書評欄で紹介されていたので、D・ヨッフィーとM・クスマノ著『ストラテジールールズ―ジョブズから学ぶ戦略的思考のガイドライン』(2016年、パブラボ)を読みました。インテルを育てたアンディ・グローブ、マイクロソフトのビル・ゲイツ、アップルのスティーブ・ジョブズ。起業家として大成功しただけでなく、新しい事業のモデルを作った3人です。この本は、その3人に共通する成功の秘訣、3人の個性の違い、3人の失敗を分析した本です。どうして新しいビジネスを切り拓いたか、同業他社をどのようにつぶしたか。なぜ、先行していた他社は、戦いに負けたか。
どのような点が、皆さんの参考になるか。それは読んでみてください。私はなるほどと思いつつ、「結果論だなあ」とも思ってしまいます。歴史上の英雄や政治家、起業家。成功するには、それなりの努力とともに、運もありますねえ。いくつか記憶に残った記述を、紹介しましょう。
・・・ジョブズは、伝記作家にこう語っている。「『顧客には望む物を与えるべきだ』と言う人がいる。だがそれは私のアプローチではない。私たちの仕事は、顧客自身が気づく前に、彼らが望むものを明らかにすることだ。ヘンリー・フォードはこう語った。『もし、私が顧客に何が欲しいかと尋ねていたら、顧客は、もっと早い馬が欲しいと言っただろう』」・・・(p76)。
著者は、事業戦略で、相撲戦術と柔道戦術を比較します。相撲戦術は、力と規模にものを言わせる戦術です。柔道戦術は、てこの原理を活用して効果的に技をかけます。秘密の作戦やスピードを駆使します。器用さや敏捷性、相手の裏をかく能力が求められます(p238)。アメリカの企業競争に、日本古来の武道のたとえが出てくるのが、興味深かったです。