先日、その一部を紹介しましたが、中山茂著『パラダイムと科学革命の歴史』(2013年、講談社学術文庫)が勉強になりました。科学の進化には、通常科学と科学革命があること。すなわち、社会の常識となっている自然の見方(パラダイム)を科学革命が壊し、新しいパラダイムを設定します。コペルニクスであり、ニュートンであり、アインシュタインです。そして、その後の科学者は、そのパラダイムの下で、それを精緻化する作業(通常科学)をします。そして、次の科学革命が起き…と繰り返されます。
そのほか、どのような要素が、科学の進化に影響を与えたかが、社会学的に分析されています。中国官僚制(科挙)と紙と印刷技術が、学問を固定化し訓詁の学を生んだこと。それらがなかった、あるいは遅れたイスラムと西洋では、話すことで学問が進んだことなど。なるほどね。
17世紀以降の科学の進化と、学会の役割、大学の機能、大学院の機能。これらが、イギリス、フランス、ドイツ、アメリカの順に、それぞれが置かれた歴史、社会的背景から勃興してきたこと。それらを19世紀に「輸入」した日本の場合。その輸入学問の効率性と限界が指摘されています。
科学や学問の進化が、それを生みだす社会とどのような関係にあるのか。大学や大学院の機能と限界、日本の学問の限界などが、わかりやすく解説されています。これまで断片的に知っていたこと、何となく考えていたことが、理路整然と説明されています。随所で、なるほどと思います。社会学、歴史として、とても面白い本です。文庫本で読みやすく、お勧めです。基となった本は、1974年に出ています。もっと早く読めば良かったです。反省。