て実質の1人あたり国内総生産(GDP)を100として試算すると、10年後の2005年には英国とスペインは130に伸びた。米国とオランダは120台半ばで、フランス、イタリア、ドイツは110台半ばだった。
日本の伸びは先進国中で最低の109だった。かつて、「我々は日本とは違う」と言わんばかりに欧米で「日本病」が語られていた背景には、欧米諸国の所得の顕著な伸びと日本のもたつきがあったと言える。
しかし、これは次の10年間に様変わりした。2005年の1人あたりGDPを100とすると、2015年には米国とオランダは106、英国が105、フランスは103、スペインとイタリアは100以下にとどまり、ドイツだけが突出して良い116だった。ちなみに日本は106。何のことはない。欧米の多くの国々も、日本と同じかそれ以下の伸びだったである。
ただ、近年の国民所得の伸びを比較する場合、日本と欧米で一つの重要な違いがある。日本の1人あたりGDPは1990年初頭からすでに20年以上にわたって伸び悩み、多くの日本人が生活水準の急速な向上を期待しにくい状況が続く。
一方、欧米では冷戦終結から世界金融危機まで好景気が続き、所得も伸びた。このため、欧米の人々は、自分たちの生活はこれからも良くなると思っていたが、その期待が裏切られた・・・
この項続く。(2016年11月2日)