経済同友会が、70年を迎えました。
「企業経営者が個人として参加し、自由社会における経済社会の牽引役であるという自覚と連帯の下に、一企業や特定業種の利害を超えた幅広い先見的な視野から、変転きわまりない国内外の経済社会の諸問題について考え、議論していくところが、経済同友会最大の特色です」(経済同友会とは)。 さまざまな分野で、提言をしています。昨年度の提言一覧。
企業人が、このような財界活動を通じて、自社や産業だけでなく経済、社会、政治に関心を持ち、オピニオンリーダーになっていただくことは、ありがたいことです。
小林喜光・代表幹事の「所見」から。
・・・この激変期を上手く乗り越えられるかは、第1にリアルとバーチャル、第2に付加価値と効用、第3に個と集団という関係性の変化を的確に捉えて、我々が目指す社会の姿に道筋をつけられるかにかかっていると思います・・・
・・・第1は、モノに代表されるリアルな「重さのある経済」とネットに代表されるバーチャルな「重さのない経済」の関係性です。これは私がよく用いる表現ですが、改めて、簡単にその概念をご説明いたします。
日本経済は製造業を起点に明治以来ここまで発展してきた訳ですが、今後は日本経済ばかりでなくグローバル経済でも、付加価値の比重はモノからサイバーに移行していくと考えています。モノの時代でも付加価値は、トン、キログラム、グラム、ミリグラム、マイクログラムへと軽量化の方向にシフトしてまいりました。サイバー空間の時代には重さの無い情報が付加価値を生むことは、皆様も日々のビジネスの場面で感じていると思います・・・
・・・第2は、成熟経済下で顕著になる経済活動の本質となる部分で、付加価値と効用の関係性です。一般的に、付加価値は企業等が生産過程で生み出した価値であり、効用は人々が商品・サービスを消費する際に得られる満足の度合い、あるいは使用価値と理解されています。
そこで過去と未来を考えてみたいと思います。主要な経済統計であるGDPは、付加価値の総和です。これは物質的に充足することで人々が幸福と感じる状態では、適切な尺度でした。しかし、物質的に満たされた状態、イノベーションの加速でより良い商品・サービスがより安価で、次々に供給される状況では、GDPだけではなく効用というメトリック、すなわち測定基準がなければ、経済の実態を把握することができなくなっています・・・