先日、「業務の管理=予定表」を書きました。ようやく、部下=各課の仕事の全体像をつかんだという話です。
さて、予定表を作ることで、自分の仕事の見通しが立ち、部下とも仕事の重要度とスケジュールを共有できます。しかし、上司の仕事としては、ここまでで半分です。ここまでは、管理職としての仕事です。
さらに必要なのは、この予定表に載っていない「戦略」を立てることです。各課長が作った課題と予定表は、課の仕事であって、局の仕事ではありません。課の仕事を積み上げても、局の戦略にはならないのです。
もちろん、各課長が作った予定表に、その局の戦略が書かれておれば、それで良いのですが。通常は、与えられた各課の仕事を前提に、課題と業務が載っています。
課の課題を足し上げても、局の戦略にはなりません。組織の責任者としては(私は、まだ責任者ではありませんが)、その組織の中長期的戦略を立てることが、もう一つの大きな任務なのです。本当は、先に局の戦略があり、それに基づいて課の目標があるのです。
民間企業の場合、社の目標があり、それを達成するために部の目標があります。そして、それに基づいて課の目標があります。当たり前のことです。社の目標を達成するために、その下部組織が作られているのですから。ところが、官公庁や古くなった会社では、組織全体の目標をブレイクダウンして、各課の目標を作っていないのです。所掌事務は決まっていても、課の目標は決められていないのです。目標による管理が、行われていません。
この構図は、課長と係の関係でも、当てはまります。
年別アーカイブ:2015年
リスクをとる人と、とらない人。動く人と、動かない人
朝日新聞8月1日のオピニオン欄「消費しない日本人」、藤野英人さん(ひふみ投信・運用責任者)の発言から。
・・・景気回復の兆しは肌で感じられるのに、マクロの統計数字をみると、実際の個人消費は伸び悩んでいることに違和感を覚えていました。
なぜ低迷するのか。各地の経営者や投資家、僕が教えている大学の学生らと対話を重ねるうちに、日本人が「動く人」と「動かない人」に二極化しているからではないか、という見方に達しました。
「動く人」とは、リスクを取ることをよしとする人です。努力は報われると考え、自身が成長するための習い事や勉強にお金を惜しみません。海外に行くことも躊躇せず、未知の人との出会いにも意欲的。希望を最大化しようとする戦略を取ります。
対して「動かない人」は想定される失望を最小化する戦略を人生の指針にしています。リスクを嫌い、学校や家との往復が生活の中心で、住む場所もあまり変えない。日本の将来に悲観的なため、消費を控え、貯金してできるだけ未来の失望を小さくしようとする生き方をしています・・・
私が常々思っていることに、明快な表現を教えてくださいました。そうなんです。動くだけの、あるいは動かなければならないだけの、地位と財産がありながら、動かないのです。というか、リスクをとらなくても、それなりに地位と財産は保障されているから、今さらリスクをとらないのです。これは、企業経営者、企業の社風、官僚の一部にも蔓延しています。そして、先輩たちが成功した後に、その地位を受け継いでいるので、「保全」が先に立つのです。成功体験の負の遺産です。環境(取り巻く社会経済状況)が変わらなければ、それでも優位な地位は保つことができます。江戸時代の日本社会であり、冷戦崩壊までの日本です。しかし、環境が変わったときに、それではおいて行かれます。
国の財政の全体像・分析
行政の構造的課題2
行政論
行政の構造的課題
2005年5月19日に、東京大学公共政策大学院で講演したときのレジュメです。2004年5月13日のレジュメを差し替えました。官僚論の一環です。公務員改革議論の整理については、公務員改革論議をご覧下さい。
提言・国家官僚養成、一橋大学での講義もあわせお読み下さい。
日本行政の成功と機能不全
-政策課題と構造的問題-
1 国家行政の課題-二つの視角
このリレー講義では、各講師はそれぞれ、省の政策課題をお話になるでしょう。私は、そのような個別課題でなく、日本の行政全体の課題をお話します。たとえて言うと「縦割り」でなく、「横断的視野」からです。
図1
うまく描けないので言葉で書きます:日本の行政には国家行政と地方行政があること。それぞれ、執政(政治・政治家)と執行(狭義の行政・公務員)がある。国にあっては、内閣と官僚。この行政が、日本社会という環境から課題を取り上げ、政策を出力する。
| 国家行政 | 地方行政 | |
| 執政 (政治) |
内閣 (政治家) |
首長 |
| 執行 (行政) |
各省 (官僚) |
市役所 |
(1)各省が取り組んでいる個別テーマ
政策課題、アウトプットとしての課題
(2)国家行政機構が抱えている仕組みの課題
構造的課題、内在する課題
(私がこのような問題関心を持ったのは、これまでの経歴からです)
2 政策課題
構造的課題に入る前に、個別政策課題について簡単に触れておきましょう。
(1)小泉内閣が取り組んでいる課題
→テーマから見た分類
「小泉構造改革内閣」【別紙1:官邸HP】
図1で言うと、国家行政のうち執政(内閣)が取り組んでいる課題。政治主導といってよいでしょう。各省の政策を聞いているだけでは、日本の行政課題全体像を見ることはできないのです。
数多くの項目がありますがそれは、次のような理由からです。
理由の1:小泉首相の意向「構造改革」を掲げている
理由の2:社会が多くの改革を迫っている
理由の3:各省縦割りの官僚制で処理できない
【別紙2:官邸HP】
(2)各省が取り組んでいる課題
→担当部局から見た分類
政治主導に対し、官僚制による対応といってよい。
例えば、この「リレー特別講演」、白書、HP、政策情報誌(「外交フォーラム」「ESP」「自治研究」「地方財政」等の月刊誌)
(3)総務省が取り組んでいる課題【別紙3、パンフレット】
①行政の基本構造 ②分権改革 ③IT
3 構造的課題=国家行政機構そのものの課題
今日の話の中心。まず問題提起から始めましょう。
戦後日本、あるいは明治維新以来、日本社会は世界第一の水準まで発展しました。その際に、行政もまたそれに貢献し、世界一の水準を達成しました。安全、衛生、教育、福祉、社会資本などです。
しかも、貧富の差や地域間の格差を小さくして、日本社会全体で、高度な行政サービスを実現しました。社会は、平等・発展・安定を達成しました。拙著「新地方自治入門」を参照してください
世界一優秀と評価されていた日本の官僚。それが近年、大きな批判にさらされています。その批判を、分類してみてみましょう。
(1)官僚批判
①「官僚の失敗」に対する批判
ア 社会情勢の変化に対応できない:ムダを指摘されている公共事業の続行、需要予測を誤った公共事業
(例)交通量の少ない山の中の道路、米余りのなか続けられる農地造成・干拓、「巨大釣り堀」と揶揄される港湾、水余りの中作り続けられるダム、赤字の本四架橋・東京湾アクアラインなど
実は、これは「与えられた任務を遂行する」という、官僚制の特徴の裏返しです。
イ 業界と一体の行政
(例)BSE問題(外国では危険を指摘されていたのに、対応が遅れたこと。また、輸入牛肉を消却する際十分な確認をせず補償金を払ったこと。これは刑事事件になっています)、
薬害エイズ事件(非加熱製剤の使用禁止が遅れたこと。これも刑事事件になっています)、
金融危機対応(護送船団行政、破綻処理の先送り。公的資金投入が巨額になった)、
補助金行政の続行(地方団体が要らないと言っている補助金を押し付けようとしていること)、
規制改革への抵抗(自動車の車検緩和が進まず。幼保一元化も進みません)
これは官僚制の「部分に特化」によるものです。
ウ 政策の統合ができない:政策の優先順位がつけられない、変更できない
(例)社会福祉より公共事業を優先していること。
道路財源が余り、一方で赤字国債や年金が破綻すると言っているのに、道路財源を回せないこと。公共事業の事業別シェアが変わらないこと。
これは、官僚制の「縦割り組織」によるものです。
エ 費用対効果の疑問:優秀な官僚が毎晩遅くまで残業しているが、それだけの結果がでているか
これは、「目標設定と効果測定は誰がするのか」という問題です。これは次の②につながります。
②「官僚主導」に対する批判
責任の所在はどこにあるか。行政に対する入力は政治の責任。
今日は省略。「新地方自治入門」第10章政治と行政の在り方p287~