イギリスのEU離脱国民投票結果について、EU発展の視点や国際統合の視点とともに、国内の対立(スコットランドとイングランド、富裕層と貧困層、北部と南部、高学歴低学歴等)が現れたという見方があります。例えば、7月5日の日経新聞経済教室、力久昌幸・同志社大学教授「世代・階層間の分断深刻 英国解体懸念払拭できず」。(2016年7月20日の記述も)。社会の分裂が表面化したのです。国際統合という「高い理想の政治」に対し、「庶民の不満の政治」が抵抗したのです。国際政治と見るか国内政治と見るかです。
社会の亀裂を統合するのも、政治の役割です。国民を構成する集団間に格差(経済格差、政治的不平等など)や考え方の違い(宗教間対立)が大きくなり、不満がたまると、騒動や暴動になります。
ところが、イギリスの歴史は、これまでも社会の課題や亀裂を、どのようにして解決していったかの「教科書」なのです。このホームページでも詳しく紹介した、近藤和彦著『イギリス史10講』(2013年、岩波新書)をお読みください(2014年7月27日。覇権国家イギリスを作った仕組み)。
ひるがえって、現在日本の社会の亀裂は何か。私は、世代間対立(年金受給者対若者)や、都市対地方が対立軸だと考えていました。しかし、近年は、日本社会で最も大きな亀裂は、正規対非正規と考えています(2016年6月2日。現在日本社会の亀裂)。日本の政治がこの課題をどのように解決していくか。それが問われています。
ところで、社会の異なる利害を代表するのが、政党の役割です。彼らが、選挙や議会で議論を戦わせて、問題を解決していきます。しかし、イギリスのこの対立は、与野党対立に代表されていません。与党下院議員の4割が離脱を支持しました。日本においても、先に挙げた社会の課題はまだ、政党間対立の主要な争点になっていません。