石橋克彦著『南海トラフ巨大地震―歴史・科学・社会』(2014年、岩波書店)は、いずれ来ると予想されている「西日本大震災」=南海トラフ巨大地震(かつては、東海、東南海地震と呼ばれていました)を解説した本です。副題にもついているように、古文書などによる歴史からの分析、プレートテクトニクス理論による科学からの分析、それが社会にもたらす災害の3つの視点から解説してあります。
著者の考えに従うと、古来日本各地で起きた大きな地震のメカニズムが理解できます。なぜ大きな地震が、短期間のうちに各地で起きるか。納得します。ただし、山陰地方でなぜ連動して起きるかは、いまいち理解できません。そこは読んでもらうとして、次の点を引用しておきます(p199)。
・・・第二に、地震対策の目標は、生命・財産の損失を減らすこと(減災)はもちろんだが、最終的には、被災した人々が1日も早く平穏な暮らしを取り戻せるように準備しておくことだろう・・・
・・・第三に、日本列島に暮らす人々はくり返し南海トラフ巨大地震で大被害を受け、そのたびに立ち直ってきたが、現代の私たちとは根本的に違う暮らし方をしていたことを忘れてはならない・・・基本的に衣食住をはじめとする生活全般が、自然的・自給的・自立的であった。ところが今の暮らしは、「顔の見えない他者」に無際限に依存することを余儀なくされている…生活を支える複雑・高度な仕組みが震災によって大規模に崩壊すると、昔の貧しい人々が苦しんだのとは別の困難に直面する・・・