国が配分した復興予算が、自治体で使い切れず、積み残しになっているとの報道があります。これには、理由があります。
一つは、現場において、用地買収や工事などが予定通りに進まず、執行が遅れることがあることです。これは、復興事業だけでなく、いろんな事業でも起きます。現場ではいろんな事情が生じ、計画通りに進まないこともあるのです。
もう一つは、今回の復興予算に特有の事情があります。現場で柔軟に仕事ができるように、また予算を心配しなくてもよいように、事前に予算を自治体に交付しています。それを、自治体は基金に積み立て、事業の進捗に応じて使うようにしています。
行政の予算の原則は、単年度主義です。1年ごと予算を決め、自治体が国に申請し、それを国が認めてお金を配ります。自治体は、それに従って事業をします。その年度で使えないと、いったん国に返還し、未完成の部分について翌年もう一度、申請してという行為を繰り返します。
しかし、数年にわたる事業も多く、これでは事務作業が大変です。また、復興事業は急がなければならないこと、現場の状況も変化することから、特例的な方法をとりました。それが、事前に予算を交付し、自治体は基金に積み立てて、現場の実情に応じて取り崩して使うという方法です。
だから、ほかの事業に比べ、各年度の執行残が多いのです。この点を理解してください。各自治体からは、喜んでもらっています。もちろん、数年経って使い残したものがあれば、国に返還してもらいます。
このほか、高台移転工事について、住民の意向が変化して、事業量を縮小した例もあります。これは、納税者には褒めてもらえるでしょう。また、福島の原発対策費には、これから30年かかる対策費も前渡ししてあります。これは、早く使い切ってもらっては困るのです。
「つけた予算は、その通り使う」「つけた予算は、その年度内に使い切る」という考えは、事業によっては非合理な場合もあります。