目標を立てることができる研究と、目標が経たない研究と

9月28日の朝日新聞オピニオン欄、本庶佑・京都大学名誉教授の「世紀の新薬、未来へ」「狙ってできないブレークスルー たくさん種まきを」から。
・・・政府の科学技術政策の司令塔である総合科学技術会議の議員だったとき、基礎研究の研究費はばらまきだと批判され、むしろ、ばらまかないとだめなんだと言いました。火星にロケットを飛ばすといった実現への計画を立てられるプロジェクトとは全く違うんです・・・

「目標すらわからないと」という問に。
・・・はい。ブレークスルー(飛躍的な進展)はデザインできません。つまり、ねらってできるものではないんです。とくに生命科学では、ある分野でわかったことが考えもしなかった分野とつながって重要な意味を持ってくる、ということもよくあります。どこをどうやったらいいか、だれにもわからない。「ここ掘れワンワン」というわけにはいかないんです。大切なのは、そういうチャンスをなるべく多く作ることです。
政府のプロジェクト施策のように、5年間で何かをやる、というのは間違っています。5年でできるとわかっていることはたいしたことない。種をいっぱいまかないと、どれが芽を出すか、わからないし、芽を出しても、枝が出るか、花が咲くか、さらには実がなるのか。基礎研究には幅広くたくさん投資することです。それが何万倍にもなって返ってきて、税収も増える。リターンは大きいんですから・・・(2016年10月1日)