アメリカの古書店

先日本屋を覗いたとき、何かのテーマ展示で見つけ、気になったので、買いました。「まあ、読まないだろうけどなあ」と思いつつ。寝床と新幹線で、一気に読みました。面白いです。お勧めです
ローレンス&ナンシー・ゴールドストーン著「古書店巡りは夫婦で」(邦訳1999年、早川ノンフィクション文庫)です。
夫婦の作家が、古書集めに引き込まれるお話しです。初版本を中心に、ただし高価なものは選ばない。そのあたりが、私たちも「ついて」行けます。ピーター・メイルの「南仏プロバンスもの」の路線と言ってよいでしょうか。表紙も、それに近いです。
古書を知ろうとしたら、古書店事情とか古書の手引きなどの概説書やハウツー本の方が手っ取り早く、全体を知ることができるのでしょう。しかし、門外漢にとっては、生身の人間それも素人が苦労しながらその世界に入っていく小説(ノンフィクション)がわかりやすいですね。ノーベル賞級の研究の概説書より、その先生の回想録の方が取っつきやすく、わかりやすいのと同じでしょう。
もっとも、出てくる古書のいくつかは、ディケンズ、マークトウェインなど私にもわかるのですが、知らない作家が多く、またアメリカの古書店はちんぷんかんぷんです。アメリカの古書業界の事情がよくわかります。結構面白いですよ。インターネットが発達した現在は、少し変わっているかもしれません。
さて、そこは本を読んでいただくとして。本筋とは異なり、気になったか所を、備忘録として書いておきます。
・・・(古書店の)キャビネットの側面は鉛筆のようなかたちをしていた。二本の鉛筆には、それぞれ2B or Not 2Bと彫ってあった・・・p272
もちろん、シェイクスピアのハムレットの名文句、To be or not to be のもじりです。
離れて住む93歳の父親(?)と電話での会話から。
・・・わたしにとって最高のたのしみは、毎朝、仕立てのいいスーツに着替えることだな。サミュエル・ジョンソン博士いわく、衣服は人を作る。その言葉はたぶん正しいと思うよ、うん。だから、わたしは毎朝スーツに着替える。もう耳にたこができているかもしれないが、世の中には朝食の席に半ズボンで出てきたり、シャワーも浴びずに出てきても平気な人間がいる。それがまちがいというつもりはないが、ナンシー、きみならわかってくれるだろう。なによりも最高なのは、早起きをして、さっぱりした体になり、ドレスシャツとシルクのタイと仕立てのいいスーツに着替え、すてきな朝食をとること。量はさほど多くなく、コーヒーとオレンジ・ジュースとバターを塗ったトースト、それに卵をひとつ。食事のあと、ゆっくりと腰をおちつけて、ウィンストン・チャーチルの本を読む・・・p15