7月10日の日経新聞、「日曜に考える」は、「遺伝子操作と生命倫理 どうバランス」です。金田安史・大阪大学教授・日本遺伝子細胞治療学会理事長が、大きな写真付きで出ています。奈良女子大附属高校の同級生です。医療研究の最先端で活躍しています。うれしいですねえ。
私と違い、まじめで温厚な生徒でした。写真も、当時(45年前)と変わらない風貌です。
去年会ったときも、若いときそのままでした。私の方は、すっかり風貌が変わったのに。自分のからだに、若返りの治療をしたのかな。次回会ったら、私も治療してもらいましょう。
月別アーカイブ: 2016年7月
地域福祉の現場は行政のフロンティア
今日は、日本介護経営学会に呼ばれて、シンポジウムに登壇してきました。私は知りませんでしたが、介護の実務家や研究者の学会です。会場は満員でした。
被災地では、高齢者などのケアのため、さまざまな試みが取り組まれました。阪神淡路大震災を教訓に、介護ステーションをつくり、相談員が巡回してと。それ以外にも、地域包括ケアの試行なども。地域福祉の「実験場」だったのです。これまでの経験は、この学会が協力した、小笠原浩一・栃本一三郎編著「災害復興からの介護システム・イノベーション」(2016年、ミネルヴァ書房)にまとめられています。関係者の方には、お薦めです。
私の役割は基調講演でしたが、その後のシンポジウムが勉強になりました。旧知の長純一先生、池田昌弘さんたちから、包括ケアや現在の福祉サービスから漏れ落ちている人たちへの支援現場での課題が、報告されました。現場で活動している人たちの発言は重いですね。実践家の苦悩、といったら良いのでしょうか。「無認可」「認可外」に、次なる課題が存在しています。これまでの医療福祉サービスが、医療、介護、児童、障害者というように対象者別にサービスを拡充してきました。それでも、隙間が残されています。生々しい事例を聞かせてもらいました。
また、個別サービスが、地域での助け合いを壊しているという逆効果も。農業や漁業が忙しい時期に、デイケアに来ている高齢者が、そちらの作業のアルバイトに行くという話がありました。高齢者は行くところを求めているのです。
行政によるサービスの限界が見えてきました。地域で、ともに支え合う場や方法を、生かさなければなりません。しかし、自治体にも国にも、そのような専門家はおらず、部署もありません。新しい行政手法、公共政策が必要です。
「日本の行政課題は、外国から輸入するのではなく、国内の現場で生まれている」という私の主張が、まさに実証されている分野です。さてこれらの課題を、研究者、自治体、国が、どのように吸い上げて解決するか。異業種の方との意見交換は、勉強になります。
霞が関の治外法権?
昨日書いた、復興庁が「これまでが異例だった。普通の役所に戻ったということですよ」(2016年7月8日)について。
一つには、5年経って復興事業が軌道に乗り、当初の頃のような、次々とこれまでにないことをする役所ではなくなったことです。復興はまだ道半ばですが、大きな筋道は立っています。その路線に従って、役所らしく着実に事業を進めれば良いのです。もっとも、原発事故からの復旧は、状況が違います。
もう一つは、これまでにないことを次々としてきた復興庁と、私のやり方への評価です。「賛辞」と理解しましょう。私たちが取り組んでいるのは、千年に一度の大津波と、初めて経験する原発事故です。前例通りでは国民の期待にこたえることにはなりません。次々とこれまでにないことをしました。それは、新しい施策を作っただけでなく、その進め方についてもです。平時の流儀では時間がかかり、間に合わないのです。
それができたのは、国民や政治家が、巨大な災害で異例の対応が必要だと理解してくださったからです。各省の官僚たちも、これまでの延長ではダメだと考え、普段していない、そしてできないことに取り組んでくれたからです。
私は、関係者の前で旗を振り、後ろから押しただけです。時々、理解が少ない人たちをラッセル車のように強引にかき分け、押してもダメなときは自分で書いてしまうという、強引なこともやりましたが(苦笑)。
職員たちが、私のことを「霞が関の治外法権」と呼んでいます。物騒な表現ですが。「それは私の所管ではありません」と言わない、ほかの組織の所管業務と思われることでも口を出す、それらを象徴したニックネームです。
ある人は「霞が関だけでなく、永田町の治外法権だろう」とも言ってくださいました。与野党を問わず、政治家の方にも本音で議論する、そして政治の力を借りて実現することを、「褒めてくださって」いるのだと解釈しています。これまでにないことを実現するためには、知恵と技、そして力技も必要です。
高岡さんの新著
高岡望・前ヒューストン総領事が「アメリカの大問題―百年に一度の転換点に立つ大国」(2016年、PHP新書)を出版されました。
毎日のようにアメリカの問題が報道されます。しかし、そのできごとを大きな視点から見ると、違ったことが見えてきます。この本は、格差、力、エネルギーという3つの切り口から、アメリカのそして世界の構造変化を分析しています。ヒューストンというホットな地域からの具体的なレポートであり、大きな視野からの分析です。時宜を得た出版で、お薦めです。
高岡さんは、以前に「日本はスウェーデンになるべきか」(2010年、PHP新書)も出版されています。忙しい公務と日常の中で、話題を集め書きためておられたのでしょうね。頭が下がります。
復興庁は普通の役所に
7月4日の時事通信社の「官庁速報」に、「最後まで岡本節」という記事が載ったそうです。
・・・6月21日付の復興庁人事で事務次官の岡本全勝氏が退任し、後任に西脇隆俊氏が就いた・・・
・・・退任会見では、「・・・一方で歯に衣着せぬ発言で知られた岡本氏らしく、震災後5年間の復興事業費について、「自治体の負担をゼロにしたことには賛成していない。5%でも3%でも負担を残すことで、県も市町村も身の丈に合った規模の復興を(当初から)考えてくれたのではないか」と語る一幕も
後任の西脇氏に対する庁内評は「手堅い方」(職員の一人)というのが一般的で、別の職員は「これまでが異例だった。普通の役所に戻ったということですよ」と苦笑い・・・
う~ん、喜んで良いのやら・・・。