年別アーカイブ:2015年

東京消防庁の活躍、事前訓練の重要性

2015年11月9日   岡本全勝

月刊誌『近代消防』2013年11月号、関係者による座談会「3.11における東京消防庁作戦室の教訓」から(前回は2013年10月24日に紹介しました)。
東京消防庁では、訓練の際に、状況や手順が示されている「シナリオ訓練」の他に、それが事前には示されていない(順次わかる)「ブラインド型訓練」を行っています。3.11の前年、平成22年11月20日から21日にかけて、全職員24時間体制の訓練を、ブラインド型で実施しました。これが、3.11の際、すなわちこれまでに経験したことのない災害に役立ったとのことです。
松井救助課長:ブラインド型訓練が一番特徴的なのは、完結できずに終わってしまうことです。普通の訓練では、要救助者を全員救出して終了となりますが、24時間(訓練)では、発見できなかった要救助者がいたりするのです。そういう、残念な結果も経験できます・・
久保田消防係長:ブラインド型訓練を何度もやりました。やるたびに、失敗がありまして、その都度、指導を受けました。自分たちで検討会を行い、次はこうしようと工夫した記憶が残っています。そのおかげで、3.11の初動の時に、自然に動けたのではないかと思います。
新井総監:失敗経験が活きるのです。失敗した後の工夫が大事です。それで能力が向上するのです。失敗しない訓練をやってもしょうがないのです。
五十嵐副参事:宮城県の災害対策本部にいたときに(指揮支援隊長として、真っ先に宮城県に入って指揮を支援した)、このままでは、うまく行かないと思ったのです。そこである程度、イニシアチブを取って、一つ一つ決めてしまった方が早いなと思いました。何回も訓練をやっているので、こうしたらいいなというのがわかるのです。私が上司に叱咤されながら訓練したときの失敗は、現実に活きました。
例えば、連絡が取れない、状況がわからない状態で、人がどのように考えるかがわかる。具体的に何をしたらいいかが出てこない。自分から動こうとしない。そうであれば、やるべきことをこちらからどんどん提案することにしました。「今、大事なのは、状況確認ですよね」「道路の状況はどうですか」など話を振ると情報が出てきます。ブラインド型訓練で失敗を何度もしているからこそ、できるようになったのでした・・
松井救助課長:ある県でのブラインド型訓練で、「失敗して覚えましょうね」という話をしたら、「うちは失敗しません。しっかりやります」と話していました。でも、やっぱり見ていたら問題点がいろいろありました。「どこどこの方、現在の状況を教えてください」と聞くと、シナリオに書いていることしか答えられないので、こちらの質問には答えられませんでした。そのような訓練をやっていては、駄目です。実災害の時に、何をやって良いのかわからなくなってしまいます・・

社会科学による大震災の分析5、その2

2015年11月8日   岡本全勝

日本学術振興会「大震災に学ぶ社会科学」第2巻『震災後の自治体ガバナンス』第4章、伊藤正次先生の「復興推進体制の設計と展開」から。
・・・復興庁が現に発揮している「司令塔」機能とは、復興に必要な行政資源を一元的に管理し、関係府省に対する強力な総合調整権限を発動しながら復興事業を主導していく「統率型」の機能ではない。むしろ復興庁は、関係機関との人的交流に基づいて柔軟な組織体制を模索しながら復興を推進する「連携型」の機能を担っている。復興局の「ワンストップ」対応も、そこに相談すれば被災自治体の要望がすべて満たされるといった類いのものではなく、被災自治体の側面支援を行う場を提供し、課題を抱える現場に手をさしのべることを企図したものである。
こうした期待と現実のギャップこそ、復興の「遅れ」を批判する議論の根拠となっているのかもしれない。だが、仮に復興庁が「司令塔」機能と「ワンストップ」対応を字義どおりに追求するならば、「市町村主体の復興」や県レベルでの復興事業の調整・支援は後景に退かざるを得ない。地方自治の尊重と復興の加速化という2つの課題に応えるには、復興庁が、自治体を含む関係機関と連携しつつ、関係機関間の連携を取り持つことによって、その主導性を発揮していくことが求められているように思われる。いわば多機関連携のハブ機能を果たす復興庁という姿こそ「行政の現実」(牧原(2009))を踏まえた復興推進体制の望ましいあり方なのではないか・・・(p117)

復興庁を設計するに際しては、任務と権限や内部組織のあり方のほか、内閣・各省との関係、職員集めなどが課題になりました。いかに理想的な組織を考えても、それを動かす職員が伴わないと、仕事は進みません。高台移転、土地区画整理、道路や農地の復旧などの専門家は各省にいます。というか、各省にしかいないのです。民間には、その専門家はいません。
各省から専門職員を吸い上げて復興庁ですべてを行うとすると、各省の人材が不足します。そして各省は、被災地以外での事業も抱えています。そこで、各事業の実施は各省に残しつつ、復興庁に専門職員を派遣してもらい、各省に指示をし(その権限をもらいました)、現場との調整をするという機能分担をしたのです。そのために、各省各部局からは、事業に精通した精鋭を送ってもらっています。これでうまく回った、そしてこれしかなかったと思います。

国際貢献・新しい政治

2015年11月7日   岡本全勝

7日の朝日新聞に「国際緊急援助隊」の解説がありました。1987年に国際緊急援助隊派遣法ができました。救助・医療・専門家・自衛隊のチームがあります。日本が国際貢献している重要な活動です。しかし、国民の何割が、この活動や枠組みを知っているでしょうか。外国の大災害に派遣されたときにはニュースになりますが、学校や教科書で学んだ人はどれだけいるでしょうか。高校入試、いえ大学入試でも、かなり正解率は低いでしょう。公務員でも、案外知らないと思います。このような事実を、もっと、教育の場で取り上げてほしいと思います。

社会科学による大震災の分析、5

2015年11月6日   岡本全勝

日本学術振興会(村松岐夫先生ほか)による東日本大震災学術調査プロジェクト「大震災に学ぶ社会科学」の第5回配本、第2巻『震災後の自治体ガバナンス』が発刊されました。被災自治体の対応や復興事業の分析がたくさん載っていて、自治体関係者には、特にお薦めです。
そのほかに、
第4章 復興推進体制の設計と展開(伊藤正次・首都大学東京教授)
第5章 被災自治体に対する政府の財政措置(北村亘・大阪大学教授)
の分析もあります。ありがとうございます。

経済界の人材育成支援

2015年11月5日   岡本全勝

経済同友会の広報誌「経済同友」10月号は、「震災復興支援で持続可能な地方を創る」を特集しています。同友会は、NPO法人アスヘノキボウが行っている女川町の人材留学プログラムを支援してくださっています。簡単にいうと、被災地の人材を大手企業が研修に受け入れてくださるのです。地方の小さな企業では、なかなか得がたい経験です。詳しくは、座談会(p3~6)とその後についている研修の概要(p7~14)をご覧ください。この仲立ちをしているのが、NPOのアスヘノキボウです(ホームページ)。このほかにも、復興庁が主催しているビジネスコンテストの入賞者も、研修に受け入れてくださっています(p15~16)。
企業による、持っている能力を生かした新しい形の支援だと思います。ありがとうございます。