明るい公務員講座・中級編、3の2

読者から、お便りをいただきました。自治体の課長さんです。一部改変してあります。
・・・今週の明るい公務員講座「脱皮が必要」は耳が痛かったです。
私は課長3年目で、以前も補佐として2年在席していたので、課内では一番詳しくなりました。ついついプレーヤーとして参戦してしまいます。ヒトを相手にするよりモノを相手にする方が楽で楽しいですから。
今号を読んで”脱皮”すべく頑張ってまいります。まずは我慢することですかね・・・
早く気付いてよかったですね。私も、自分の失敗を反省して、この原稿を書いているのですから。笑いと反省。

鎌田先生の力作、地球の歴史

鎌田浩毅・京都大学教授が、中公新書を一気に3冊も出版されました。「地球の歴史、上中下」(2016年、中公新書)です。これは、お勧めです。
1 宇宙の誕生から、地球の誕生、人類の誕生、さらには未来の地球まで、130億年を超える壮大な物語が、3冊の新書に要約されています。分厚い本、専門書はあるのでしょうが、これだけコンパクトな本は見当たりません。これだけで、お得です。
2 単に事実の羅列でなく、切れ味良い切り口で、宇宙の誕生、地球の誕生、大陸や大気の誕生と循環が説明されています(すみません、まだ上巻しか読んでいないので)。
先生の言によると、科学的ホーリズム(全体像)、長尺の目、歴史の不可逆性、現場主義の、4つの視点だそうです。
例えば、地球の誕生からの分化が、次のように図示されます(p113)。46億年前に火の玉地球から、45億年前の水惑星、そして陸・水惑星になり、25億年前に生命の惑星になり、1万年前から文明の惑星になります。まあ、その図を見てください。
3 地質学や古生物学が統合され、地球科学になりました。その後、地球だけでなく惑星を研究することで、地球惑星科学になります。天文学、物理学、科学、さらには分子生物学まで取り込んで、地球と生物の進化学になっているのです。
スケールと視野の広さ、そしてそんなところでつながっているのだという意外さに、びっくりします。 私流に理解すると、鍵となる概念は、時間と空間、分化と関連ですね。
4 私たちが学生時代に学んだことが、時代遅れになっています。科学によって、ここまでわかるようになったのかということは、驚きです。私たちが学生の頃は、地学はつまらない学問だと思っていました(失礼)。この本を読むと、わくわくしますよ。
5 随所に、「へ~」が現れます。地球が水球だということは知っていましたが、鉄の惑星だと知っていましたか。月があったことで、今の地球があることも。P波が縦波で、S波が横波ということは学びましたが、S波は物体がねじれるように伝わるので、液体や気体では伝わらないのだそうです。Pがprimaryの頭文字、 Sはsecondaryの頭文字だったのですね。習ったのかもしれませんが、忘れていました。な~んだ。
6 それにしても、よく一人で、これだけの幅広いことを書かれましたね。もちろん、それぞれの分野の知見を拾っておられるのですが、その範囲が半端ではありません。執筆に8年かかったそうです。納得します。
7 そして、いつものように、鎌田先生のわかりやすい語り口です。たくさんの図表がついています。それぞれに出典が書いてあり、先生がわかりやすいように改変しておられます。巻末には、索引と参考文献もついています。高校や大学の教科書になるでしょう。

先生はこれまでに、専門の火山学だけでなく、古典や勉強術まで、たくさんの本を書いておられます。でも、この3冊は間違いなく先生の代表作になるでしょう。「著者インタビュー」もお読みください。
ぜひ、今週末に本屋に行って、3冊買ってください。私も、今日も早々と風呂に入って、続きを読みますわ 。(2016年10月27日)

明るい公務員講座・中級編、3

『地方行政』連載「明るい公務員講座・中級編」第3回10月24日「管理職になるには脱皮が必要」が発行されました。優秀な係長が、よい課長にならない場合があります。あなたの周りにもいませんか。鬼軍曹は、課長には向いていないのです。一人でばりばり仕事をすることと、職員を使ってよい成果を出すことは、別の能力です。課長になるには、青虫からチョウチョになるように、脱皮が必要なのです。内容は、次の通り。
管理職の二つの役割、モノを相手にすることとヒトを相手にすることと、優秀な係長がよい課長にならない理由、課長になるには脱皮が必要、名選手は必ずしも名コーチにならない。

中国、文化大革命が残したもの。2

朝日新聞10月20日オピニオン欄、王輝・中国天津社会科学院名誉院長へのインタビュー「体制内で見た文革」の続きです。

・・・「文革は中国社会に何をもたらしたのでしょう。伝統的な文化や価値観が否定され、宗教施設なども壊されました」との問に。
・・・文革中には過激な破壊活動が起きました。現在、中国が抱える問題はすべて文革がもたらしたものだという見方もあります。
(共産党への)信仰、理想、信念といったものが失われました。(豊かで平等な社会をつくるといった)共産主義の理想を信じる気持ちがなくなりました。人々は自信をなくし、残ったのは拝金主義と享楽主義でした・・・
・・・文革は高度に集中した伝統的計画経済を打ち壊し、その後の改革開放への条件をつくった。もし文革の歴史がなければ、中国はソ連の道をたどっていたでしょう。
文革前に、多くの庶民は知りませんでしたが、私は幹部として何が起こっているのかを見ていました。党内には、すでに特権階級が生まれつつあった。幹部たちは夏は避暑地の北戴河に行き、庶民には一生、手が届かない生活をしていたのです。文革がなければ、特権化はさらに拡大し、中国は(民主化を求めた群衆にチャウシェスク大統領が殺された)ルーマニアと同じになっていたでしょう・・・

「これから中国政治はどこへ向かうのでしょう」との問に。
・・・中国は今、左(共産主義)に進むこともできず、かといって右に行くこともできない。右とは米国式の民主政治の道です。このまま進んでいかなければ、生き残ることはできません・・
「民主化には進めませんか?」
・・・進めば、中国は四分五裂の道をたどるでしょう。これは怖いことです。米国は望んでいるかもしれないが、中国がソ連のように崩壊したら、経済も大混乱を起こす。かわいそうなのは庶民たちです。金持ちたちはみな国外に逃げるのだろうけど……
「では、共産主義の道は?」
・・・すでに貴族権益のようなものを持つ階級も生まれているから、左にも行けない。今や中国にどれだけの大金持ちがいると思いますか。彼らから再び財産を奪ったら、大混乱になります。ただただ、今のままでやっていく。これしかほかに道はありません・・・(2016年10月26日)

中国、文化大革命が残したもの

朝日新聞10月20日オピニオン欄、王輝・中国天津社会科学院名誉院長へのインタビュー「体制内で見た文革」から。
・・・中国で文化大革命が発動されて50年。多くの中国人が信じた共産主義の理想は色あせ、社会は大きく変質したが、共産党政権は依然として苛烈な権力闘争のなかにある。中国は何を学び、何を失ったのか。党幹部の立場で文革を経験し、その後も体制内で歴史研究を続ける天津社会科学院の名誉院長、王輝氏に話を聞いた・・・
「秩序は軍の出動によって回復しました」との問いかけに。
・・・もし中国にこのような特殊で強大な軍隊がなければ、どうなっていたか。中国で、軍は戦闘部隊であると同時に、(国内の社会秩序を維持するための)工作部隊でもあるのです。単純に国防を担っているわけではありません・・・
「その特殊な軍の存在が、中国の民主化を困難にしているのではないですか」との問に。
・・・当然のことです。中国共産党は暴力革命によって政権を握った。暴力による政権奪取の必然の結果は専制政治です。それは民主化をもたらすことはないのです・・・
この項続く。(2016年10月25日)