帰ってきた肝冷斎

肝冷斎は、1週間ほど韓国に、遠征に行っていたようです。野球の報告は、韓国のリーグです。広島カープのファンで、優勝の場面には間に合ったようです。25年ぶりの優勝立ち会えたのですから、運の良いファンです。その瞬間には、涙を流したとか。
肝冷斎日誌は、1週間もお休みをしていました。毎回、「もう駄目だ」と愚痴を言っているようですが、ええコトしていますねえ。

アメリカの政治思想、2

会田弘継著『増補改訂版 追跡・アメリカの思想家たち』から。
ポピュリズムという言葉は、アメリカで生まれたそうです。アメリカの歴史家リチャード・ホーフスタッターの定義では、次のようになっています(p229)。
1 中央に対する地方の反感
2 エリートに対する民衆の反抗・懐疑
3 外来のものに対する土着主義(ナティビズム、nativism)
4 一定の革新性

それに加えて、会田さんは次の項目を付け加えます(p231)。
5 結社拡大の性行
6 宗教的熱狂

ここでは項目だけ列記するので、わかりにくいでしょうが、本文をお読みいただくと、なるほどと納得します。単なるラベル貼りでなく、深く分析することの重要性がわかります。政治研究者やマスコミの政治部記者には、参考にして欲しい本ですね。

アメリカの政治思想

会田弘継著『増補改訂版 追跡・アメリカの思想家たち』(2016年、中公文庫)が、勉強になります。
「アメリカに思想などあったのか?」と思われる人も多いでしょう。プラグマティズムといった哲学、あるいは企業家の経営哲学は思い浮かぶけど、政治哲学は知らないなあと。民主主義、自由主義で、せいぜい共和党と民主党の似たもの同士の争いと思われがちです。そのような思想で、独立し国をつくったのですから。
そして、自由主義陣営の盟主として、アメリカニズムを世界に普及しているというのが、一般的な理解ではないでしょうか。そのアメリカニズムは思想と言うより、豊かな消費社会という生活文化を真っ先に思い浮かべます。
ところが、この本を読んでいただくと、アメリカが、自由主義・民主主義の範囲内で、保守から革新や伝統主義まで、個人主義から共同体主義や社会民主主義まで、幅広い議論を積み重ねていることがわかります。
そして、それらの論客やその思想を体現した政治家が、国政でも議論を繰り広げるのです。
これには、共産主義陣営が崩壊し、民主主義と自由主義の枠内で、さまざまな立場の違いや考え方の違いが表れたこともあると思います。また、人種間の格差に加え、所得の格差が無視できないようになってきていることもあります。トランプ現象です。本書では、それについても鋭い分析がされています。文庫本で読めるのも、ありがたいです。

封建制や王政の歴史を持たないアメリカで、保守や伝統主義がどのような位置づけを持つのか。その点は、本書をお読みください。保守や革新という言葉は、ヨーロッパ、アメリカ、日本では、違った意味をもちます。歴史が違うので、言葉が持つ意味が違ってくるのです。保守や伝統主義にあっても、どの過去を理想とするのか、何を「伝統」と考えるかによって、各国でも違ってきます。
日本でも、保守を標榜する自民党が着実に改革を進め、革新を標榜するグループが「改憲反対」を訴えるという、ねじれがあります。あるグループが自らを「革新だ」と表現する場合、それをそのままに受け取るのか、あるいはその国の過去や現在の政治勢力・政治思想の中に位置づけて「実は保守に分類される」と分析するのか。それが、研究者やマスコミの仕事だと思うのですが。
それらの「分類」(ラベル貼り)は、時々の政治対立や社会問題を理解するためにつくられたものですから、現実社会や政治が変化すると、その分類は切れ味が悪くなります。現在の欧米では、保守と革新ではなく、ポピュリズムや貧困層と富裕層との対立、移民と元の住民との対立でしょう。日本においても、非正規雇用や子どもの貧困、安心できる子育てが重要な課題で、保守と革新では分類できません。安全保障については、たぶん大きな対立はないでしょう。非現実的な主張を除けば。

現実政治における政治思想について、日本においては、明確になっていないようです。冷戦期には、「自民党は保守で、自由主義、資本主義。社会党は、革新で、社会主義」との対立構図でした。とはいえ、万年与党と万年野党で議論による政策選択や政権選択がない(と多くの国民が考えている)状態では、議論は活性化しません。
冷戦終結後も、与野党での政治思想対立や政策選択議論は少なく、思想の構造的対立の議論は深まっていません。社会保障や安全保障において、その時々の対立はあっても、陣営に分かれた構造的対立になっていないのです。政権交代はありましたが、「自民党にお灸をすえる」という位置づけに終わったようです。
例えば、国民負担議論(大きな政府か小さな政府か)にしても、各党もマスコミも「小さな政府」「行政改革」と「安心できる社会保障」を主張し、それでは一方では(実現が困難な)理想論に、他方では程度の問題になってしまいます。

さらに、日本では、政党と国会でされる議論、新聞の政治面での記事、大学の政治学で教えられる内容では、この視点が欠落しているように思います。マスコミは十分な分析をせず、日々の政局記事を流します。研究者は、ヨーロッパやアメリカの政治対立や政治思想を講義しますが、日本の現実政治にはあまり立ち入りません。日本でこの会田さんの本のようなものを書くとしたら、どのような内容になるでしょうか。マスコミの政治部長に質問してみましょう。

福島での講演会、福島の課題

今日10日土曜日は、福島市で勉強会の講師を勤めました。120人ほどの聴衆を相手に、対談です。福島の課題と今後の戦略について、議論しました。
議論が発散しないように、議題を農業、観光、教育に絞ってもらいました。特に農産物と観光は、風評被害に悩まされています。これをどう克服するか。それぞれに、「攻めの戦略」が必要です。
福島県では、課題は明確です。そして、それを克服するべく、県知事が先頭に立って、戦略的に取り組んでいます。国も、復興庁が中心になって各省とともに、それを精力的に支援しています。県議会、市町村、経済団体などが協力して取り組み、そして県民の理解があれば、困難な課題も解決できるでしょう。議論しながら、そのようなことを考えていました。

NPO3人組の活躍

このホームページにしばしば登場するNPO3人組が、それぞれに活躍しています。
田村太郎さんは、毎日新聞に「社会起業家」について連載しています。本業のダイバーシティ研究所については、ホームページをご覧ください。
青柳光昌さんは、9月末に「ソーシャルイノベーションフォーラム」を開催します。
藤沢烈さんは、このホームページ9月3日に「社会起業家が新公益連盟、分野の枠超え政策提言」を紹介しました。その他の活躍については、烈さんのブログをお読みください。
それぞれに、民間の立場から、社会の課題を解決するべく、奮闘中です。いつものことながら、その熱意と行動力に脱帽します。行政も、負けてはいられないのですが。