地方公務員月報への寄稿

総務省公務員課が編集している月刊誌「地方公務員月報」3月号に、拙稿「大震災からの復興―行政の挑戦」が載りました。この5年間の私の経験を、後輩たちに伝えようと思い、書きました。先日出版した『復興が日本を変える』の、公務員向け要約にもなっています。
この雑誌は、地方公務員行政の専門誌で、自治体(人事課)には配られています。別に市販(第一法規)もされています。

民間や自治体からの職員たちの感想

今日は3月31日、明日は4月1日。多くの職場で人事異動の時期です。復興庁でも、各省から派遣された職員とともに、自治体や企業から派遣された職員の異動があります。
先日、彼らの報告会がありました。1~2年間の復興庁勤務で考えたことなどを、幹部の前で報告してもらうのです。親元とは違った「社風」の職場で、苦労した様子がわかります。他方で、復興庁ならではの経験を評価している人も多いです。興味深かった意見を、いくつか紹介します。
・親元では何かとハンコ(上司の決裁)がないと仕事が進まないのに比べ、復興庁の仕事の速さに驚きました。
・被災現場を見て回る機会が多く、勉強になりました。2年間に70回以上出張しました。
・交付金の審査の際、申請している町長の言い分(地元の悲願だ)と、当方の主張(財源は増税も)とが対立することがあり、大変でした。知恵を出して、事業ができた際はうれしかったです。
・自治体だけでなく、企業やNPOと一緒になって仕事をすることが新鮮でした。
・総理大臣や大臣のすぐそばで仕事ができました。大臣や幹部との距離が、とても近かったです。
・周りの職員が、精神的にも肉体的にも非常にタフなことに驚きました。地元に寄り添って復興するんだという高い志を持っているんだと感じました。
・役所の仕事の進め方がわかりました。
・いろんな方と知り合えました。財産です。
・同僚や上司が、いつも笑顔で話を聞いてくださったのが、助かりました。
ありがとう。この経験を、これからの仕事で生かしてください。

産業再生の課題と対策

きょう3月30日夕刻、「産業復興の推進に関するタスクフォース」を開催しました。今回の災害復興では、産業となりわいの再生のために、これまでにない取り組みをしています。仮設店舗や工場を無料で貸し出すとか、施設や設備の復旧に補助金を出すとか。その結果、施設設備と生産活動は急速に復旧しました。しかし、新たな課題も見えてきました。資料3―1の2ページ目に、それらを総括してあります。それを踏まえて、新たな課題に取り組むこと、そしてその手法を示しました(1ページ目)。産業復興の加速化(売り上げの回復と本設商店への移行など)、農林水産業の再生、観光振興(新たに見えてきた課題です)、原発災害からの再生の4つです。詳しい分析や取り組みは、資料1、資料2をご覧ください。
ところで、役所は、予算や新規事業を作ると、「こんなことをやります」と公表します。しかし、翌年に「その結果、ここまで成果が出ました」と公表することは、少ないようです。事業ごとにポンチ絵を作るのですが、それはほとんどが「これからやります」という内容です。「これだけ成果が出ました」というポンチ絵は、あまり見ませんねえ。今回は、資料の2ページ目のようなわかりやすい成果を、職員が作ってくれました。ありがとう。

新聞報道のあり方、朝日新聞

3月23日の朝日新聞「紙面審議会」から。
鈴木幸一・IIJ会長
・・・朝日新聞はクオリティーペーパーを自負する一方、数百万部という発行部数からみれば、大衆紙と捉える方が妥当である。クオリティーペーパーとしての矜持を保ちつつ、発行部数を守るため大衆に受け入れられる要素も盛り込まねばならない。この矛盾を抱えながら一つの紙面をつくることが、朝日新聞の記事内容、記者の育て方、何よりも経営のあり方を難しくしているのではないか。
例えば、私の仕事であるIT分野を掘り下げ、ITという巨大な技術革新が世界をどのように変えていくのかといった視野を持ち、経営者に目を開かせてくれる記事を書ける専門記者を育てているだろうか。かつては同じ記者が長期間同じ分野を担っていたように思うが、昨今は短期間で別の記者に担当替えしているようだ。
ある出来事を報道する時、その評価については、ほとんどが学者や有識者とされる方々の意見を掲載していることが多く、新聞社としての見解は控えめだ。記事は記者が事実をなぞった、表面的な内容になっていると感じる。読者に分かりやすい、かみ砕いた記事を書き、分析もできる専門知識を持つ記者も必要なのではないか。産業以外の国内政治、国際政治、社会、文化などの分野では、専門記者が育っているのだろうか・・・
湯浅誠・法政大学教授
・・・経済的格差が広がるときは、政治的見解も二極化する。いま、そんな時代に入ったと思う。こういうときに、これまでのように、穏健な意見を社会に投げかけるだけでは足りない。テーマの選定や切り口など、「これくらいではないか」という従来の「相場観」は一度見直すべきだと考える・・・
中島岳志・東京工大教授
・・・一昨年以来の朝日新聞バッシングは、単に慰安婦報道に向けられたものではない。戦後の朝日ジャーナリズム、ひいては戦後民主主義に対する不満・鬱屈が噴出したものと捉えるべきだろう。その根源には「自分たちは正しさを所有している」という朝日の態度に対するいらだちがあるように思う・・・